最近、何かと世間の耳目を集める「Z世代」。定義には諸説あるようだが、この世代がいよいよ社会人になり始め、社会や企業に与える影響が強まっているようだ。
つまり、Z世代の考え方や行動を読み解くことが、これからを考えるうえで非常に重要になってくる。
そこで、「はたらいて、笑おう。」をビジョンに掲げるパーソルグループによる、Z世代の就職・転職活動を調査・分析したオンラインセミナーを取材した。
青春の多感な時期にコロナ禍にあったZ世代
スマートフォンやSNSを駆使して情報収集することが当たり前のZ世代。
就職や転職活動にどのような特徴があるのか探る本セミナーは、大学生と企業とのマッチングを支援する『dodaキャンパス』の編集長である岡本信也氏による就活生の特徴分析から始まった。
「2025年卒の大学3年生は、新型コロナの第1波時に高校3年生だった世代です。このため、高校時代に青春の棚卸しができていません。大学2年くらいからキャンパスライフは徐々に復活してきましたが、社会環境の変化が凄まじく、『冷めている』世代です。また24年卒の大学4年生は、第1波時に大学1年生で、新型のコロナ影響を最も受けた世代と言えます」(岡本氏)
確かにコロナ禍が社会に及ぼした影響の大きさは計り知れない。特に、青春の多感な時期に巣ごもりを余儀なくされたZ世代の想いはいかばかりか。ことわざに言う「禍福はあざなえる縄の如し」になることを望みたい。
Z世代の就活生を理解する3つのキーワード
ではコロナ禍の影響を色濃く受けきたZ世代の就活生には、どのような特徴があるのだろうか。岡本氏は次のように分析した。
「一つは『成長』への関心が非常に高いことです。社会環境の大きな変化を身をもって体験したことから、何があってもやっていける力を身につけたいと考えているようです。また、自分の個性を追求する『自分らしさ』を重視し、どう見られるかを大事にする『承認欲求』が高いことも大きな特徴です」(岡本氏)
Z世代にとって、コロナ禍による急激な社会変化が大きな試練になったことは間違いない。しかし、そのつらい体験が自己成長への関心を高めることにつながったのであれば無駄ではなかったと前向きにとらえたい。
そして、就活生の意識が変われば、受け入れる側である企業にも変化への対応が求められる。この点についても岡本氏がこう考察した。
「就活生の『成長』への関心が高まる中で、企業としては『Why』が重要になります。どのような成長の機会を用意しているのか、そして『経営戦略と整合した個人の成長戦略』を一貫したかたちで説明できるかが問われるでしょう」(岡本氏)
新入社員の転職サイト登録者数は2011年の約30倍
Z世代の就活生の特徴に続き、Z世代の社会人における働く価値観の変化や転職の実態がテーマに上った。『doda』副編集長の櫻井貴史氏が、まずは働く価値観の変化について語った。
「入社直後の4月に転職サービスへ登録する新入社員の割合は、約10年で30倍近く増加しました。要因としては、不確実性が高まり続ける社会に不安を抱きながらも将来を見据え、自らが望む『はたらく』を実現する一つの手段として、情報が得られる転職サイトへの登録が増えたと考えられます」(櫻井氏)
転職が当たり前になってきた時代とはいえ、入社直後の転職サイトへの登録が2011年の約30倍とは驚きの数字だ。
しかし、櫻井氏によれば、その要因は将来を見据えた自分らしい働き方を実現するための手段とのこと。ポジティブにとらえられる。
Z世代を含む20代の転職イメージは年々ポジティブに
続いて、Z世代を含む20代前半の転職実態についても、パーソル総合研究所の調査データをもとにこう解説した。
「20代前半の転職に対するイメージは、他の世代に比べ、年々ポジティブに変化しています。7割以上が転職を『市場価値を高める』もの、『積極的にしていくほうがよい』と捉えています。そのうえで、顧客への貢献度が感じられたり、デジタルスキルが高まり、市場価値が高まる職種への人気が高まっています」(櫻井氏)
これからの日本を担っていくZ世代を理解することは、企業にとって不可欠なことと言える。
セミナーから明らかになったのは、就職や転職にあたって自己成長や市場価値を高めることに重点を置いていること。企業側もこれを踏まえて活躍の場を提供することで、Z世代とWIN-WINの関係が築けるのではないだろうか。