藤井聡太王位に渡辺明九段が挑戦する伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦七番勝負(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)は、藤井王位先勝で迎える第2局が7月17日(水)・18日(木)に北海道函館市「湯元 啄木亭」で行われました。対局の結果、周到な用意を生かして攻め切った渡辺九段が97手で勝利。1勝1敗のタイに戻して王位奪取に向けた一歩を踏み出しました。
息が合った序盤戦
開幕局では勝勢を築きながら詰み逃しで大逆転を許した渡辺九段。再び先手番で迎えた本局では前局をなぞるように相掛かり空中戦に誘導します。先に手を変えたのは後手の藤井王位で、相手の注文に乗るように飛車で歩を取ったことからは相応の準備がうかがわれます。
定跡を外れた第二次駒組みに移った盤上は、やがて渡辺九段の決断の一手により動き始めます。前の手と合わせて1時間以上の長考のすえに放った中央への自陣角は盤面全体をにらむ好位置。右銀との連携で確実な桂頭攻めを見せることで後手の焦りを誘うことに成功しました。
機敏な仕掛けで渡辺九段リード
黙っているわけにいかない藤井王位は勝負手で応じます。敵陣深いところに歩を垂らしたのは、相手に主導権を委ねるもたれ指しの手法。実戦的な勝負術に思われましたが、以降の渡辺九段の指し回しが鋭く、この歩がと金になることはありませんでした。
万全の準備を整えた渡辺九段は満を持して攻撃開始。飛車取りを手抜いて駒の取り合いに踏み込んだのは数手後の角の打ち込みに期待した手順で、駒割はやや損ながら玉の堅さに大きな差があるため先手優勢は誰の目にも明らかです。藤井王位は左銀の遊び駒が響きます。
有無を言わさぬ着地
優位に立った渡辺九段はきっぱりとした決め手で着地を決めます。角を切って後手玉を一気に追い込んだのは自玉に詰み筋がないことを生かした必勝の方程式。紛れのない形で、さすがの藤井マジックも鳴りを潜めました。終局時刻は17時40分、最後は藤井王位が投了。
全体を振り返ると、積極的な攻めで先手番の利を生かした渡辺九段の策士ぶりが光った格好で、反対に第1局の作戦負けを修正しきれなかった藤井王位としては課題の残る結果に。注目の第3局は7月30日(火)・31日(水)に徳島県徳島市の「渭水苑」で行われます。
水留啓(将棋情報局)