第36期竜王戦(主催:読売新聞社)は、決勝トーナメント準々決勝の羽生善治九段-三浦弘行九段戦が7月17日(月・祝)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、角換わりの熱戦を106手で制した羽生九段が永瀬拓矢王座の待つ準決勝に進出しました。

角換わり腰掛け銀の駆け引き

振り駒が行われた本局、先手となった三浦九段は角換わり腰掛け銀の定跡形に誘導します。仕掛けをめぐってこの戦型特有の間合いの計り合いが続いたのち、三浦九段は単騎の桂跳ねで局面を打開。この桂はすぐに後手の歩に捕獲されますが、代償として後手玉のすぐ近くに拠点となる歩を伸ばしたのが主張点です。

先手の攻めが一段落したタイミングで後手の羽生九段も反撃に出ます。歩の突き捨てで先手陣を乱したのが軽い手筋で、戦いは盤面全体に拡大。この直後、「桂は控えて打て」の格言通りに羽生九段が自陣桂を打って反撃を見た局面が本局の中盤戦における分岐点になりました。

羽生九段が抜け出して制勝

実戦で三浦九段はいったん歩を取ってから飛車を回りますが、局後の検討で、先手は単に飛車を6筋に回って逆襲を急ぐのが有力とされました。本譜の順は、先述の桂を跳ばせたことで後手にもチャンスを与える形に。形勢互角のままジリジリとした押し引きが続く中、三浦九段は勝負手を繰り出します。40分を超える長考の末に敵銀の眼前に角を打ったのがそれで、4筋に作った拠点を最大限に生かす手を見ています。

盤面中央で大振り替わりが行われ、戦いは終盤戦に突入します。手番を握った後手の羽生九段が遊び駒の飛車を大転換できたのは好調を思わせますが、実際は羽生九段が「全然自信ない」、三浦九段が「急に景色がよくなった気がしたが勘違いだったか」と振り返るように難解な局面。実戦では三浦九段の直後の桂打ちが緩手となりました。

終局時刻は20時51分、自玉の受けなしを認めた三浦九段が投了。一手の緩手をとがめた羽生九段が快勝でベスト4進出を決めました。羽生九段は次局で挑戦者決定戦進出を懸けて永瀬拓矢王座と対戦します。

  • 羽生九段は3期ぶりとなる七番勝負進出を目指す(写真は第72期ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグのもの 提供:日本将棋連盟)

    羽生九段は3期ぶりとなる七番勝負進出を目指す(写真は第72期ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグのもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)