コーヒーかすが持つ土壌改良効果とは?

コーヒーかすに含まれる栄養素のほとんどは炭素であり、その他の水溶性の栄養素はコーヒーをいれる過程で抜け出てしまっているため、米ぬかなどと比較すれば決して栄養豊富な資材とはいえません。窒素成分もわずかに含みますが、コーヒーかすに含まれる窒素成分は微生物や植物が利用しにくいものであるため、実際に植物が利用できる窒素の形になるまでにかなり時間がかかります。

一方で、コーヒーかすは表面に多くの小さな穴があいた“多孔質”であることから、炭と同じように土壌の空気層を増やして水はけを良くするなどの物理性の向上が期待できます。1平方メートルあたり10キロ以上のコーヒーかすを直接土壌に混ぜ込んだところ、土壌の団粒化(土の粒子が大きくなること)を促進する効果が著しく見られたという実験結果もあります。
以上のように土壌の物理性の改善において、ある程度効果は期待できますが、家庭で出るコーヒーかすの量は少量であることが多いでしょうから、あくまでもおまけ程度に考えるくらいがよさそうです。

コーヒーかすによる生育阻害について

コーヒーかすはそのまま畑に散布すると、植物の生育を阻害するため、注意が必要です。コーヒーの生豆や焙煎(ばいせん)後の豆自体は畑に散布しても生育阻害が見られないため、コーヒーの抽出過程で発生する生育阻害物質(カフェインやポリフェノール)が一つの原因ではないかと言われています。

またもう一つの原因として、窒素飢餓が考えられます。窒素飢餓とは、植物が成長するために必要な窒素が不足する現象のことを指し、一般的には落ち葉や木くずなどの炭素率の高い有機物資材を土に混ぜ込んだ際に起こります。
有機物を土に入れると、それを分解するために微生物が土の中で増えるのですが、その際に微生物が最も必要とする栄養素が炭素(C)と窒素(N)です。分解する有機物にこの炭素と窒素がバランス良く含まれていればよいのですが、炭素率(C/N比)の高い資材だった場合は窒素が足りず、周囲の土に含まれている窒素が消費されることになり、作物に吸収されるはずの窒素が不足してしまいます。
コーヒーかすの炭素率は決して高い値ではないのですが、コーヒーかすに含まれる窒素成分はほとんどが難溶解性の物質であり、微生物が利用しにくいものであるため、結果的に土壌の窒素分が不足して窒素飢餓が起こりやすいのです。

ある実験結果では、乾かした状態のコーヒーかすを重量比で土壌の1%投入したところ、ほとんどの野菜では発芽率への影響は見られなかったものの、発育に関してはやや劣るものもありました。さらに5%投入した場合には発育が悪くなったとのこと。特にキュウリやメロン、ナスなどでは1%の施用で発芽障害や顕著な生育障害が見られたとされています。少量のコーヒーかすを畑全体に薄くばらまく程度では、ほとんど障害は見られないでしょうが、量が多い場合や土の量が少ない場所では強く生育阻害が表れることが予想されるので注意が必要です。

堆肥化と窒素補給でコーヒーかすによる悪影響を解消

うちでは生ごみや雑草と合わせて堆肥(たいひ)化している

コーヒーかすが持つ植物への生育阻害の問題を解消するためには、主に二つのアプローチが必要となります。まずは抽出過程で発生する生育阻害物質(カフェインやポリフェノール)に対しては、微生物による分解によって軽減することが分かっています。そのためコンポストや堆肥に混ぜ込むなどしてから畑に散布するとよいでしょう。もし堆肥化せずに、コーヒーかすを直接畑に散布する際は、その量や作物との距離にもよりますが、微生物によって分解されるまで1〜3カ月程度はかかるため、すぐに種まきや植え付けをしない場所に散布することをおすすめします。

もう一つ必要となるアプローチが窒素の補給です。前述したように、コーヒーかす単独で堆肥化しようとしても窒素が不足してしまいます。そのため鶏ふん、おから、油かす、米ぬかなどの窒素を多く含む炭素率が低い資材と合わせて堆肥化するのが効果的です。家庭用コンポストであれば、肉や魚、豆などが含まれる残飯などの窒素率が高いものを少し意識して入れてみるとよいかもしれません。窒素率が高い資材は、その分解過程でアンモニアガスなどによって臭いが生じやすいのですが、コーヒーかすは消臭効果があるため、その点でも組み合わせるとよい資材であると言えるでしょう。

堆肥やコンポストの消臭剤として使おう

コーヒーかすは基本的にそこまで栄養も多くないですし、相当量施用しなければ土壌改良効果は期待できません。むしろそのままの施用ですと生育阻害の影響が大きいため、デメリットの方が大きくなりがちです。少量であれば、畑に直接まいてもそこまで大きな問題にはなりませんが、基本的にはその悪影響を抑制するために、一度堆肥化させるのがオススメです。コーヒーかすが持つ消臭効果があるという特性を生かし、堆肥やコンポストから発生する臭いを抑制するための副次的な堆肥資材として使用するとよいでしょう。