なでしこジャパンが劇的逆転勝利! [写真]=Getty Images

 パリオリンピック2024(パリ五輪)・グループC第2節が28日に行われ、なでしこジャパン(日本女子代表)はブラジル女子代表と対戦した。

 なでしこジャパンが、パリでの初勝利を目指して第2節に臨む。現地時間25日に行われたスペイン女子代表との一戦は、藤野あおばが直接フリーキックを叩き込んで先手を取ったものの、その後2失点を喫し、1-2と逆転負け。FIFA女子ワールドカップオーストラリア&ニュージーランド2023では4-0と完勝を収めた相手に、スコア以上に力の差を見せつけられ、W杯王者に敗れていた。

 決勝トーナメント進出のために負けられない一戦で相まみえるのは、南米の強豪として知られるブラジル。これまでの五輪で頂点に立ったことこそないが、2004年のアテネ五輪からは2大会連続で銀メダルを手にしていた。25日に行われた第1節ではナイジェリア女子代表に1-0で勝利。2連勝での決勝トーナメント進出を目指し、なでしこジャパンの前に立ちはだかる。

 なお、両者は今年4月に行われた2024 SheBelieves Cupの3位決定戦で対戦しており、当時は田中美南のゴールで先手を取ったものの、同点に追いつかれると、PK戦の末に敗北。“前哨戦”ではブラジルが勝利したが、“本戦”で白星を掴むのはどちらのチームとなるか。

 なでしこジャパンを率いる池田太監督は、スペイン戦からスターティングメンバーを3名変更。同試合で右ひざを負傷し、26日付でチームからの離脱が発表された清水梨紗だけでなく、ゴールを決めていた藤野までメンバーから外れた。初戦で先発していた清家貴子はベンチスタート。代わって、高橋はな、守屋都弥、浜野まいかが先発に名を連ねた。

 なでしこジャパンは3-4-2-1の形で試合に入り、右から高橋、熊谷紗希、南萌華が3バックを構成。右ウイングバックの古賀塔子、左ウイングバックの守屋は、相手ボールの際に最終ラインの位置に入り、状況に応じて5バックとも言える布陣を採用。試合序盤はブラジルがボールを保持したが、決定機らしい決定機は作らせない。

 押し込まれる時間が続くなか、19分にはなでしこジャパンがカウンターでビッグチャンスを構築。GK山下杏也加が右サイドのスペースへロングフィードを蹴り込むと、スペースで待っていた宮澤ひなたが前方へ持ち運ぶ。中央へ折り返すと、ボールはフリーの田中美南のもとへ向かったが、右足で狙った一撃はゴール左へ外れた。

 時間の経過とともに、徐々になでしこジャパンがシュートに持ち込める回数を増やす。35分、敵陣右サイドで得たフリーキックから、田中がヘディングシュートを放つも、ここは枠の外へ。38分には田中のポストプレーから、ボックス左へ走り込んだ守屋が中央へ折り返し、最後は長谷川唯が合わせたものの、シュートはGKに阻まれる。

 前半終盤にかけてはなでしこジャパンが押し込む時間に。前半アディショナルタイムには、宮澤がボックス左のスペースでスルーパスを引き出すと、マイナスへ折り返し、左サイドから中央へ入った守屋がボールを引き取る。ペナルティエリア手前中央からミドルシュートを放つと、これが相手のハンドを誘い、なでしこジャパンがPKを獲得した。キッカーの田中はゴール右下を狙ったが、ここはGKロレナにコースを読まれて失敗。なでしこジャパンが先制のチャンスを逃し、スコアレスでハーフタイムに突入した。

 後半に入ると、ブラジルが3枚の交代カードを切ったのに対し、なでしこジャパンのメンバー変更はなし。後半も、試合の様相は前半と大きく変わらず、立ち上がりはブラジルがボールを握って隙を探っていく。

 均衡が破れたのは56分。ブラジルはピッチ中央付近でボールを収めたマルタが、うまく反転して左サイドのスペースへスルーパスを送る。抜け出したルドミラが高橋を振り切り、中央へ繋ぐと、最後はジェニフェルがフリーで右足シュートを叩き込む。大黒柱のマルタ、そして後半頭からピッチに立った2人が絡んで、ブラジルが先手を取った。

 1点ビハインドとなったなでしこジャパンは、失点直後に浜野を下げて植木理子をピッチへ送り出す。攻撃的な姿勢を強める選手交代で同点を目指すと、64分には左からの折り返しに田中が合わせるも、ここは相手のブロックに阻まれる。68分には左サイド高い位置をとった守屋のクロスボールが、ペナルティエリア内で待っていた田中の元へ。田中はワントラップから、振り向きざまに強烈なボレーシュートを放つも、枠を捉えた一撃はGKロレナのビッグセーブに阻まれる。

 70分には古賀塔子を下げて清家貴子と、攻撃的な交代策を敢行するが、なかなか決定機を作り出せない。80分には守屋と宮澤を下げて千葉玲海菜、谷川萌々子を送り出し、前への勢いをさらに強める。

 なでしこジャパンが攻勢を強めるなか、後半アディショナルタイムの直前には、ボックス右でクロスボールを受けた谷川が切り返しで相手をかわそうとすると、これが体勢を崩した相手の腕に直撃。OFR(オンフィールドレビュー)を経て、主審はPKを宣告し、なでしこジャパンがこの日2度目のPKを勝ち取った。前半の終盤とは異なり、今度はキャプテンの熊谷がキッカーを務める。長めの助走から、GKの逆を突いてゴール右下に流し込み、なでしこジャパンが土壇場で試合を振り出しに戻した。

 このまま試合終了かと思われたが、勢いに乗るなでしこジャパンはこのままでは終わらなかった。ブラジルが最終ラインでボールを繋ごうとしたところでパスのズレが発生すると、狙っていた谷川が、ダイレクトで右足を振り抜く。飛び出していたGKロレナの位置を見て、ループ気味のロングシュートを放つと、これがゴールに吸い込まれる。谷川のスーパーゴールで、なでしこジャパンが逆転に成功した。

 試合はこのままタイムアップ。なでしこジャパンは窮地に立たされながら、キャプテンの意地のPK、そして谷川の劇的な一撃により、今大会初勝利を掴んだ。なお、今大会はグループCまでの上位2チームに加えて、3位のうち上位2チームは決勝トーナメントに進むことができる。なでしこジャパンは勝ち点「3」を積み上げたことで、決勝トーナメント進出に一歩近付いた。
 
 次節は現地時間31日に行われ、なでしこジャパンはナイジェリアと対戦する。ブラジルはスペインと、それぞれ対戦。双方の試合は日本時間で8月1日の0時00分(31日の24時00分)キックオフ予定で、なでしこジャパンの試合の模様は『NHK Eテレ』にて生中継される。

【スコア】
ブラジル女子代表 1-2 なでしこジャパン

【得点者】
1-0 56分 ジェニフェル(ブラジル女子代表)
1-2 90+1分 熊谷紗希(なでしこジャパン)
1-2 90+6分 谷川萌々子(なでしこジャパン)

【スターティングメンバー】
なでしこジャパン(3-4-2-1)
GK:山下杏也加
DF:高橋はな、熊谷紗希、南萌華
MF:古賀塔子(70分 清家貴子)、長谷川唯、長野風花、守屋都弥(80分 谷川萌々子)
FW:宮澤ひなた(80分 千葉玲海菜)、浜野まいか(57分 植木理子);田中美南