ビザ・ワールド・ワイドジャパンは4月15日、大阪府において長期的・継続的なキャッシュレス決済の普及促進などを図る取り組み「大阪エリア振興プロジェクト」を4月17日から開始すると発表しました。特に中小店舗でのクレジットカードの対応を推進し、タッチ決済による利便性などのメリットを訴求することで、大阪府を皮切りに日本全国でのキャッシュレス決済の促進につなげたい考え。

キャッシュレス普及に「数百万ドル投資」

  • ビザ・ワールド・ワイドジャパンのシータン・キトニー社長

同社のシータン・キトニー社長は、「何百万ドルという桁の投資をして進めていく。大阪府において成功裏に進められたら、大阪府を超えて全国に広げようと考えている」と意気込みます。

Visaはグローバルにおいて、地方自治体などと協力して決済に関する課題解決を図る取り組みを行っています。各国でそうしたニーズは異なっていますが、日本ではキャッシュレス決済のさらなる普及を目指す取り組みとして、まずは大阪府と協力して取り組みをスタートします。

  • Visaが取り組む施策。日本では決済エコシステムを世界で最もスマートなものにするという目標があるそうです

「Visaのタッチ決済」キャンペーンがスタート

Visaと大阪府、大阪観光局が2019年に締結した「観光振興・キャッシュレス決済の推進に関する連携協定」にもとづく取り組みで、まずは17日から「Visaのタッチ決済」のキャンペーンを開始し、タッチ決済の利便性やセキュリティをアピールして利用の拡大を図ります。

こうしたプロモーションやキャンペーンを継続的に長期間にわたって行うことで、キャッシュレス決済の普及に繋げたい考えです。こうしたプロモーションを通して、利用客だけでなく、事業者に対してもクレジットカードを使ったキャッシュレス決済のメリットを訴求していきます。

キトニー社長は、特に日本の中小事業者でクレジットカードの導入が進まない理由について、「クレジットカードの技術にアクセスできない、そうした技術に対する理解が進んでいない、クレジットカードの現状に対する認知が進んでいない、手数料の問題、などがある」と複数の課題があると指摘します。

クレジットカードを導入することでどういったメリットがあるか、どういったことができるのか、といったメリットの理解が進んでいない点が課題だとして、「大阪エリア振興プロジェクト」ではこうした課題の解消を目指して様々なパートナーとともにプロモーションなどを実施していく計画です。

例えば、消費者はクレジットカードのタッチ決済に対して高い満足度を感じており、決済が早く、便利になって、少額決済でもクレジットカードが使いやすくなったと感じていると言います。

  • 消費者はクレジットカードのタッチ決済に満足しており、ニーズが高まっているとしています

Visaブランドのカードだけでも、2023年12月には1億2000万枚以上のタッチ決済対応カードが発行され、実店舗のVisa利用のうちの29%がタッチ決済だったそうです。2020年にはわずか1%だったので急速に利用が拡大。コンビニエンスストアのような日常利用の店舗だけでなく、非日常店舗での利用も拡大していると言います。

  • 対応カードも拡大しており、ほとんどのVisaカード発行会社がタッチ決済対応カードを発行。利用件数も急拡大しています

  • 日常的な加盟店での利用も拡大していますが、非日常加盟店でも利用が増えており、少額決済だけではない利用になっています

公共交通機関でも2024年3月末まで28都道府県で71プロジェクトが展開。2024年にはOsaka Metro、近鉄、東急電鉄、阪急電鉄などがサービスを提供すると発表しており、拡大が続いています。キトニー社長は、2022年から2023年にかけてタッチ決済の利用は8倍に伸び、23年末には230万件の取引まで拡大しているとのこと。

  • 公共交通機関での対応も広がっています

  • 利用者は、様々な利用シーンでクレジットカードのタッチ決済によるメリットを感じているとしています

こうしたタッチ決済の広がりに加えて、特に中小店舗におけるクレジットカードの導入に対する障壁の1つである導入コストを下げる取り組みも進められています。「Tap to Phone」などと呼ばれる仕組みは、スマートフォンを決済端末として扱うというもので、今の日本だとNFC対応Androidスマートフォンとアプリさえあれば、個人店舗でも簡単にクレジットカードのタッチ決済を導入できます。

  • 通常のスマートフォンが決済端末となるTap to Phone

フライトソリューションズの「Tapion」や、三井住友カードらが提供するsteraにおける「stera tap」などのサービスが提供されています。キトニー社長は、Tap to Phoneが「ゲームチェンジャーになる」と指摘。気軽にクレジットカードを導入できる点をアピールします。

そうした中で、Visaは大阪府らとキャッシュレス決済を広げるプロジェクトを開始します。大阪府は、訪日観光客の39.6%が訪れるというインバウンドが強いエリアで、こうした旅行客は9,210億円の消費を行っているそうです。今年はIGLTA Global Convention、来年は大阪万博と大きなイベントが続くことからも、さらなる需要の拡大が見込めるとVisaでは分析しています。

さらに「大阪は人口構成も重要」とキトニー社長。日本におけるZ世代の人口比率は平均14.5%ですが、大阪府に限ると20%と高く、若い世代が多いことがタッチ決済などの新しい決済手段の普及が高まるとし、さらに日本の人口の7%が集まる大都市である点も、今回大阪府と取り組む理由だとしています。

  • 大阪エリアは訪日観光客も多く、特に欧米はクレジットカードの普及率が高いため、クレジットカード導入のメリットがあります。日本人でも、特に若い世代でタッチ決済のニーズが高まっている、というのがVisaの分析です

取り組みでは、決済データなどを活用した社会インフラの整備や国内外の旅行客に魅力的なプログラムを策定する点でも大阪府などと協業する予定。大阪広域データ連携基盤(ORDEN)と連携することで、地域経済活性化、マーケティングでのデータ利活用などに取り組んでいくと言います。具体的なデータ連携に関しては今後協議していくとのこと。

  • データ連携による長期的な取り組みも継続していきます

プロモーションやキャンペーンを始めとした取り組みを継続していくことで、利用客のさらなるタッチ決済活用を促し、店舗側にもタッチ決済やクレジットカード決済導入のメリットをアピールすることで、大阪エリアのキャッシュレス化を推進。2年をめどに効果を確認しつつ、同様の施策を全国に広げていくのがVisaの戦略です。

  • 継続的、長期的に日本に投資することで、QRコード決済に対抗し、日本市場でさらなる存在感を高めたい考えです

キトニー社長は、「クレジットカードのタッチ決済を日本におけるスタンダードな決済手段にすること」が今回のプロジェクトの目標だと話し、世界でも単一のカードをタッチするだけで使える利便性や決済のスピード、スマートフォン決済の対応などを武器にタッチ決済のさらなる拡大を目指す考えを示しました。