第1回達人戦立川立飛杯(主催:日本将棋連盟、特別協賛:立飛ホールディングス)は、本戦トーナメントの全7局が11月24日(金)・25日(土)に東京都立川市の「立川ステージガーデン」で行われました。羽生善治九段と丸山忠久九段の間で行われた決勝戦は139手で羽生九段が勝利。栄えある初代達人の称号を獲得しました。

和服での公開対局

本棋戦は満50歳以上の棋士全員が参加する新棋戦。50名からなる予選を勝ち抜いた棋士4名とシード棋士4名の計8名が立川の舞台に集結しました。対局の前日には指導対局や前夜祭といったイベントが催され、多くのファンが棋士との交流を楽しみました。

準決勝で実現したのが羽生九段と森内俊之九段の一戦。かつての名人戦を彷彿させる名カードにSNS上は「往年のゴールデンカード」「羽生森内は春の季語」と盛り上がりを見せます。一方の山では丸山九段が佐藤康光九段を終盤の逆転で制して決勝進出を決めました。

丸山九段の一手損角換わり

注目の決勝戦は振り駒で後手となった丸山九段が伝家の宝刀・一手損角換わりを採用して幕を開けます。対して先手の羽生九段は早繰り銀から飛車先の歩を交換して一段落。盤上は第二次駒組みに入り、先手は矢倉、後手は右玉に玉を収めました。

駒組みが頂点に達したところで羽生九段が動きます。飛車取りに構わず銀を繰り出したのは玉型差を生かした強気の踏み込みで、ここから局面は羽生九段が細い攻めをつなげられるかが焦点に。丸山九段も千日手含みの受けで決め手を与えません。

初代達人は羽生九段

丁々発止のやり取りのすえ、抜け出したのは羽生九段の方でした。後手玉への寄せを急がず馬金両取りの飛車打ちに期待したのが秀逸な発想転換で、直前に打った銀を見捨てても駒損を回復すれば陣形差が大きいと見た大局観が光ります。

羽生九段はその後も丁寧な攻めで丸山玉の攻略に成功。終局時刻は17時52分(16時30分対局開始)、最後は丸山九段の猛追を振り切った羽生九段が快勝で初代達人の栄誉を手にしました。羽生九段は局後「早指しらしく決断よく指したのがいい結果につながった」と振り返りました。

  • 羽生世代が勢ぞろいした公開対局を制した羽生九段が初代達人の称号を獲得した(写真は第62期王位戦挑戦者決定戦のもの 提供:日本将棋連盟)

    羽生世代が勢ぞろいした公開対局を制した羽生九段が初代達人の称号を獲得した(写真は第62期王位戦挑戦者決定戦のもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)

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