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現地時間6月1日、ホームでのコロラド・ロッキーズ戦でメジャー通算100盗塁を達成したロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手。今季は過去最高のペースで盗塁数や成功率を伸ばしている。これを機に、今回は大谷選手の走塁データから、盗塁や走塁の傾向に焦点を当てたい。なお、今季の各数字は現地時間6月2日終了時点のものである。
今季の大谷選手の盗塁について着目すると、現時点で過去最高の数字を残している。特にホーム球場のドジャー・スタジアムで、チームへの盗塁面の貢献が大きいのが特色である。
現地時間6月2日終了時点で、大谷選手の通算の盗塁数は100、盗塁死数は34、成功率は74.6%になっている。ホーム・ロード別にみると、ホームゲームの方が好成績だ。
・ホーム:盗塁58、盗塁死14、成功率80.6%
・ロード:盗塁42、盗塁死20、成功率67.7%
各年の推移は以下のようになっている。
60試合だった2020年を除き毎年2桁の数字を残している中、2021年以外では成功率は毎年70%を超え、2021、2023年は20以上の盗塁を記録した。
2024年は61試合消化した時点で既に2022年全体の盗塁数を超えた一方、盗塁死はわずか1つしかない。現在のペースだとシーズン終了時の盗塁数は37と過去最高の数字になる。盗塁に関しては、今のところ大谷選手は過去最高の成績を残しているわけだ。
盗塁成功率上昇の要因、“怪物“との比較
2022年に75.4%だったMLB全体での盗塁の成功率は、2023年80.2%、2024年77.7%と、いずれも2022年を上回る。この上昇の要因として2023年のピッチクロック導入、ベースの拡大などの影響が挙げられている。
しかし、大谷選手の場合、成功率の上昇幅はMLB全体の上昇幅を上回っていることから、この2年の変化の原因をピッチクロックだけに帰することはできない。
今季は、14盗塁のうち85.7%の12盗塁を本拠地ドジャー・スタジアムで記録している。2023年以前の本拠地、エンゼル・スタジアムでの盗塁の割合は53.5%、2021~2023年に限ると50.9%だった。
これらの数字と比較して、今季のホームでの盗塁の割合は突出して高い。一方、大谷選手の盗塁数がドジャースの総盗塁数(37)に占める割合は37.8%だ。ホームのドジャー・スタジアムだと54.5%になる。
この数字は、盗塁数がMLB最多の32であるシンシナティ・レッズのエリー・デラクルーズ選手に関する同様の割合(36.4%、うちホームで43.2%)を上回る。
しかし、だからと言って「ドジャー・スタジアムでの盗塁成功率が高い」と断言できないのも面白いところだ。大谷選手は、ロサンゼルス・エンゼルス在籍時にドジャー・スタジアムで一度も盗塁を成功させていないばかりか、盗塁死を3回記録している。
そのうち2回は捕手が現在のドジャース正捕手のウィル・スミス選手で、1回は記録上ホームスチール失敗となったものだ。
トップスピードは意外な数字に…
大谷選手の走塁の特徴を米分析サイト『Baseball Savant』の数値データからまとめると、以下のようになる。
「トップスピードは速くないがスタートダッシュが良いために全体として速い」
『Baseball Savant』から引用した、6月2日終了時点における“Sprint Speed“の一覧の図を以下に示す。これは、簡単に言えば走塁中のトップスピードに相当する。大谷選手の箇所にはマークを付けている。
大谷翔平選手の数値は秒速28.1フィート(時速換算で30.8㎞)と、MLB平均(秒速27.0フィート、時速換算で29.6㎞)を上回るものの、飛びぬけて速い部類には入らない。
MLB全体ではトップ100にも入っておらず、日本人野手であるシカゴ・カブスの鈴木誠也選手よりも遅い。日本人ファンの目線では、イメージよりも遅くて驚く人もいるかもしれない。
走塁は「足の速さ」だけじゃない…?
走塁のトップスピードだけを見ると、意外にも突出しているとは言えない数字だった大谷選手。しかし、「HP to 1B」(打席から1塁に到達する時間)になるとがらりと変わる。大谷選手のこの指標は4.10秒とMLB全体で4位にランクされる。トップスピードは遅いのに全体のスピードは速い。なぜだろうか。
その秘訣の1つは、走塁のスタートダッシュのよさ、言い換えれば初速の高さにあるようだ。『Baseball Savant』では、「90ft Running Splits」という塁間距離にあたる90フィート(27.431m)の走行時間を示している。
この数字は5フィート(1.5m)刻みでも出されている。大谷選手の「90ft Running Splits」はMLB全体ではベスト30(※)に入る3.83秒を示しているほか、5フィートまでの時間は0.51秒、10フィートまでの時間は0.80秒と、ともにMLBでベスト5に入る速さになっている。
これ以外にも、打ってから走塁に入るまでの動作の速さのほか、一塁までの距離が右打者より近い左打者であることが影響している可能性がある。
(※:上記デラクルーズ選手のようなスイッチヒッターの場合、左打席・右打席の2通りの数字がある。左右両打席ごとに1人、合計2人としてカウントされている)
これまで取り上げた選手の主要指標を比較すると以下のようになる。
大谷選手の倍以上の盗塁を記録しているデラクルーズ選手の打席から1塁までの到達時間は、スイッチヒッターであり右打席を含むこともあって、実は大谷選手より長い。
一方、塁間の速度はデラクルーズ選手の方が速い。このように、複数の指標から走塁の中でも得意不得意が見えてくる。
MLBの盗塁・走塁に関する指標は打撃に比べてまだ少ないが、視点を変えると面白い傾向が出てくる。今後のデータ分析の進行や新指標の開発で大谷選手の盗塁・走塁の技術がどのように浮かび上がるか、興味深い。また、今後の大谷選手の活躍が、走塁に関しても新たな視点や面白さを提供してくれるはずだ。
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【了】