ホンダの新型「フリード」はひとつ前のモデルに比べて何がよくなったのか。長きにわたり売れ続けた先代モデルのよかった部分はしっかりと引き継いでいるのか。親族が所有する先代フリードを何度も運転してきた私が、新型に試乗してじっくりと比較してみた。

  • ホンダの新型「フリード」

    試乗した新型「フリード」のボディカラーは「プレミアムクリスタルガーネット・メタリック」。あずき色っぽい赤はホンダ車の定番カラーだ

グレード展開はわかりやすくなった

ホンダのフリードは、3列または2列のシートを備えながらコンパクトなサイズを実現したミニバンだ。2008年に初代モデルが登場し、2016年には2代目に進化した。2024年6月に発売となった新型は3代目モデルとなる。

  • ホンダの旧型「フリード」

    2016年に登場した2代目「フリード」。2024年まで約8年間製造され人気を博した

コンパクトなサイズながら3列シートを採用しているミニバンは選択肢が少ない。2代目フリードは使い勝手の良さなどが評価されコンスタントに売れ続けていた。

新型フリードはグレード展開がわかりやすくなった。新旧の違いは以下の通りだ。

■先代(2代目)フリードのグレード展開
・フリード:6人または7人乗り(3列)
・フリード+:5人乗り(2列)
・フリード クロスター:6人乗り(3列)
・フリード+ クロスター:5人乗り(2列)

■新型(3代目)フリードのグレード展開
・フリード エアー:6人または7人乗り(3列)
・フリード クロスター:5人乗り(2列)または6人乗り(3列)

組み合わせはいろいろだが、基本的には3列シートがいいならエアー、2列シートを希望するならクロスターと覚えておけばわかりやすいだろう。クロスターでも、キャプテンシートを採用した6人乗り仕様は3列シートとなる。

全体が直線的なデザインに

デザインはどう変わったのか。

正面から見るとわかりやすいが、新型フリードは先代に比べ直線的なデザインになっている。先代モデルは斜め基調の面構えで、鋭く走るというイメージだった。新型は鋭さが薄まり、よりモダンで近未来的に、そして穏やかになったような印象を受けた。

  • ホンダ新型「フリード」
  • ホンダ旧型「フリード」
  • 左が新型、右が先代。ヘッドライトがまっすぐになり、直線的なデザインになったことがわかる

横から見ても、先代が前から後ろへ流れるような流線的なラインを多用していたのに対し、新型は直線的でスクエアな造形に変わっている。

  • ホンダ「フリード」
  • ホンダ「フリード」
  • 左が新型、右が先代。新型は直線的なデザインになったことで、窓が真四角に近い形状になった。これにより、室内によりたくさんの光が入り込む

リアのデザインもかなり変わった。テールランプは小さくなり、彫り込みも少なくあっさりとしている。いい意味で地味な見た目になった感じもするが、個性を主張しすぎないデザインを好むユーザーにとってはうれしい変更点だろう。

  • ホンダ「フリード」
  • ホンダ「フリード」
  • 新型「フリード」(左)に先代モデルの面影はほぼない。テールライトはかなり小さくなったが、視認性は良好だ

エクステリアの最大の特徴は全体的にスクエアで直線的なデザインになったこと。先代モデルのプラットフォームを流用しているため大きさはほとんど変わっていないが、デザインを変えるだけでここまで印象が変わるのかと正直驚いた。好みの問題になるが、シンプルで飽きのこないデザインは好印象だし、個人的に今回のフルモデルチェンジは成功したと感じている。

運転のしやすさは向上した?

次に内装を比べてみよう。

大きく変わったのがメーターパネルの位置だ。先代モデルではハンドルの奥に収納スペースがあり、そのさらに奥にメーターパネルがあった。この配置だとメーターがフロントウィンドウに近くなるので、運転中の視線移動が少なくてすむという利点がある。

新型ではメーターパネルがハンドルのすぐ奥に移動している。位置としては先代よりも手前になったわけだが、ここでも視認性はかなりいい。

  • ホンダ「フリード」
  • ホンダ「フリード」
  • 左が新型、右が先代。シフト周りのボタン配置ももちろんだが、やはり最も大きく変わったのはメーターパネルの位置だ

  • ホンダ「フリード」
  • ホンダ「フリード」
  • 運転席から左前方を見たときの視界。新型(写真左)の方がAピラーの根本が太くなっているものの、視界は向上している。先代モデルの視界も決して悪くなかったのだが、比較すると違いがよくわかる

