藤井聡太王位に渡辺明九段が挑戦する伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦七番勝負(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)は、第4局が8月19日(月)・20日(火)に佐賀県唐津市の「洋々閣」で行われました。対局の結果、矢倉の序盤戦からリードを奪った藤井王位が100手で勝利。充実を感じさせる内容で防衛にあと1勝としました。

序盤に潜んだ落とし穴

徳島県で行われた第3局から3週間ほど空いての対局。先手番で迎えた渡辺九段の用意は今シリーズ初となる矢倉の作戦でした。しっかりと玉を囲いに収めるこの指し回しは昨年7月のA級順位戦・佐々木勇気八段戦でも採用しており、渡辺九段らしい作戦です。

自然な指し手を進めていた渡辺九段ですが、後手からの自然な歩打ちを見て手が止まります。そのまま2時間37分の長考で次の手を封じ手としたのは変調と思われる時間の使い方。渡辺九段は局後「歩を打たれて長考しているようでは」と自嘲気味に振り返りました。本局はここから藤井王位の一人舞台となります。

藤井王位が攻め切り快勝

後手番ながら攻めの手番を得た藤井王位の指し手は冴えわたります。敵陣に銀を打ち込み飛車金両取りをかけたのが厳しい手筋。これを合図として藤井王位の攻め駒は花火のように豪快に乱れ咲きました。角を切ってから銀を捨てたのが爽快な継続手。王手で竜を成り込んだ局面は玉の安全度が大差で後手優勢が明らかです。

終局時刻は18時24分、最後は自玉の詰みを認めた渡辺九段が投了。序盤に奪ったリードを徐々に拡大する盤石の指し回しで、藤井王位は3勝1敗と防衛に王手をかけました。渡辺九段としては序盤の細かい駆け引きのなかに誤算があった模様でした。注目の第5局は8月27日(火)・28日(水)に兵庫県神戸市の「中の坊瑞苑」で行われます。

水留啓(将棋情報局)

  • 藤井王位は「竜を作ったあと攻めがつながるか際どかった」と最後まで気の抜けない戦いだったことを強調(提供:日本将棋連盟)

    藤井王位は「竜を作ったあと攻めがつながるか際どかった」と最後まで気の抜けない戦いだったことを強調(提供:日本将棋連盟)