第9期叡王戦(主催:株式会社不二家)は本戦トーナメント1回戦が進行中。1月23日(火)には佐藤天彦九段―村山慈明八段の対局が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、相穴熊のねじり合いを150手で制した佐藤九段が2回戦進出を決めました。

力勝負の相穴熊

振り駒が行われた本局は後手となった佐藤九段がノーマル三間飛車に組んでスタート。昨年10月頃を転機に居飛車党との対戦では一貫して振り飛車を採用している佐藤九段。その作戦はゴキゲン中飛車からノーマル四間飛車まで多彩で対戦相手に的を絞らせません。

先手の村山八段が居飛車穴熊に囲ったのを受けて佐藤九段も振り飛車穴熊へ。ジリジリとした駆け引きが続くと思われたところで村山八段が軽快に仕掛けます。連続の歩突きで飛車をさばいたのは大きなポイントですが、佐藤九段も6筋からの反撃で独走を許しません。

「ゼット」生かしてつかんだ勝利

佐藤九段は居飛車穴熊の要である金を桂との交換に持ち込み駒得に成功。一足先に敵陣に食いついて優勢を確立します。続いて攻めの主軸と思われた馬を切り飛ばしたのはこの戦型特有の速度感覚で、駒台に金銀がない先手が受けに窮しやすいのを見越しています。

その後も寄せをめぐる粘り強い押し引きが続きますが、佐藤九段の着手は冷静でした。終局時刻は17時0分、村山八段の投了で佐藤九段の勝利が決定。投了図で後手玉は絶対に詰みがない形(俗に言う「ゼット」)で、先手玉は詰めろがほどけない形でした。

勝った佐藤九段は2回戦で永瀬拓矢九段―佐々木勇気八段戦の勝者と対戦します。

水留啓(将棋情報局)

  • 局後のSNS上には「振り飛車の希望」「誰の将棋を並べているのかと思った」などの賛辞が並んだ

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