藤井聡太棋聖に佐々木大地七段が挑戦する第94期ヒューリック杯棋聖戦(主催:産経新聞社、日本将棋連盟)は、第2局が6月23日(金)に兵庫県洲本市の「ホテルニューアワジ」で行われました。対局の結果、111手で勝利した佐々木七段がスコアを1勝1敗のタイに戻しました。

相掛かりの力戦形

藤井棋聖の先勝で迎えた本局は、角換わり腰掛け銀で戦われた第1局とは打って変わって相掛かりの戦型でスタート。先手の佐々木七段が4筋に銀を上がって持久戦を志向したタイミングで、後手の藤井棋聖はこれを許さじと角頭に強気の歩打ちを放って対抗します。序盤早々、盤上は実戦例の少ない力戦形に持ち込まれました。

中盤の難所を前に、藤井棋聖の方が持ち時間を使わされる展開が続きます。ジリジリとした第二次駒組みが一段落したタイミングで4筋に飛車を回ったのは藤井棋聖決断の一手。ここから局面はお互いに我が道を行く攻め合いに突入しました。佐々木七段は9筋に作った馬が、藤井棋聖は先手陣に取り残された飛車をいじめられることが主張です。

藤井棋聖ペースの中盤戦

手番を得た後手の藤井棋聖はリズムよい攻めを展開。先手陣に飛車を成り込んで先に詰めろをかけた局面は好調を思わせましたが、中継放送に備えられた将棋ソフトは先手良しを示します。ここでは佐々木七段の方に銀を打って受ける意表の好手があり、感想戦で藤井棋聖は「銀を打たれたら手がないので困っていました」と打ち明けました。

実戦で佐々木七段は歩を打つ自然な受けを選択しますが、ここから藤井棋聖の猛攻を受けることに。秒読みに追われながら2筋に桂を打ったのは後手玉を縛って下駄を預ける意味ですが、ここで藤井棋聖に勝ち筋が生じていました。局後の検討で、ここでは手厚い銀打ちで先手玉の上部を押さえるのが先決とされました。

佐々木七段が角捨ての大技で逆転

実戦で竜を切って決めに出た藤井棋聖ですが、次の手を見落としていました。佐々木七段の方から盤上中央に角を打って王手をかけたのが攻防兼備の犠打で、この手が入ると途端に攻守が入れ替わっています。終局時刻は19時20分、自玉の必死を認めた藤井棋聖が投了。終盤で逆転に成功した佐々木七段が先手番をキープしてスコアを1勝1敗に戻しました。

勝った佐々木七段は「(勝ちが見えたのは)本当に最後の局面だった」と振り返りました。注目の第3局は7月3日(月)に静岡県沼津市の「沼津御用邸東附属邸第1学問所」で行われます。

  • 佐々木七段は「ひとつ勝って次につなげられたのがよかった」と安堵の表情(提供:日本将棋連盟)

    佐々木七段は「ひとつ勝って次につなげられたのがよかった」と安堵の表情(提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)

この記事へのコメント、ご感想を、ぜひお聞かせください⇒コメント欄