レイエス、8月絶好調で本格化。愛称も定着、レアードとの共通点【えのきど…

セギノールの記録に並ぶ

 台風10号の影響でプロ野球の開催中止が相次ぐなか、西武戦18回戦(8/30、ベルーナドーム)に行ってきた。川越市の大雨被害が報じられ、西武線が運転見合わせになったら中止かもなぁと不安だったが、行きも帰りもバッチリ(西武線は運休しないことで定評がある)、かつベルーナドームの屋根が雨から守ってくれた。そりゃ球場内の湿度はものすごかったけど、セの3球場(バンテリンドーム、甲子園、マツダすべて中止)を思えば御の字である。

 

 しかも、5対2の快勝だった。前日、西武は対ロッテ戦連敗を止め、士気高い状態で本拠地ベルーナドームに帰ってきていた。しかも、先発は苦手の松本航。僕は警戒していたのだ。ハム先発の加藤貴之は珍しくスイスイいかないピッチングで、走者を背負っては西武の拙攻に助けてもらっていた。西武は併殺打が多く、あと1本が出ない。敵失にもつけ込めない。去年までのハムのようだった。ヒット数は上回っているのに、清宮幸太郎10号3ランで引き離され、追いすがっても簡単に突き放される。

 

 ハム側から見たらたまらない試合だ。清宮ホームランは見られる。郡司裕也の2点タイムリーは見られる。生田目翼、宮西尚生のホールド、柳川大晟のセーブは見られる。おまけに試合後は「フィールドウォーク」で、さっきまでプロが試合してた人工芝の上を歩ける。最高だった。行ってよかった。「漆黒ユニ」ビジター初勝利!

 

 で、そんな色々の要素があるなか、今回書いてみたいのはヒゲの巨漢、フランミル・レイエスの不思議な味わいについてなのだ。8月のレイエスは無双状態だ。打率.405、8本、23打点(30日現在)。この西武18回戦でも8回第4打席にレフト前にヒットを放ち、地味に(?)21試合連続安打の記録を達成している。これはセギノール氏が持つ外国人選手の連続試合安打の球団タイ記録だそうだ。ちなみに球団記録は大下弘氏、森本稀哲・現コーチの持つ「24」。連続試合安打(ストリーク)はディマジオの「56」が有名で、大リーグではもっと派手な扱いになる。

 

 なんだけど、レイエスにはやっぱりホームランを期待してしまう。負け試合ではあったが、楽天18回戦(8/28、エスコン)の2ホームランはすごかった。もう既に16号が出ているので、本人が今季の目標として挙げている20本は楽勝ムードだ。当然、ベルドでも一発を期待していた。

 

 が、今回、知人に言われて気がついたのだけど、レイエスはビジター球場では唯一、ZOZOマリンでしかホームランを打ってない。あとはすべてエスコンフィールドなのだ。あんなにじゃんじゃん打ってるイメージだが、実は極端な「内弁慶」なのだ。本人もエスコンが大好きとコメントしている。丸みを帯びた体型、愛嬌たっぷりの笑顔、グッズにも採用された全力疾走のかわいさに加えて、ホームでめっぽう勝負強いのだから北海道のファンはたまらない。「レイたん」という愛称も定着してきた。「レイたん」はエスコンの申し子(?)なのだ。

「レイたん」ファンが増加中!?

 レイエスというと個人的に忘れられない思い出がある。6月下旬だった。久しぶりに先輩ライターから電話を頂戴し、用件を含めてあれこれ世間話をしていたのだが、唐突に「あとはレイエスをいつ切るかですね」と言う。「え、マジですか‥」と返したっきり、絶句してしまった。先輩は東映フライヤーズ以来の熱心なF党なのだ。もちろん苦しい時期も知っていて、心の耐久性も持ち合わせている。SNSで簡単に「○○イラネ」「○○クビにしろ」みたいなことを発信してしまうタイプとは違う。僕自身がそうだが、東京時代からのファンはどちらかというとのんびりしてるというか、監督や選手を罵るようなのが苦手なイメージがある。

 

 だから先輩の「レイエスをいつ切るか」発言は意外だったのだ。結局、「いやぁ、だんだん慣れてくるんじゃないですかねぇ~」的にお茶を濁したはずだが、先輩は頑なだった。レイエスは(大リーグの実績は立派だが)日本のピッチャーの攻めにまったく合ってない。日本野球にアジャストできないタイプの典型である。今はまだ新庄がガマンして使っているが、打線がそこで切れてしまう。早くお払い箱にして、若い選手の出場機会を増やしたほうがチームのためだetc。

 

 新庄監督はレイエスの本格化を疑っていないようだった。確かに6月の時点でレイエスは大ブレーキだったが、2段ロケットの点火を知ってるかのように「この後、レイエスが出てきたら面白い」と言っていた。そしてまさにチーム状態をグッと上向かせる「2段めのロケット噴射」としてレイエス爆発(&清宮復調)は機能したのだった。

 

 まぁ、僕らはレアードの例を知っているから、外国人打者の評価は一筋縄じゃないと肝に銘じている。ていうか、思った通りにならないのが野球だ。思った通りにならないから面白い。レイエスは見事に日本野球に順応した。相手チームの投手の攻め方を記憶して、配球を読み始めたのだ。レアードと似ているのは日本生活をエンジョイしているところ。コミュニケーション能力が高く、ユーモアがある。

 

 僕は先輩に会ったら「レイエスが打ちだすなんてわかんないもんですねー」以外のことは言うつもりがない(SNSで叩いてた人にも同様だ)。だってわかんないもん。別に見識が高いところを見せたくて野球ファンやってるんじゃないから。だけど、先輩の想像のはるか上を行くレイエスの活躍は胸のすくようだ。何か不思議な選手でしょう。底知れないポテンシャルと愛嬌を抱えている。これからもっと「レイたん」ファンが増えると思う。

追記 レイエス選手は翌31日、連続試合安打を「22」に伸ばし、球団外国人選手のストリーク記録を更新しました。おめでとう!