女優の吉永小百合が主演を務める、映画『こんにちは、母さん』(9月1日公開)のプロデューサーコメントが6日、公開された。

  • 山田洋次監督

    山田洋次監督

同作は山田洋次監督によるオリジナル作。大会社の人事部長として日々神経をすり減らし、家では妻との離婚問題、大学生になった娘(永野芽郁)との関係に頭を悩ませる神崎昭夫(大泉洋)は、久しぶりに母・福江(吉永)が暮らす東京下町の実家を訪れると、割烹着を着ていたはずの母親が艶やかなファッションに身を包み、イキイキと生活していることに驚く。恋愛までしているようで戸惑う昭夫だったが、お節介がすぎるほどに温かい下町の住民や、これまでとは違う“母”と新たに出会い、次第に見失っていたことに気付かされてゆく。

吉永を主演に迎えた本作を含む『母』3部作を始め、『男はつらいよ』『家族はつらいよ』シリーズなど、時代とともに家族の姿を描き続けてきた山田洋次監督。世代を超えて支持を受ける山田映画の魅力について、本作でプロデューサーを務めた房俊介と阿部雅人がコメントを寄せた。

房プロデューサーは「常に多くの方と接し、そこで出会う人や、直面する出来事に対して深く興味を持ち続けています」と山田監督の素顔を明かす。「“家族”という山田映画におけるストーリーの大黒柱に、山田監督が生活する中で感じ取った“時代”や“地域”を張り巡らせて描くからこそ、懐かしくも新しい映画であり続けることができるのだと思います」とも分析。

また阿部プロデューサーも「最も身近にある社会の単位といえるものでありながら、その関係を安定して維持することがいかに難しいか、“家族”というものを決して安易に美化せず、多面的に捉えているがゆえに、山田監督の作品で描かれる“家族”は支持されているのだと思います」と自身の考えを述べる。「“家族”というものは何気ない小さなきっかけで壊れてしまう脆く、弱いもの。しかし“家族”ほどに強いものはないという希望を示してくれる、だからこそ山田監督の描く“家族”の物語には人々の心を惹きつける魅力があるのだと考えます」と語っている。

監督にとって90本目となる最新作で描かれるのは、変わりゆくこの令和の時代に、いつまでも変わらない親子、そして家族の姿。いつまでも自分らしさを忘れずに誇り高く生きる福江の姿はもちろん、そんな母の姿から自身を見つめ直していく昭夫や、祖母を思いやる孫・舞の姿など、3世代それぞれが展開する物語も印象的となっている。房プロデューサーは本作の魅力を「年齢や立場、性別は関係なく、悩みを抱えた登場人物たちが、自分のことばかり考えている時は、物事がうまくいかない。でも、自分以外の他人を想った時に、パァーッと力が湧いてきて、とてもいい表情になる、素敵な笑顔も生まれる。誰かを想った気持ちが、回り回って、自分の心に返ってくる。そんな映画になったと思っています」と説明する。

阿部プロデューサーも“家族”という存在について 「下町で暮らすこの親子三世代の生活に寄り添う隅田川の流れのように、穏やかな時もあれば、激しい急流のように感じられる瞬間も訪れる」と表現し、 「一つに流れていたはずの“家族”(=川)が、突然訪れる分かれ目によって別々の道を歩むことがある、ただしそれもいつかまた合流するときがあるかもしれない、だからただ、その流れに身を任せてさえいればいい。隅田川の流れになぞらえて、“家族”というものはこういうものでいいんだよ、と教えてくれるような本作を、ぜひ皆さまお一人お一人の視点で楽しんで頂けますと幸いです」と本作への想いを込めた。

(C)2023『こんにちは、母さん』製作委員会