第18回朝日杯将棋オープン戦(主催:朝日新聞社・日本将棋連盟)は一次予選が進行中。7月4日(木)には計9局が行われました。このうち、東京・将棋会館で行われた第5ブロックの阿部光瑠七段—西山朋佳女流三冠の一戦は106手で西山女流三冠が勝利。2回戦に進出するとともに、「10勝以上かつ6割5分以上」の成績条件を満たし棋士編入試験の受験資格を獲得しました。

注目の大一番

4連勝で枠抜けとなる予選の1回戦。後手となった西山女流三冠はノーマル三間飛車を採用、先手の急戦策を見て四間飛車に振り直します。先手の阿部七段が採ったのは右桂での早仕掛けをチラつかせつつ持久戦への移行も見たハイブリッド策で、前例の少ない形。

西山女流三冠の目が光ったのは31手目、阿部七段が積極的に6筋の歩を交換した瞬間でした。「振り飛車には角交換」の格言に逆行するように角道を開けたのが場合の好手。先手の飛車先突破よりも4筋の逆襲が早いという大局観で盤上は振り飛車ペースに転じます。

腕力発揮の圧勝劇

飛車の成り込みを狙われた局面で、敵飛の前に歩を差し出したのが西山女流三冠の読みの深さを示す好手でした。これを取ると後手から銀捨ての追撃で飛車筋を通すさばきが生じます。実戦もこの狙いを起点に気持ちよい攻めが入って後手優勢がはっきりしました。

終局時刻は11時35分(持ち時間各40分)、最後は形勢の開きを認めた阿部七段が投了。投了図では左辺にいた後手の攻め駒がすべてさばけた形で、西山流振り飛車の快勝譜となりました。なお西山女流三冠は午後に行われた佐々木大地七段戦では敗れたものの、局後のインタビューで棋士編入試験受験の意思があることを明らかにしました。

水留啓(将棋情報局)

  • 西山女流三冠は局後「できることをしっかりやって挑みたい」と棋士編入試験への意気込みを語った

    西山女流三冠は局後「できることをしっかりやって挑みたい」と棋士編入試験への意気込みを語った(撮影:編集部)