第82期B級2組順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は、2回戦計13局の一斉対局が7月19日(水)に各地の対局場で行われました。このうち、東京・将棋会館で行われた藤井猛九段―杉本昌隆八段戦は103手で藤井九段が勝利。同じく勝利した久保利明九段、鈴木大介九段らとともに2連勝の好スタートを飾りました。

藤井九段の先手中飛車

先手となった藤井九段は序盤早々に中央の歩を突いて中飛車を宣言。藤井システムに代表される四間飛車で有名な藤井九段ですが、時として角道を閉じないこの先手中飛車も採用することが知られています。本局、後手の杉本八段が角道を止めて持久戦模様にシフトしたのを見た藤井九段は高美濃囲いに組んで戦いを待ちます。

一方の杉本八段はここから自陣の舟囲いを独特の形に発展させます。ミレニアム囲いの要領で玉を2一の地点に収めたのは自然な発想ですが、手順中に跳ねた桂が邪魔をして自らの角が働きのない駒になっているのは見逃せません。実戦はこのあと、杉本八段の仕掛けをきっかけに5筋と7筋で駒の取り合いが起こって一気に終盤戦に突入しました。

藤井九段が攻め倒して快勝

夕食休憩が明けて夜の戦いが始まります。盤面中央での激しい応酬の末、藤井九段は金銀桂の3枚を、杉本八段は角銀の2枚を手にして局面は一段落を迎えました。形勢は互角ながらも一足先に飛車をさばいた藤井九段にとって不満のない展開で、実戦もここから手番を握った藤井九段による鋭い攻めが幕を開けることになりました。

豊富な持ち駒を手にした藤井九段は1筋の端攻めから寄せを開始します。素直に応じては不満と見た杉本八段は手抜きで遊び駒の角の活用を急ぎますが、ここでじっと自陣に歩を打ったのが藤井九段用意の好防でした。先手陣深くに成った杉本八段の馬は、この1枚の歩によって働きのない駒になった格好です。

寄せに専念できるようになった藤井九段はなおも攻め続けます。終局時刻は22時58分、最後は5筋に作った竜を起点に緩みない攻めを見せた藤井九段が寄せきって開幕2連勝を飾りました。敗れた杉本八段は0勝2敗となっています。

  • 藤井九段は公式戦3連勝と好調をキープ(未放映のテレビ対局を除く)

    藤井九段は公式戦3連勝と好調をキープ(未放映のテレビ対局を除く)

水留 啓(将棋情報局)

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