第9期叡王戦(主催:株式会社不二家)は、段位別予選九段戦の谷川浩司十七世名人-脇謙二九段戦が8月2日(水)に関西将棋会館で行われました。対局の結果、65手の短手数で勝利した谷川十七世名人が2回戦に進出。同日午後の阿部隆九段との対局に臨みましたが惜しくも敗れています。

ダイレクト向かい飛車

振り駒が行われた本局、後手となった脇九段はダイレクト向かい飛車に構えます。これを見た先手の谷川十七世名人が両成りとなる角打ちを見送った結果、戦型は角交換型対抗形の持久戦に落ち着きました。玉を囲い合ったのち、脇九段が4筋に飛車を振り直したのを見た谷川十七世名人は2筋の歩を交換してポイントを挙げます。

なんとか主張点を作りたい後手の脇九段はここから驚きの構想を披露します。再び向かい飛車に戻したのがそれで、先手の2筋の歩が切れたのを利用して飛車先突破を目指す狙いが見て取れます。谷川十七世名人がこれを手抜いて3筋の歩突きで応戦したため、実戦はここから激しい駒の取り合いに突入しました。

光った金底の歩

盤上右方での競り合いが一段落したのち、優位に立っていたのは先手の谷川十七世名人でした。飛車こそ自陣に閉じ込められているものの、3筋に作ったと金が後手の美濃囲いを崩す先鋒として輝きます。追い上げたい脇九段は先手陣に竜を作って反撃を目指しますが、谷川十七世名人が3筋に築いた金底の歩が大きな障壁となり効果的な攻めを繰り出せません。

手番を得た谷川十七世名人は満を持して美濃囲い攻略に乗り出します。終局時刻は11時47分(10時対局開始、持ち時間各1時間)、終盤の入り口ながら攻防ともに見込みなしと認めた脇九段が投了。勝って同日午後の2回戦に臨んだ谷川十七世名人ですが、阿部九段と角換わりの熱戦を繰り広げたすえ惜しくも敗れています。

  • 谷川十七世名人は脇九段との対戦成績を11勝5敗とした

    谷川十七世名人は脇九段との対戦成績を11勝5敗とした

水留 啓(将棋情報局)

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