乗り比べてみると、新型フリードの方が運転中に周囲を確認しやすかった。これはおそらく、ダッシュボードが直線的なデザインになったことが影響している。乗車してすぐはAピラー(フロントガラスと天井を支えている柱の部分)が太くなり視界が悪くなったのではと感じたのだが、しばらく走るとまったく気にならなくなった。ピラーやナビなども、視界を邪魔しない位置に配置してある。

  • ホンダ「フリード」
  • ホンダ「フリード」
  • 左が新型、右が先代。新型は開閉時の取っ手部分の下に大きめのポケットひとつを備える2層タイプ、先代モデルは取っ手の下にドリンクホルダーと小物入れ、その下に大きめのポケットを備える3層タイプだった

運転席周りの収納の数は先代と同等。使い勝手が悪くなってしまったところはないと開発陣は説明する。実際、先代モデルにあったハンドル奥の収納スペースは助手席側に移動しているし、深くなり、開けやすくもなっている。ただ、センターコンソールにあった収納式のテーブルは、新型フリードでは廃止されてしまった。

この点については、ホンダの開発メンバーの間でも残すかなくすかで意見が分かれたそうだ。個人的には、便利だったので残してほしかった。

  • ホンダ「フリード」

    先代「フリード」にあったスライド式のセンターテーブル。財布や駐車チケットなど、ちょっとした小物を置くのに便利だった。水平なので弁当を置くときにも重宝していた(小さいのではみだしてしまってはいたが…)

3列目シートの格納が手軽に!

後席の使い勝手はこれまでのよさを継承しつつ、さらに改良が加えられている。

後席用に独立したエアコンが設けられたのは嬉しい変更点だ。ミニバンは室内が広いので、前席のエアコンだけだと室内温度を快適に保つのが難しい。特にここ最近の夏の暑さは、例年にないほど厳しい。後席用のエアコンはもはや必須装備だ。

  • ホンダ「フリード」
  • ホンダ「フリード」
  • 新型(左)は後席用のエアコン吹き出し口あり。広い車内空間を効率よく冷やしたり温めたりするには必須の装備といえるだろう

3列目シートを跳ね上げて格納する際のシートの固定は、これまでよりやりやすくなっている。具体的には、天井付近にあったフックを取り付ける金具の位置が、より手前かつ下(Dピラー付近)に移動したことで、楽にシートを固定できるようになった。地味な変更点だが、先代モデルと比較すると明らかにラクだ。

  • ホンダ「フリード」
  • ホンダ「フリード」
  • 3列目シートを跳ね上げる際はフックでシートを固定するのだが、その位置が変わった。先代モデル(左)ではフックを天井付近にひっかけなければならず、けっこう力が必要だった。新型(右)では取り付け位置がかなり手前かつ下になったことで、だいぶラクになった

後席は2列目も3列目も、ヘッドレストなどの厚みを少なくし、圧迫感を低減すると同時に、視界を広くするための工夫を施したという。比較してみてそれを実感できたのは3列目の窓「リヤクォーターガラス」だ。新型フリードでは、デザインが全体的に直線的になったおかげで、リヤクォーターガラスもほぼ真四角になった。光が多く入るようになり、開放感が増した。

  • ホンダ「フリード」
  • ホンダ「フリード」
  • 3列目シートを比較。左が新型、右が先代だが、写真だけではどちらが新型かわからないかもしれない。それくらい、先代モデルでも後席の快適性は抜群だった

結論:新型「フリード」は買いなのか?

新型フリードはデザインがよくなり、車内の質感も向上していた。新旧を比較してみて、これから買うなら新型一択だと実感した。

ただ、あえて先代モデルを選ぶという手もある。もう新車では買えないため中古車になるが、車両本体価格が抑えられるので、初期コストを抑えたい人にとっては最良の選択肢になるからだ。新型のデザインがあまり好きではないという人にも先代モデルはオススメできる。

どちらのモデルを選んだとしても、間違いなくいえるのは、圧倒的な使い勝手のよさと取り回しのしやすさを手に入れられるということ。3列シートを備えたコンパクトなミニバンを求めているユーザーにとっては、間違いなく最有力候補となる1台だ。新型にせよ先代にせよ、フリードを選んでおけば日々の生活が便利になるのは間違いない。