パーソル総合研究所は3月29日、「職場の対話に関する定量調査」の結果を発表した。同調査は1月17日~22日、全国の20~60歳の正規雇用就業者(男女)6,000人を対象に、インターネットで実施した。

  • 職場内のコミュニケーションの実態

職場での会話機会のうち、本音で話せている割合を割り出したところ、「上司との面談」では51.2%、「チーム内の会議」では52.1%が、2割未満と回答しており、過半数以上の従業員が、上司面談・会議において本音・本心をほとんど話していないことがわかった。

本音で話せる相手について聞くと、50.8%が「職場内に1人もいない」と答えた。本音で話せる相手の性別・年齢は、「同年代の同性」(43.6%)が最も多い。

  • 本音で話せる相手とその相手の性別・年齢

職位によって、職場の「対話」についての認識ギャップがどのように違いがあるか調べたところ、一般社員・従業員はあまり本音を出せていないと感じているが、事業部長層や役員などの上位役職者は、職場メンバーも自分自身も本音で話せていると感じている傾向が強かった。一般層の本音のコミュニケーションとして「上司・経営に対する『愚痴』」が、極めて多くなっている。

本音を話しにくい相手の特徴について聞くと、「自分への無関心」が最も高く、「情報漏洩」「プライドの高さ」が続いた。本音で話しにくい人の特徴を属性別に見ると、すべての特徴において「上司」が最も高かった。「漏洩不安」は同僚、仕事関係の知人でも高く、「詐欺的態度(わかっているフリやウソをつかれそうだ)」はカウンセラーでもやや高い。本音で話せる人の特徴は、「傾聴的態度」が高かった。

  • 本音が話せない要因(個人編)

従業員は、職場で本音を話すことについて、「裏切り者リスク(組織に愛着が無いと思われそう)」「拡散リスク(意図しない範囲に広まりそう)」「低評価リスク(自分の評価が下がりそう)」「身分不相応リスク(自分の立場では言えない)」「無関心リスク(真剣に受け取ってもらえなさそう)」「関係悪化リスク(相手との関係が悪くなりそう)」という6つのリスクを感じていることがわかった。

  • 従業員は、職場で本音を話すことについて、主に6つのリスクを感じている

性年代別に見ると、女性の30~40代は全体的にリスク意識が強い。特に女性は「身分不相応」リスクの意識が強く、男性30~40代は「裏切り者」リスクを強く感じている傾向が強かった。

続いて、対話がもたらす影響について調べた。社内の本音コミュニケーションの度合いが高い層は、はたらく幸せ実感、ワーク・エンゲイジメント、ジョブ・クラフティング(従業員が主体的に自らの仕事を再定義し、創意工夫をする概念)、個人パフォーマンスが高い傾向にあることがわかった。

  • 対話がもたらす影響(個人編)

組織的には、本音で話せるコミュニケーション度が高い職場ほど、メンバーの知識・関心に対するメタ知識(知識や思考プロセスに対する認知・管理・活用)が蓄積し、変化抑制意識(職場で変化を起こすことの負荷)を低下させている傾向があった。それにより、アンラーニング(それまでのやり方や考え方を変えること)がより多く起こっている様子もあるという。

  • 対話がもたらす影響(組織編)