■村田翔一さんプロフィール

ロックファーム京都 株式会社 代表取締役
農家の4代目。10年間、消防士として勤めた後に2018年に就農。2019年、実家である村岩農園を引き継ぐ形でロックファーム京都株式会社を設立。九条ねぎ、独自ブランドであるホワイトコーン「京都舞コーン」、イチゴ「あざといちご」などを栽培している。

■鍵悠平さんプロフィール

株式会社アグリメディア 顧問
京都府出身。ITエンジニアとしてキャリアをスタートし、2014年に株式会社アグリ・コミュニティを設立。農業特化HR事業を立ち上げ、「あぐりナビ」を運営。2017年にアグリメディアに事業譲渡。同社取締役COOを経て、現在は顧問に就任。

■横山拓哉プロフィール

株式会社マイナビ 地域活性CSV事業部 事業部長
北海道出身。国内外大手300社以上への採用支援、地域創生事業部門などで企画・サービスの立ち上げを経験。2023年4月より同事業部長就任。「農家をもっと豊かに」をテーマに、全国の農家の声に耳を傾け、奔走中。

農業法人に人なんか来ない?

横山:ロックファーム京都さんは、「京都舞コーン」や「あざといちご 」といった、キャッチーな名前の野菜を作っていますよね。鍵さんとの出会いを教えてください。

鍵:ロックファーム京都さんにはアグリメディアに求人を出してもらっていて、営業担当からの繋がりで僕が京都に挨拶 に行ったんです。

横山:採用のお手伝いをする関係から、親交が深まっていったのですね。私も先日、ロックファーム京都へ伺いました。今スタッフは何人ですか。

村田:グループ全体で40名弱です。30代・40代が中心メンバーですが、20代もいれば70代もいます。アグリメディアにお世話になったのは、ちょうど独立してまだ個人でやっていたときでした。初めての社員採用も、アグリメディアからです。

横山:求人メディアという立場から見て、ロックファーム京都のどんなところが魅力だと思いますか。

鍵:村田さんは、「多くの人に愛される農業の枠を超えた農園をつくる」という事をずっとおっしゃっているんですが、ビジョンがあってそれを実行している農業法人は意外と少ないです。商品のブランディング力もすごく魅力だと思ってます。

横山:ホームページには、舞妓(まいこ)さんが白いコーンを持っている写真が載っていて。なかなか農業法人さんでは見ないですよね。

「」のHP

鍵:そうですよね。あと、働いている社員の方も含めて、かっこいいんですよ。

横山:村田さんのビジョンや人柄に集まっているからこその「かっこよさ」。

鍵:間違いないと思います。

横山:村田さんはご自身では、やる気のある方に来てもらうために、どのように工夫をしているのでしょうか。

村田:最初は「農業法人に、人なんか来(き)いひん」と半信半疑でした。でも、私なりのビジョンをアグリメディアさんにうまく記事にしていただいたところ、40名くらいの応募がきました。
「農業の枠を超えた農園」といったビジョンや「農業をカッコよく」というイメージなら応募が来るだろうという仮説を立て、それが当たったのが良かったんじゃないかな、と。入社後ももちろん大事ですけれど、その前の入り口も大事だと思います。

労働者として雇用するのはもう古い

横山:入社後に社員が活躍することも重要だと思います。好事例はありますか?

鍵:いろんな農業法人を見ていて共通しているのは、キャリアステップがあるかどうか。ただの労働者として雇うのは、もう古いのかなと感じます。その人の能力に応じたキャリア形成が出来る農業法人は、社員も長く活躍されていると思います。

横山:確かに。

村田:私たちも「会社を引っ張っていくメンバー」と「独立してグループを大きくさせるメンバー」という大きく分けて二つのコースのようなものを準備していますね。
横山:村田さんくらいの規模になると、生産部門と営業部門のすれ違いも起こりませんか。

村田:まさに今年の京都舞コーンのシーズンはバチバチやりあってました。私は「もめるだけもめろ」と言ってます。相手に言わないまま、陰で思っているというのが一番良くない。また、それはやはり私が良い方向に導けていない面もあるでしょうし、もめる時こそビジョンを伝える機会を設けるようにしています。

横山:常に「原因が自分にあるんじゃないか」と考え、そして出てきた“負”を、そのまま“負”としない仕組みを作ろうと徹底されているのですね。

鍵:村田さんも厳しく言うときはあるとは思いますが、その裏に愛情があることを皆さんたぶん理解されている。だから問題にはならないのだと思います。

横山:愛情を土台にしたコミュニケーションをするにはどうすれば良いのでしょう。

村田:基本的に社員のことが好きなんだと思います。「一緒に働きたい」と思って入社してくれているわけですから。

鍵:結局、自分一人でできることは限られますし、仲間たちに「ありがとう」という思いは常にあります。ですから、相手のキャリアや人生も良くしたいと思っています。
創業時は相当厳しいことを言っていましたが、みんなが付いてきてくれたのは、そういう思いが伝わっていたからかもしれないですね。

活躍する人の特徴は「ガツガツ」

横山:活躍する人の特徴ってありますか?

鍵:一言で言うなら「ガツガツしてる人」が伸びます。

村田:分かります。

鍵:どこの会社も社長は孤独なんですよ。だから意見をくれる社員だと社長とのコミュニケーションが増えて、本人も成長する。

村田:うちの社員は、私が指示を出す前に「たぶん社長は、あのことを言うだろう」と思って先に自分で面白いと思う企画を準備しておいて「『これ』と『これ』があります。どうしましょう?」と提案してきます。
そうして認めると、「認められた、自分も発信していいんや」って思って、自然と意見を言ってきてくれるようになります。

鍵:会社に対してどれだけ愛情を持っているかもあるでしょうね。愛情がなかったら多分言わないと思います。

村田:今、当社で新卒3年目の社員がやはりガツガツしていて。広報担当なのですが、取材で「これほど会社のビジョンが浸透してるのか」と思うくらい、しっかりと話してくれる。本当に、ロックファーム京都のことが好きでいて、それをアウトプットしてくれている。

農業界に必要なもの

横山:今後、農業法人や働く人に求められるものは何だと思いますか?

村田:やっぱり“熱”を持っている人ですね。こちらが100%の愛と熱でぶつかっていって、それに応えてくれる変態的な人がいいです。
農業界は、普通の業界じゃないんで、普通だとなかなか耐えられない。でも本当に楽しい業界ではある。なので、「農業で何かやってやるぞ」っていう熱を持ってる人が良いと思います。

鍵:村田さんのところみたいに楽しめる職場が、もっと増えていくといいですね。アグリメディアを立ち上げて、想像以上に農業に関心を持っている人が多いという印象でした。潜在的に農業をやりたいと思っている人は、まだいるはず。
村田さんのところみたいに社保が完備されていて、キャリアも積めてなおかつ楽しい。そんな職場が増えれば、人はもっと他業種から流れてくるんじゃないかなって思っております。

横山:村田さんには組織を大きくして採用の窓口も広げてほしいですし、そこを支援する会社として、マイナビ農業とアグリメディアが根を張って一緒に頑張っていきたいと思います。ありがとうございました!
(編集協力:三坂輝プロダクション)