美術が好きな児童にとって、夏休みはじっくり絵を描くことに没頭できる大切な時間でもある。そんな時期に、絵に自信がある児童たちにとって挑戦し甲斐がある恒例のイベントがあるのをご存じだろうか?

今年も募集が始まった「NTT児童画コンクール」は、NTT東日本千葉事業部が主催する千葉県内の小学校を対象とした絵画コンクールだ。74回となる今年はどのような作品が集まるのか、我々にとっても興味は尽きないところだ。

NTT東日本はどのような意図でこのコンクールに関わってきたのか、担当者に話を伺ってきたので紹介しよう。

  • 左から、NTT東日本 千葉事業部 総務部 総務部門 サステナビリティ推進担当 課長 原喜一郎氏、主査 向井菜穂子氏

NTT児童画コンクールとは

――最初に「NTT児童画コンクール」の概要を教えていただけますか?

原「今年で74回目を迎えたNTT児童画コンクールは、『あったらいいな こんなもの』~みんなの未来のくらしにほしいもの~をテーマに毎年3,000点を超える自由でユニークな子どもたちの夢の世界が絵画の中で繰り広げられています。

NTT東日本 千葉事業部は、SDGs、サステナビリティを切り口に地域社会への貢献を目指しています。そういった意味ではこのコンクールも児童の皆さんや、ご両親、絵画をご覧になる方に、子どもたちの目線で彼らが考えていることが伝わればと思って取り組ませていただいています」。

向井「本コンクールは、千葉県内の小学校を対象に行っているものですが、歴史が古く、大規模な児童画コンクールとして地域に根づいています。教育機関や子どもたちとNTT東日本をつなぐ教育支援活動としても、千葉県や千葉県教育委員会、千葉日報社のご後援をいただきながら毎年開催しています」。 

――長い歴史があるということですが、学校や地域の方からの反響などにはどのようなものがあるのでしょう?

原「少子化が進む中でも毎年多くの作品をお寄せいただいており、これも県内教育機関、先生方のお力添えのおかげだと思います。入賞の子どもたちや保護者さまからは、新聞紙面への掲載や表彰式において、直接喜びの声をいただいており、弊社スタッフのモチベーションにもつながっています。

向井「コンクールの審査員を長年務めていただいている、『市原市水と彫刻の丘(現在は市原湖畔美術館)』 元館長である新保育夫氏がいらっしゃいます。新保氏は『今、こどもたちは、大きく二つのことが求められています。常に数値で測る「見える学力」と、他の人を大切にし、自分で考え、自分の方法で表現する「見えない学力」です。この「見えない学力」をNTT児童画コンクールにチャレンジし、ぜひ学んでほしいと考えています』と、このコンクールへの参加者に対してメッセージを出されています。

このメッセージにもあるように、見えない学力の向上を目指して、数多い夏休み中の小学校の課題に、このコンクールを選んでいただく生徒さんがたくさんおられます。昨年も約800近い学校から約3,000点の作品を送っていただけました。今年も同じようにたくさんの絵画が集まってくると思うと楽しみですね」。

――これまでに印象に残った作品はありましたか?

原「テーマの変遷もありますが、文部科学省のGIGAスクール構想等により、子どもたちがインターネットなどを通じいろいろな情報に接する機会が増えました。そして、今話題となっている社会課題やSDGsなど、『社会』や『未来』について考えるような作品が描かれるようになった印象です。

例えば、73回開催のときは、マイクロプラスチックなどの海洋汚染をテーマにした作品や、コロナ禍だったこともあり、パンデミック、ウイルス対策といった部分に影響を受けた作品が数多く出てきました。こうした傾向を見ていると、子どもたちがしっかりと社会を見て育っていることがとてもよく分かりますね」。

向井「弊社の事業活動とも通じるところがあり、学ぶことが多いと感じています。子どもたちの絵に描かれた世界、暮らしやすく、便利で、誰ひとり取り残さない社会をどうやって作るのかを考え、実行してくことが、私たちの使命だと思っています」。

  • 「第73回NTT児童画コンクール」入賞作品 最優秀賞 、左上「千葉県知事賞」、右上「千葉県教育委員会教育長賞」、左下「千葉日報社社長賞」、右下「NTT東日本千葉事業部長賞」 提供:NTT東日本

コロナ禍を乗り越えて

――最後に今後へ向けてどのような抱負をお持ちでしょう。

原「今の小学生の子どもたちは、コロナ禍を経験し、普段の生活だけではなく、学校生活や行事、それまで当たり前であった様々なことが制限されてきました。例えば友達と外で遊ぶこと、一緒に給食を食べること、歌を歌うこと、地域のお祭りへの参加や、祖父母に会いに行くことなど、さまざまな経験ができない期間が長くありました。

特に2020年の春、一斉休校となった際には、毎年夏休みに実施している本コンクールを続けていくかどうか社内で何度も検討し、審査委員長である新保氏とも相談しましたが、「こんな時だからこそ子どもたちに夢や希望を絵画で表現する機会を与えてあげたい」との思いで続けることにしたのです。

外出が制限されている中だからこそ、自由に絵を描いてもらいたい、というのが決断のポイントでした。

71回(2020年)・72回(2021年)の表彰式では、受賞したお子様の小学校の先生方にご協力いただき、各学校と弊社とをオンラインでつなぎ、モニタ越しでの表彰式を開催。児童、家族、先生たちの溢れる笑顔を見ることができ、オンラインではありましたが子どもたちの受賞をみんなで祝うことができ、実施してよかったと感じました。

また73回となる昨年は、ホテルでの授賞式を再開し、久しぶりのリアルイベントとなったことを関係者一同で喜びました。74回となる今年度のコンクールも、受賞された方々はもちろん。参加された皆さまと喜びを分かち合えるようなイベントにしたいと思っています」。

向井「私たちNTT東日本は、『地域の未来を支えるソーシャルイノベーション企業』を掲げており、情報通信事業者としての『つなぐ使命』を遂行し、様々な社会課題を解決することにより、『持続的な成長が可能な地域循環型社会』、子どもたちが夢や希望を感じられる社会づくりをご支援したいと考えています。

子どもたちは無限の可能性を秘めています。この取り組みを通じてその可能性を開花させ、次代を創っていくお手伝いをさせていただくことも私たちの役割です。これまでお寄せいただいた作品に描かれた『みんなの未来の暮らし』を、ひとつでも多く、地域の皆さまとともに実現させたいと思います」。

――ありがとうございました。

  • 第74回NTT児童画コンクール

●第74回NTT児童画コンクール概要
テーマ:『あったらいいな こんなもの』~みんなの未来のくらしにほしいもの~
応募締切:令和5年9月 6日(水)
作品締切:令和5年9月26日(火)
※いずれも学校単位でとなります。
10月2日の審査会にて最優秀賞(千葉県知事賞、千葉県教育委員会教育長賞、千葉日報社長賞、NTT東日本千葉事業賞)4点・優秀賞18点、計22点を選出し、入賞作品は、千葉日報社紙面及びNTT東日本HP、NTT東日本公式YouTubeに掲載予定。
また、入賞作品を題材にした「2024年カレンダー」を作成し、受賞者に配布するとともに千葉県内の小学校に送付予定。