識学は4月26日、「"ゆるブラック"に関する調査」の結果を発表した。調査は4月12日~4月13日、20歳~59歳の会社員300人(スクリーニング2353サンプル)を対象にインターネットで行われた。
近年、過度な長時間労働や残業、様々なハラスメントが横行する企業、いわゆる"ブラック企業"の改善が日本全体で進んでいる一方、もっと働きたいけれど働けない…、叱ってくれる上司がいない…、社員同士の仲が良すぎる…等、職場環境が"ゆるい"あまり、働き甲斐を得られない、またはモチベーションを保てないといった、"ゆるブラック"な企業にも注目が集まっている。
従業員数10名以上の企業に勤める20代~50代の会社員に、「あなたの職場は"ゆるブラック"だと思いますか」と聞いたところ、37.8%が「ゆるブラックだと思う」と回答した。性別や年代別で比較しても突出して高い層はなく、性年代関係なく、約4割近くの会社員が自身の職場を"ゆるい"と感じていることがわかった。
自身の職場が"ゆるブラック"だと思うと回答した人に、どういった点が"ゆるブラック"だと思うかを聞いたところ、最も多かったのは「収入が増えない」で67.0%、続いて「やりがいを感じられない」44.0%、「昇級できない・しづらい」43.0%という結果となった。"ゆるブラック"だと感じる点で挙げられたトップの"収入"と、続く"やりがい"との差は23.0%と、大きな開きがあり、やはり働いている以上、給与面での不満の蓄積が自身の職場を"ゆるブラック"と感じさせる要因になるようだ。
「収入が増えない」「やりがいが感じられない」と不満の声
自身の職場においてどういった点が"ゆるブラック"だと感じるのか、具体的に聞いたところ、「残業が制限されており、もっと稼ぎたい気持ちがあるのだが稼ぐことができない」(32歳男性/品質管理・検査)、「仕事はやりがいがあって頑張ってはいるのだが、あまり評価されてないので昇給率が低い」(51歳女性/生産管理)といった給与面や待遇に関する意見の他、「残業も少なく休みも取りやすいのだが、転職に活きるようなスキルは身に付かない」(38歳男性/研究・開発)、「やりがいのある仕事をなかなか任せてもらえないので自分の成長に繋がらない」(48歳女性/人事・労務)、「仕事がルーティン化しているため、1年以上勤務しても何も成長しない」(32歳女性/事務)といった自身の成長やスキルに関する意見、「私の職種であれば、残業も少ないし休みも比較的取りやすいが、資格取得などの自己研鑽に対する福利厚生や手当などがあまり充実していないので、モチベーションが湧かない」(28歳女性/事務・総務)、「働きやすい環境だけど昇進は望めないし仕事自体にやりがいがない」(50歳女性/人事・労務)、「ノルマは厳しくないが、収入も増えないし成長も見込めない等やりがいが感じられない」(27歳女性/販売・接客)といった、モチベーションに関する意見が寄せられた。
今の会社で働き続けたいかを聞いたところ、「働き続けたい」と回答したのは(「働き続けたい」「どちらかといえば働き続けたい」の合計)41.0%だった。また"ゆるブラック"な職場環境であるために転職を考えるかについても聞いたところ、転職を決めている方も含め、転職意向の人は60.7%という結果に。やはり職場環境が"ゆるい"ことは社員にとってプラスには働いていないようだ。
一方で、職場が"ゆるブラック"であることは企業にとってプラスになるのか。内訳をみてみると、「プラスになると思う」(「プラスになると思う」「ややプラスになると思う」の合計)はわずか12.3%で、職場環境が"ゆるブラック"であることは、企業にとって大きなマイナスとなっていることがわかった。
マイナスだと思う人からは、「人材が育たないし、人離れしていく」(53歳女性/財務・会計・経理)、「やる気のある人がどんどん辞めていく」(42歳女性/事務・総務)、「勉強したい人は退職してしまうので、向上心のない人材が集まってしまう」(41歳女性/医療)といった意見が寄せられた。
プラスだと思う人からは、「働きやすいから」(50歳女性/事務・総務)、「若い子が子育てと両立しやすい環境だから」(50歳女性/人事・労務)、「人件費削減になっているから」(29歳女性/財務・会計・経理)といった意見が寄せられている。
次に、"ゆるブラック"を改善するにはどうすればよいかについて聞いたところ、最も多かったのは「福利厚生の充実」31.3%で、「明確な評価制度」30.7%、「キャリアアップが見込める」29.0%と続いた。この会社に"所属してよかった"と思えることができたり、"自己研鑽ができる"という理由での「福利厚生の充実」、そしてこの会社に"所属し続けたい"と思わせるために必要な「明確な評価制度」と「キャリアアップ」が、"ゆるブラック"を改善することに有効だと考えているようだ。
"ゆるブラック"を改善することに有効な点として挙げられた「評価制度」について、自身の職場におけるその有無を聞いたところ、評価制度が「ある」と回答したのは55.0%だった。また評価制度があると回答した人で、その評価制度に納得しているかについても聞いたところ、「納得している」と回答した(「納得している」「どちらかと言えば納得している」の合計)のは33.9%だった。このことから、やはり自身の職場を"ゆるブラック"だと感じるのは「評価制度」の有無と、その納得感が関係していることがわかる。