AOKIは2024年秋冬商品の展示会を開催しました。同日行われたメディア懇親会には同社代表取締役社長 森裕隆氏が登壇し、2023年の振り返りと2024年の方針について語りました。

  • AOKIが「2024年秋冬商品展示会」を開催

■生き残りをかけた取り組みが功を奏した2023年

新型コロナウイルスの分類が5類に移行され人々の生活にも変化が現れた昨年、働き方やライフスタイルの多様化、ワークライフバランス意識の浸透などの影響により、消費者ニーズもさらに多様化が進行したと森氏は振り返りました。アパレル市場においては、コスパ重視派と品質志向派の二極化が顕著になり、健康志向の高まりに伴うウェルネスウェア市場の拡大もみられたといいます。

  • AOKI 代表取締役社長 森裕隆氏

そのような市場環境の中同社は、2023年を"生き残りをかけた1年"として、ユーザーニーズに合わせた商品開発、店舗DX化・省在庫化などによる店舗運営効率の改善、物流インフラの再構築に向けた戦略的投資などを実施、結果として5年ぶりの売上高1,000億円を達成し、1店舗あたりの売上高においても過去10年で最高の好業績をおさめました。

■2024年は"飛躍の年"を目標に挑戦を続ける

2024年については、"生き残りの2023年"から"飛躍・進化の2024年"にすべく「新しいものにどんどん挑戦していきます」と力を込めます。

具体的な計画については、多様化するユーザーニーズを満たす、高品質・高機能な商品設計、需要の高まりをみせる疲労回復ウェアの拡大、女性ワーカー向け商品の強化といった「商品企画の仕掛け」を実施。さらに、取り置き予約サービス開始やWEBチャットスタイリングサービスの強化など「OMO推進による顧客体験の向上」、ビジカジ専門店 ORIHICAの出店強化による「マーケットシェア拡大」といった取り組みに重点を置くことを明かしました。

森氏は、創業以来65年間で培ってきた同社の「スーツを作る・スーツを販売する力」を武器に、新たな視点も柔軟に取り入れることの重要性を強調します。変わらぬことと変わること、双方を大事にしながら多様化するニーズに応えたサービスを提供することで「お客様に満足していただける、そんな会社にしていきたいという想いです」と締めくくりました。

■多様化するニーズに応え「商品力」を磨き続ける

森氏のメッセージの中で繰り返し登場したキーワードに「商品力」がありました。いくら販促に注力し店舗の運営効率を上げても「商品力を磨き上げなければ購入にはつながらない」という言葉に込められた信念は商品からも伝わります。

2024年秋冬商品展示会で紹介されたアイテムは、オフィスコーデを楽しめるトレンド要素を盛り込んだデザイン性と共に、着用する人の快適性が追求された機能が随所にちりばめられ、「そう、こういう機能がほしかった!」と思うものばかり。特に気になった商品を紹介していきます。

「動きやすさ」「お手入れのしやすさ」を備える商品力

AOKIといえば2020年に発売され大ヒットした「パジャマスーツ」を思い浮かべる人も多いと思いますが、今年はさらに、スポーツウェアとしても着用できるストレッチ性のある素材を採用した商品に注目です。

今秋発売されるAOKIの「BIZMOVE」というシリーズは、きちんと感を持ちながらハイテンション素材による動きやすさを兼ね備えた着心地が魅力です。

  • AOKI「BIZMOVE」シリーズ

ジップパーカー、ダウンベスト、パンツ、ロングTシャツと幅広いラインナップで展開し、パジャマスーツとのコーディネートも計算して企画しているといいます。

ORIHICAが今年の2月から展開している「BIZSPO」も注目です。スポーツ感覚のビジカジスタイルとして、仕事帰りにそのままジムやゴルフなどに着用することを想定している本シリーズ。秋にはアウターが加わり、それ以降もさらに拡大していく予定だそう。

  • ORIHICA「BIZSPO」シリーズ

スイングしているマネキンの体勢からも伝わりますが、この圧倒的な生地の伸び! 縦横どちらにも伸びる柔らかい生地が動きやすさの秘訣だといいます。

働く女性を応援する「MeWORK(ミワク)」には、洗える・防シワ・ストレッチの機能性を持つジャケットが豊富にラインナップ。特に袖元や首回りなどの汚れが気になりやすいジャケットですが、こまめに自分で洗えるのは本当にうれしいですよね。

  • AOKIレディース「MeWORK(ミワク)」ジャケット

さらにORIHICAが女性向けに展開する「ORIHICA RHYME(ライム)」から販売される「洗えるニット」シリーズも注目です。マシンウォシャブルで手軽にメンテナンスができることに加え、ピリングになりにくいもの、静電気の軽減をしてくれるもの、シルクの風合いがあるものなどの中から自身の好みに合わせて選ぶことができます。

