Z世代を中心に絶大な人気を得ているクリエイター、たかだべあさん(CHOCOLATE Inc.)。

「けたくま(けたたましく動くクマ)」や「ラッコズ」など独特のキャラクターを生み出してきた彼が今年6月、ラッコズ初の絵本となる『チャッホ! ごきげんラッコズえほん』(ポプラ社刊)を発売。“史上最もわちゃわちゃしている絵本”として大きな注目を集めている。

“史上最わちゃ”の絵本はどのようにして生み出されたのか、たかだべあさんご本人に制作の舞台裏をうかがった。

自分自身が「愛せる」と感じたキャラクターのみを描いた

ーーまずは『チャッホ!』の出版と重版、おめでとうございます! ラッコズとしては初の絵本でいきなりの大ヒットとなりましたが、今の率直な感想を教えてください。

とても嬉しいです! ラッコズだけでなく、自分にとっても新しい挑戦だったので、発売前は「手にとってもらえるだろうか」という不安もありましたが、いろんな方に届けられたようで安心しました。

  • 『チャッホ! ごきげんラッコズえほん』(1,650円、ポプラ社刊)

ーー「ラッコズ」のキャラクターたちについて、普段はSNSでアニメーション作品を数多く投稿されています。

――今回、児童書での刊行ということで、アニメーション作品とはまた何か違った反響などもあったのではないでしょうか?

普段はなかなか接触できない子どもたちにしっかり届いていると感じました。SNSで「子どもと一緒に読みました」というコメントをもらったり、子どもから感想のお手紙をもらったりしたのも新鮮で嬉しかったです。今後の創作にも活かせる刺激を受けました。

ーー「ラッコズランド」と「ラッコズ」という世界観やキャラクターを作り上げるに至った背景やキッカケなどがあれば教えてください。

ストーリーや世界観に関しては、CHOCOLATE Inc.の社内にいる脚本家や作曲家の方々とチームになって、話し合いを重ねながらつくりあげました。

ーー「ラッコズランド」にはムキムキゴリラや自転車に乗る練習をしているクマなど、さまざまな魅力的なキャラクターたちが登場します。こういったキャラ作りの過程で意識したことなどがあれば教えてください。

『チャッホ!』にはたくさんのキャラクターが登場するのですが、自分自身が「愛せる」と感じたキャラクターのみを描きました。色やサイズ、雰囲気などがかぶらないよう、バランスを調整しました。

あとは、主人公のコラコとほかのキャラクターの掛け合いも意識して描いています。個人的には「イヌサラリーマン」が特に気に入っていますね(笑)。

  • 中央付近でフォーマルな服を着ているのが「イヌサラリーマン」

ーー作中では「チャッホ!」の一言が絶大なパワーを持っていますが、「チャッホ!」とはどんな言葉なのか、改めて教えていただけますか?

分かりやすくいうとコピーにもある「奇跡を呼ぶごあいさつ」になるのですが、実はあいさつ以外にもいろんな意味が込められた言葉です。絵本を読んでいただく際は、「こういう言葉なんだな」とそれぞれで自由に解釈してくれたら嬉しいです。

  • ほとんどの困難は「チャッホ!」の一言で解決に向かう

絵本を作る前に「自分が幼いころに読んでいた絵本を読み直した」

ーー今回、初めて絵本にチャレンジするにあたって、制作段階ではきっと悩んだことも多かったと思います。絵本を作るうえで、どのような研究をされたのでしょうか?

まずは、自分が幼いころに読んでいた絵本を読み直しました。久しぶりに読むと昔の気持ちを思い出すと同時に、「めっちゃ面白いな!」と改めて感動することが多かったです。その衝動を活かして執筆しました。一冊の絵本からというよりは、読んだ絵本のすべてからインスピレーションを得たと思います。

ーーSNSやスタンプなどでは独特なアニメーション作品を数多く作られていますが、アニメーションの世界観を絵本(静止画)にするにあたって意識した点などはありますか?

アニメーションらしさを出すために、コマ撮りのように連続したイラスト表現を採用したことです。多くの絵本では1ページにつき、1つのシーンしか描かれていませんでした。しかし、ラッコズの場合、それではこれまでつくってきたアニメーションらしさが出せず……。うまくリズムが伝えられるような方法を試行錯誤して、「コラコの軌跡を追っていく」という今回の表現にたどり着きました。

  • 「コラコの軌跡」を描くことで、物語の流れがわかるような手法を採用した

ーー逆に、静止画だからこそ楽しかった部分や、ページごとにこだわった部分などがあれば教えてください。

静止画だからこそ、ごちゃごちゃと描きこめるのが楽しかったです。アニメーションのときは目線が散らばらないようスッキリした絵で作っていますが、静止画の場合はじっくり見てもらえるので、アニメーションとは違う描きこみができました。

ーー絵本は色彩豊かで鮮やかな構成になっていますが、そのあたりで意識したこと、難しかったことなどがあれば教えてください。

海のシーンは青、森のシーンは紫といったように、展開ごとにメインの色味を変えています。最初にすべてのページを着彩し、そこから「ここは別の色にしよう」など調整を加えました。

  • 「海のシーンは青、森のシーンは紫」と、展開ごとにメインカラーを変更

また、一部分だけを切り出したときにも全体の色がまとまって見えるよう、1ページごとの配色も意識しています。「チャッホで まんぷく なかよしさん!」のシーンは特にお気に入りです。

  • わちゃわちゃした絵面でも、色が独特の統一感を持っているのでまとまりがよく見える

ーーYouTubeでは『チャッホ!のうた』MVなども公開されていますが、『チャッホ!』をとことん楽しむうえで、何かおすすめの方法などがあれば教えてください。

『チャッホ!のうた』は、絵本を読み聞かせるときにも聴きやすいよう、実は秒数なども調整しているんです。なので、絵本と楽曲を一緒に楽しんでもらえたら嬉しいです。

全世代に受け入れられるような作品づくりを目指して

ーー今回絵本を作られたことで、何か新たな発見や課題などがあれば教えてください。

絵本のために新しくキャラクターやテーマをつくるのではなく、元々あるキャラクターを絵本にすることの難しさを感じました。普通の絵本であれば、展開にあわせたフラットなキャラを登場させられると思うのですが、ラッコズの場合はこれまでのキャラクター性を表しつつ、ラッコである必然性を出さなければならなかったので。SNSであれば中長期的に表現できますが、絵本では一冊の中で伝えきらなければならないのも大変でしたね。今回の挑戦を通して、新たな気づきも多かったので、今後の創作活動の糧にできればと思っています。

ーー今後のクリエイティブで、チャレンジしていきたいことなどがあれば教えてください。

これまではSNSが多かったのですが、今後は形式や手段は問わず、全世代に受け入れられるような作品を作っていきたいです。


たかだべあさんの世界観が凝縮された意欲作『チャッホ!』。「絵本」という子ども向けの媒体ではあるが、大人も楽しめる内容なので、ぜひ手にとってその新境地を垣間見てほしい。