第82期A級順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は、4回戦の豊島将之九段―永瀬拓矢九段戦が10月17日(火)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、相居飛車の力戦を111手で制した豊島九段が星を伸ばして無傷の4連勝としました。

豊島九段の全勝続くか

豊島九段3勝0敗、永瀬九段2勝1敗で迎えた本局は順位戦中盤の山場。豊島九段が敗れた場合、早くも全勝者が消えて挑戦権争いは混戦になります。死闘となった王座戦五番勝負を終えたばかりの永瀬九段としては一週間ぶりの対局で、その作戦にも注目が集まりました。

先後はあらかじめ決められており豊島九段の先手番。横歩取りに進むかと思われた矢先、後手の永瀬九段が角道を止めて変化します。雁木調の持久戦に持ち込む狙いで、これに対し豊島九段は腰掛け銀に構えて早い戦いを求めました。

物を言った玉の安全度の差

昼食休憩が明けて以降、局面は前例の少ない力戦形へ。豊島九段が7筋に歩を垂らしたのに対して永瀬九段が銀を引いて受けたのは一方的に相手の主張を通す利かされで、この手を境に局面は豊島九段のペースに転じました。その後、競り合いは盤上右方に移ります。

3筋にと金を作ったのは後手・永瀬九段の戦果ながら、これに対して豊島九段が同筋に打った角取りの歩打ちが痛打でした。ともに3筋から攻めているものの、3一の地点に控える後手玉のほうが戦場に近いため先手の攻めが早さで優った形です。

攻め切って豊島九段勝利

手番を握った先手の豊島九段はその後も好調な攻めで優位を拡大。後手玉そばに作った竜が寄せの起点となって自然に攻め手が続きます。終局時刻は23時51分、攻防ともに見込みなしと見た永瀬九段が駒を投じて豊島九段の勝ちが決まりました。

これで勝った豊島九段は4勝0敗と無敗で単独首位をキープ。永瀬九段は2勝2敗となっています。次局5回戦で豊島九段は佐藤天彦九段と、永瀬九段は広瀬章人八段と対戦します。

  • 50分ほど続いた感想戦では3筋での攻防を中心に検討が行われた(写真は第6期叡王戦五番勝負第4局のもの 提供:日本将棋連盟)

    50分ほど続いた感想戦では3筋での攻防を中心に検討が行われた(写真は第6期叡王戦五番勝負第4局のもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)

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