  • ORIHICAレディース「RHYME(ライム)」の「洗えるニット」シリーズ

写真のようなニットジャケットは、見た目のきちんと感がありながら柔らかな着心地で疲れにくい点も魅力のひとつ。ゴールドのボタンや白いラインなど、オフィスファッションを楽しめる優れたデザイン性も素敵でした。

「温度調整のしやすさ」を備える商品力

続けて紹介するのは、温度調整のしやすさを備えたアイテムたち。AOKIでは昨今の残暑の厳しさや暖冬といった「気候変動」に着目し、その日の気温や室内外で温度調整がしやすい商品を提案します。

例えばこちらの写真のトップス。残暑が厳しい秋口から着用できるよう、薄手のニット&気温調整がしやすいレイヤードスタイルになっていますが、ニットをめくってみてみると……

  • 「MeWORK(ミワク)」レイヤードスタイルを楽しめるトップス

下に着用しているシャツは左右が開いてベストのような形になっていました。この形であれば、気温が高めな初秋の日でも快適に秋ファッションを楽しめそうです。

  • シャツとニットがずれないよう留めるボタンが付いている(写真左)など、細部まで工夫が施されている

アウター商品も、暖かさがありながら薄手で、その日の天候や季節に合わせてレイヤードスタイルで調整しやすいアイテムが揃います。

  • 「MeWork(ミワク)」アウターラインナップ

グレンチェック柄でカーディガンに近い感覚で羽織れそうな一枚仕立てのウールコート(左)や、超軽量の高機能中綿を使用したキルティングコート(右)など、秋冬コーデのアクセントになる素敵なデザインに仕上がっています。

一方、メンズのアウターで気になったのは、太陽光発熱(ソーラーヒート)と、吸湿発熱(ヒートウォーム)、2つの発熱に着目したという「上熱シリーズ」です。

  • AOKI「上熱シリーズ」より「ソーラーヒートコート」

「ソーラーヒートコート」(上の写真)は、太陽光に含まれる近赤外線を吸収し、生地表面温度を上昇させることで衣服内の暖かさを保てる仕様になっています。中には着脱可能なライナーが付いていて、その日の気温に合わせて調整可能です。

  • AOKI「上熱シリーズ」より「ヒートウォームコート」

対する「ヒートウォームコート」(上の写真)は、中綿に帝人フロンティアとAOKIが共同開発したという、吸湿発熱素材「トップミクロスⅦ」を使用することで寒い日も暖かく着用できるのだそう。しかも驚きなのが、ポケットの多さ。写真のアイテムは表に7つ、内側に6つ、合計13個のポケットがついているので、手ぶらで外出したい人にもおすすめです。

「健康志向」に応える疲労回復ウェアも拡大へ

健康志向の高まりを受け売行きが好調だという「リカバリーケアプラス」も、この秋拡充を予定しているといいます。

  • リカバリーケアプラス

身体から発する遠赤外線エネルギーを高濃度セラミック繊維が身体に輻射することで血行を促進し、疲労回復を促す効果があるという本シリーズ。着るだけで疲労回復効果が期待できる上、セラミック練り込み糸なので洗濯しても効果が持続するのもうれしいポイントです。

現在はホームウェア上下、Tシャツ&七分パンツのセット、パジャマスーツリカバリーのラインナップが販売されており、この秋からレディースアイテムの発売も予定しているそうです。

  • パジャマスーツ「AOKI疲労回復ウェア・リカバリーケアプラスジャケット」

「高品質志向」におすすめ、TIE YOUR TIEとのコラボ商品

最後に紹介するのは高品質志向のユーザーにおすすめ、ORIHICAとTIE YOUR TIE(タイユアタイ)のコラボ商品です。

  • ORIHICAとTIE YOUR TIEのコラボ商品

スーツ上下で5万円台という、高コスパ商品がならぶORIHICAの中では高価格帯のアイテムですが、イタリア・フィレンツェの名店として知られるTIE YOUR TIEのテイストを取り入れて独自に開発したスーツは、上質さと着心地を追求したORIHICAの最上級ラインとしての自信作。

スーツのほかワイシャツやネクタイも販売されていますが、今秋よりさらに品種を拡大、一部部限定店舗ではTIE YOUR TIE特設コーナーを設ける予定もあるそうです。懇親会の中で森氏は、昨年10月にAOKIから発売された"1着8万円台"という価格帯の「金のスーツ」も売行きが好調だと明かしており、今後も高クオリティ商品ニーズは継続しそうです。

働き方やライフスタイルの変容により多様化するニーズに、よりマッチする商品・サービスを提供し続ける同社の取組みから今後も目が離せません。