若者の生理痛は放置してはいけない?鍼灸治療で生理痛は良くなる?!

■鍼灸治療は生理開始時の痛みに有効です

最近、生理痛を訴える高校生から大学生世代の若い患者様がとても多く来院されます。生理痛を少しでも和らげたいとの思いから、鎮痛薬やピルを毎日服薬している人が多いようです。西洋薬で効果がない人は、漢方薬も飲んでいます。数年来服用しても効果がないため、鍼灸治療に期待して来院されます。
鍼灸治療は、痛みの軽減または消失に有効です。むしろ、得意分野と言えます。2024年4月から放映されているNHK朝の連続テレビ小説『虎に翼』では、「月のもの(生理痛)には三陰交(というツボ)を押すのが良い」というシーンがありました。昔から、生理痛に東洋医学・鍼灸治療が有効なことは知られていますが、現代人にはなじみがないかもしれません。
一般的に、生理は4~5日続きますが、生理初日と2日目に強い生理痛が生じます。その時、鍼灸治療をすると、痛みは軽減または消失します。生理痛でお悩みの人で、薬を飲んでも変わらないという人は、生理開始時に鍼灸治療を受けてみて戴きたく思います。
しかしながら、この対処法は対症療法です。薬物治療(内科治療)を回避したい人には、賢明な選択ですが、痛くなってからの話ですので、痛みを覚えることには違いがありません。痛みの時間に長短という差があるだけです。
鍼灸治療の効果を期待する場合は、生理の前日に治療をして戴くのが良い選択です。痛みをほとんど感じないか軽く済むことでしょう。

■生理前日が特定できない人は治療開始時期をいつにすれば良い?

生理前日の治療は生理痛の対症療法ですが、性周期がはっきりわからない人もいます。
28日周期か30日周期が一般的ですが、10代の時は性周期が定まらないという人もいます。
生理前は、排卵により女性ホルモン(黄体ホルモン・プロゲステロン)の分泌量が急増しますが、受精卵が着床しないと生理になります。その際、分泌量は一気に減少しますが、その変化に身体が対応できないと、自律神経のバランスがくずれ、

1.頭痛
2.肩こり
3.胃痛
4.イライラ
5.集中力低下

などの不調を引き起こします。
また、黄体ホルモン(プロゲステロン)は、乳腺を発達させる、体温を上げる、体内の水分を引き出すなどの作用があるため、

1.乳房が痛くなる
2.だるさが出る
3.下半身がむくむ

などの状態になります。生理の1~2週間前から生理が始まるまでにあらわれる症状は「月経前症候群(PMS)」と呼ばれています。性周期が定まっていない人は、からだに現れる変化から生理を予測できますので、生理開始予測時期の1~2週間前から2~3日おきに数回治療すれば、生理痛の回避もしくは軽減が可能です。

■若い人に多い機能性月経困難症

日常生活に支障をきたす生理痛の人は「月経困難症」と言われ、「器質性月経困難症」と「機能性月経困難症」の2つに分類されます。「機能性月経困難症」は、原因となる病気がない状態です。一般的に思春期から20代前半に多くみられます。
機能性月経困難症の人は、生理直前から前半まで、プロスタグランジンというホルモンが急に増えます。この物質は子宮の収縮を促して生理の経血を身体の外へ排出する役割を果たします。この量が多すぎると

1.子宮収縮によるキリキリとした痛み
2.腰痛
3.だるさ
4.冷え
5.吐き気
6.下痢

等の症状を感じます。この状態の時に鍼灸治療をすれば、苦痛を取り除くことが出来ます。ちなみに、陣痛の痛みは、プロスタグランジンが原因です。また、生理痛のある女性は、生理痛のない女性より子宮内膜や経血に含まれるプロスタグランジンの量が多いことがわかっています。
生理後半は、骨盤を中心に血液の流れが悪くなり、下腹部の鈍痛や腰回りの重苦しい感覚を引き起こします。軽い生理痛の場合、血行を改善すれば症状改善が可能です。温める方法が有効ですので、灸治療が適しています。

■生理痛が重度になると生活の質が下がる?生理痛は根本治療が可能?!

鍼灸治療で、生理痛が軽減もしくは消失することを実感できたら、今度は根本治療に目を向けて戴きたく思います。
「根本療法」をご希望の人は、基礎疾患をお持ちかそうでないかで治療期間は異なりますが、月に1~4回の治療を6カ月から10か月程度継続して行うと、生理痛を感じなくなります。
広島大学大学院医系科学研究科の研究論文「日本人の若年および成人女性における月経困難症の重症度による生活の質:ウェブベースの横断的研究」によると、30歳未満の機能性月経困難症(原因となる病気がない生理)における生活習慣の調査では、健康に関するさまざまな要因(喫煙、飲酒、睡眠時間、朝食の摂取、中間の食事、運動)が、異なる症状の重症度(軽度、中等度、重度)に対してどのように関連しているか調査しています。この結果を見ると、いずれも有意な特徴がありません。生理痛は、生活環境とは関係なく生じているとしています。むしろ、生理痛以外にも生じる様々な症状が生活の質を低下させ、貧困になる点を問題視しています。生理に伴う様々な不調があるものの、周囲の理解が得られず、身体を休めることができない人はたくさんいることを、NHK「生理痛で学校に行きたくない 休みたくても休めない学生たちの実情」でも、取り上げています。生理痛の改善は、社会問題になっています。
高校生や大学生は勉強が忙しいので、とかく夜型の生活になります。朝方の生活に転換して、身体が冷える生活を回避することで、功を奏する場合もあります。朝の入浴を常時していると体調を崩しやすいので、入浴に関しては、JIJICO内にある下記コラムをご参照戴きたく思います。

朝風呂や朝のシャワーは自律神経のバランスに影響?入浴で気を付けるべき習慣とは
長湯は身体に良くない?熱いお風呂は危険!?安全な入浴方法とは

薬物治療(内科治療)で効果を得られない人は、鍼灸治療(内外科治療)をご検討戴きたく思います。

■機能性月経困難症に鍼灸治療や瘀血治療は有効な治療法です

機能性月経困難症に対しては、東洋医学関連の鍼灸学会で、数多く症例発表されています。鍼灸治療は有効ですので、是非ご相談戴きたく思います。身体を冷やさないことも、大切な要素ですので、JIJICO内にある、下記コラムをご参照戴きたく思います。

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10歳代から20歳代のうちに、生理痛を改善することは大切です。30歳代以降になると、子宮内膜症など器質性月経困難症に移行する場合がありますので、生活を見直すことは大切です。
生理痛の解消に、ヨガ(YOGA)はお勧めです。体調維持や健康管理のために、是非ご活用戴きたく思います。運動法、呼吸法や瞑想法を学びたい人は、清野メディカルヨーガもしくはお近くのヨガ教室(YOGA School)にご相談戴きたく思います。
養生に関する詳細は、清野鍼灸整骨院ホームのページ内にある『くらしと養生』をご参照願います。

(清野 充典:鍼灸師)