第44回将棋日本シリーズJTプロ公式戦は、2回戦第2局の藤井聡太JT杯覇者-菅井竜也八段戦が9月9日(土)に熊本県上益城郡の「グランメッセ熊本 展示ホール」で行われました。対局の結果、118手の熱戦を制した藤井JT杯覇者がベスト4進出を決めました。

菅井八段の工夫

菅井八段は1回戦で斎藤慎太郎八段を降しての2回戦進出、藤井JT杯覇者はシードで本局からの登場です。一般観覧者による振り駒で先手番を得た菅井八段は、角道を閉じるオーソドックスな四間飛車に構えました。玉の囲いを保留したまま左銀を繰り出したのが駒組みの工夫。玉頭銀の要領で後手の駒組みに制約を与える積極策です。

一方で後手の藤井JT杯覇者は玉を自陣三段目に上がって歩を守ります。天守閣美濃に構えたのは自然な成り行きですが、このあと5筋の歩を突いたのは突っ張った手。銀ばさみの狙いをチラつかせることで、穴熊囲いに移行中の先手に局面打開を強いる意味合いがあります。実戦は菅井八段が5筋の歩をぶつけて小競り合いが始まりました。

藤井JT杯覇者が一手勝ち読み切る

菅井八段の記した封じ手が開かれて対局が再開されます。菅井八段は戦いの中でうまく振り飛車穴熊を完成させますが、その間に藤井JT杯覇者も攻撃態勢を強化。6筋の歩頭に銀を差し出したのが菅井八段の軽視した鋭い踏み込みで、難解ながらその後も手番を握って攻め続けた藤井JT杯覇者がペースをつかみました。

直後の攻防で飛車損を受け入れた先手の菅井八段も後手玉そばにと金の種をまいて勝負勝負と迫ります。絶えず30秒の秒読みが両者を襲うなか、後手の藤井JT杯覇者がここで読み切りの一手を放ちました。自陣に控える飛車を敵陣に向け走らせたのがそれで、一直線の攻め合いでの一手勝ちを読み切っているからこその決め手です。

終局時刻は17時1分(対局開始15時33分、持ち時間各10分)、最後は藤井玉の不詰みを認めた菅井八段が投了を告げて藤井JT杯覇者の勝利が決まりました。勝った藤井JT杯覇者は10月21日(土)に大阪府大阪市の「Asueアリーナ大阪 メインアリーナ」で行われる準決勝第1局で永瀬拓矢王座と顔を合わせます。 

  • 藤井JT杯覇者は「自信の持てない中盤戦だったが最後は攻め合いで一手勝ちになった」と本局を総括(写真は第48期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第2局のもの 提供:日本将棋連盟)

    藤井JT杯覇者は「自信の持てない中盤戦だったが最後は攻め合いで一手勝ちになった」と本局を総括(写真は第48期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第2局のもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)

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