藤井聡太竜王への挑戦権を争う第37期竜王戦(主催:読売新聞社)の挑戦者決定三番勝負第2局 広瀬章人九段―佐々木勇気八段戦が8月13日(火)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、相掛かり持久戦から終盤の競り合いで抜け出した佐々木八段が138手で勝利。2連勝として自身初となるタイトル戦登場を決めました。

2年前の前例

佐々木八段先勝で迎えた第2局は先手の広瀬九段が相掛かり持久戦に誘導。中央に据えた自陣角を起点に攻勢を取るのは2022年の竜王戦七番勝負で広瀬九段自身が藤井聡太竜王に対しぶつけた作戦です。さて本局、この実戦例に別れを告げたのは佐々木八段のほうで、わずか1分の考慮時間からは深い研究がうかがわれました。

昼食休憩が明けると長考合戦が始まります。香得の実利を得た広瀬九段がじっと右辺のと金攻めに出れば佐々木八段も中住まいの玉頭に銀を迫らせ反撃。激しい押し引きを抜け出したのは広瀬九段でした。6筋に打ち込んだ桂での王手が急所。囲いの薄い後手がこの桂を外すために金を犠牲にするほかないのを見越しています。

終盤にドラマが

広瀬九段が敵玉を寄せ切るかと思われた最終盤にドラマが待っていました。銀を打ち込んで王手をかけたのは明快な寄せ手順なしと見た広瀬九段の妥協策ですが、数手後に佐々木八段に好手が待っていました。取られそうな飛車を大きくさばいたのがそれで、大駒による逆王手の筋が生じているためこれで先手からの攻めは続きません。

豪快な一手で攻守を逆転させた佐々木八段はしっかりとした手つきで先手玉への王手を開始します。終局時刻は22時14分、最後は自玉の即詰みを認めた広瀬九段が投了。三番勝負を2連勝で制した佐々木八段が自身初となるタイトル挑戦を決めた瞬間でした。なお感想戦では先手からの明快な勝ち筋は発見されませんでした。

藤井竜王と佐々木八段との間で争われる注目の七番勝負は10月5日(土)・6日(日)に東京都渋谷区「セルリアンタワー能楽堂」で開幕します。

  • 佐々木八段は局後「楽しみより不安が多いが研究などで補いたい」と番勝負への意気込みを語った(写真は第30期竜王戦決勝トーナメントのもの 提供:日本将棋連盟)

    佐々木八段は局後「楽しみより不安が多いが研究などで補いたい」と番勝負への意気込みを語った(写真は第30期竜王戦決勝トーナメントのもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)