ドジャースは”世界一”になれない…?プレーオフ進出の条件を徹底解説!【コ…

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 シーズン終盤に突入し、熾烈なプレーオフ進出争いを繰り広げているMLB。一時は2位以下に10ゲーム以上の差を付け、NL西地区独走状態となっていたロサンゼルス・ドジャースだが、日本時間8月15日時点で2位に2.5ゲーム差まで迫られており、どこが勝ち進むのか予想出来ない展開となっている。今回はプレーオフのシステムについて解説する。(文:Eli)
 

今シーズンのメジャーリーグは
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 メジャーリーグは5チームを含む地区が東・中・西とある15チームがリーグを形成し、これがナショナル/アメリカンと2つあり、合計30チームある。これはNPBの2倍以上であり、それだけにプレーオフ進出チームも多く複雑なシステムとなっている。
 
 特に2022年初旬に結ばれたCollective Bargaining Agreement(CBA, 労使協定)によりプレーオフのシステムが改訂され、進出チームが拡大されてからはさらに複雑となった。
 
 プレーオフに出場できるのは各地区の優勝チーム、プラス優勝チーム以外の勝率が高い3チームとなる。2023年シーズンでは以下の12チームになった。
 

 

地区優勝6チーム
NL
・ロサンゼルス・ドジャース 西地区
・アトランタ・ブレーブス 東地区
・ミルウォーキー・ブルワーズ 中地区
AL
・ボルチモア・オリオールズ 東地区
・ミネソタ・ツインズ 中地区
・ヒューストン・アストロズ 西地区
 

上記6チームを除いた勝率トップ3
NL
・フィラデルフィア・フィリーズ
・マイアミ・マーリンズ
・アリゾナ・ダイアモンドバックス
AL
・タンパベイ・レイズ
・テキサス・レンジャース
・トロント・ブルージェイズ

 
 地区優勝は自動的にプレーオフ進出となるシステム上、全体でシーズン勝率が低いチームが高いチームを押しのけてプレーオフ進出することも多々ある。昨季のツインズは87勝でAL中地区を制しプレーオフ進出となった一方で、88勝したシアトル・マリナーズは進出できなかった。





プレーオフの仕組みを徹底解説!
 次に来るのがトーナメントを始める位置の指定である。先ずリーグで地区優勝した3チームの内、勝率の高い2チームは最初のラウンドをスキップすることができる。これを『First-Round Bye』という。
 
 そして残った4チームを半分に分け、最初のラウンドであるワイルドカードシリーズを行う。昨季のナショナルリーグに当てはめると以下のようになる。

 

 

First-Round Bye
 ・ドジャース(西優勝,勝率.617)、ブレーブス(東優勝, 勝率.642)
 
ワイルドカードシリーズ
・ブルワーズ(中優勝, 勝率.568)
・フィリーズ(.556)、マーリンズ、ダイアモンドバックス(.519)
 
 ワイルドカードシリーズの分け方であるが、4チームの中で最高位と最下位、真ん中2チームが戦う。昨季の例ではブルワーズ(.568) vs ダイアモンドバックス(.519)、フィリーズ(.556) vs マーリンズ(.519)となる。
 
 スタート位置が決まったらあとは戦うだけだ。2戦先勝(最大3戦)のワイルドカードを勝ち抜いたチームは地区優勝チームの待つディビジョンシリーズ(DS)に進む。ディビジョンシリーズは3戦先勝(最大5戦)だ。
 
 ディビジョンシリーズを勝ち抜いたチームはリーグの優勝チームを決定するチャンピオンシップシリーズ(CS)に進み4戦先勝(最大7戦)で戦う。晴れてシリーズを勝ったチームはもう一つのリーグの優勝チームの待つワールドシリーズへすすみ最後の戦いに挑むのである。
 
 ちなみに現地ではプレーオフのラウンドを略してしまうことが多い。ワールドシリーズを除いて、以下のように頭にはリーグ名が入る。
 
 ワールドシリーズ(WS)
 チャンピオンシップシリーズ(NLCS, ALCS)
 ディビジョンシリーズ(NLDS, ALCS)
 ワイルドカードシリーズ(NLWC, ALWC)

 
 また、プレーオフはWCが米各メディア『ESPN』、『CS』、『DS』が『FOX』と『TBS』によって放送される。『FOX』と『TBS』は毎年担当リーグを交代制で行っている。今年はNLを『FOX』、ALを『TBS』が行うはずだ。そしてWSは『FOX』による独占放送である。
 
 いわゆる定番・名物アナウンサーもおり、『FOX』ではWSの担当も行うジョー・デイビス氏とアトランタ・ブレーブスのレジェンドで殿堂入り投手であるジョン・スモルツ氏のコンビ。『TBS』ではブライアン・アンダーソン氏とニューヨーク・メッツなどでプレーしたロン・ダーリング氏のコンビが定番だ。
 
 更にはスポーツ実況界では伝説的な存在であるボブ・コスタス氏も登場する。解説では昨季引退した元投手アダム・ウェインライト氏、元シカゴ・ホワイトソックスのAJ ピアゼンスキー氏などが担当する。






プレーオフはCrapshoot(くだらない)なのか?

 
 2022年に締結された労使協定によりプレーオフが12チームに拡大されて以降、プレーオフはアンフェアであるとの論調が高まった。これは2022年にメジャー全体勝率1位,3位のドジャース、ブレーブスが、2023年にはトップ3のブレーブス、オリオールズ、ドジャースがチーム最初のラウンドで敗退したからだ。
 
 このトップチームが敗退している原因として、ワイルドカードシリーズ終了を待つ5日間で調子を乱してしまうことが挙げられる。比べてワイルドカードを戦うチームは消耗がありながらシリーズを勝つことで調子を上げ、勢いがつく。
 

 
 これではせっかく地区優勝を果たしたチームに対して不利なのではないかと言う話だ。一方でアストロズは2年連続ディビジョンシリーズを突破し、2022年にはワールドチャンピオンとなっており、一概には言えない状況となっている。
 
 2年連続で圧倒的な差をつけて地区優勝しながらもシリーズ突破をできていないドジャースとブレーブスの首脳陣は依然地区優勝を目指すとしているが、2023年プレーオフで進出チーム中勝率が最下位のダイアモンドバックスがワールドシリーズ進出を果たした前例から、現在のメジャーではプレーオフ圏内に入ってしまえばなんとかなるとの風潮が広がりつつある。
 
 戦略性を魅力の一つとしているメジャーリーグにおいて、その戦略性による効果を否定する事態となってしまっている。これはトレード・FA市場の活気にも影響してくる話である。
 
 前述の労使協定交渉の際に選手側は球団がチーム強化に資金を投下することを促すために、レギュラーシーズンの成績をしっかりと反映したアドバンテージをプレーオフに準備するように要求していた。
 
 短期決戦において弱小球団が金満球団を倒すのもプレーオフの醍醐味であるが、それはレアケースに留め環境はレギュラーシーズンの結果を反映するようにすべきだ。
 
 昨季からはドジャースとブレーブスがワイルドカード終了を待つ際にシミュレーション試合をするなど適応する試みが見られている。今年のプレーオフではそのような点も注目していきたい。


 
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【了】