一石三鳥グループは7月11日、新店舗「江戸料理 一石三鳥」(東京都港区西麻布)をオープンする。

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    「江戸料理 一石三鳥」(東京都港区西麻布)

随所に「江戸テイスト」が散りばめられた内装

一石三鳥グループは2020年10月に1店舗目の「厳選焼鳥 一石三鳥」(東京都港区新橋)をオープン以来、ワイン棚に扮した扉の中にある鮨屋、辺鄙な立地にある看板のない焼肉屋など、エンターテインメント要素が満載の飲食店をたった3年で港区中心に6店舗オープンしてきた。

ブライダル業界出身の米田拓史代表取締役によるおもてなし・サプライズ魂を活かした店は評判に。さらにこれまで4件実施したクラウドファンディングではMakuakeの飲食店カテゴリー内で史上最高額となる1億2,700万円以上の応援購入金額が集まったのだとか。

そんな一石三鳥グループが西麻布にオープンする7店舗目は、「400年前の江戸時代にタイムスリップしたら?」というお題から考えた店。江戸時代をテーマにした理由は、長く続いた時代に現代にも伝わる日本らしい文化が生まれたことからだそう。

随所に「江戸テイスト」が散りばめられており、店に入った瞬間から一気に世界観に引き込まれる。

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    広々としたカウンター席

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    個室

個室に備え付けられた靴入れは一見地味だが、中を開けると金色に光っている。これは江戸時代の贅沢禁止令により庶民が着物の裏地を派手にしてオシャレを楽しんだ「裏勝り」の文化をイメージした仕掛けだ。

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    「裏勝り」をイメージした靴入れ

コースターやおしぼり置きなどの細かい部分にも和のテイストがあり、インバウンド客にも感動してもらえそうな「粋」が感じられる。

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    コースターは着物のような生地、おしぼり置きは畳

江戸時代の調理法に現代の技術を組み合わせ

内装だけでなく、料理も江戸時代の調理法を採用している。当時の「旬の食材を新鮮な状態でシンプルな調味料で食べる」スタイルに現代の技術を組み合わせ、より素材の美味しさを引き出しているのだ。

たとえば先付の「アメーラトマト冷やし鉢」は、ジュンサイが乗った葉でフタをした状態で提供される。

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    葉を持って……

この葉を持ち、ジュンサイを中に入れてから食べるという、ワクワク要素が楽しい。

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    葉の上にのったジュンサイを中に入れる!

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    涼しげでさっぱりとした味わい

トマトは薄蜜で炊かれており、酸味と甘みがデザートのよう。そこにねっとりとした食感のアオリイカと、歯ごたえのあるオクラも加わり、つるりと喉を通る涼しげな逸品だ。最初から期待感が高まる。

続いて「鮮魚のお造り」。この日提供されたのは初鰹・真鯛・タイラガイ。分厚く切られており歯応えからも新鮮さを感じる。

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    おすすめの鮮魚をお造りで

添えられているのは煎り酒。江戸時代には醤油は一般的ではなく、梅を日本酒と昆布で似た万能調味料の煎り酒が使われていた。醤油よりもさっぱりとした味わいで、より魚の美味しさが引き立つ。

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    煎り酒は控えめな味わいだが、刺身を引き立て旨味を感じさせてくれる

さらに店内に入った瞬間から気になっていたのが「鮎炉端焼き」。あの串に刺されたスタイルで焼かれた鮎を一度でいいから食べてみたいと考えている人も多いのではないだろうか。

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    憧れスタイルの鮎炉端焼き

塩がガリガリになる状態にまで焼かれた鮎に添えられているのは「蓼酢(たです)」。

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    そう、これが一度でいいから食べてみたかったんです

蓼酢は蓼をすり鉢でペースト状にしたものをきゅうりと酢で和えたもの。蓼は苦みとエグみがあるが、これが不思議と鮎に合うのだ。炉端焼きされた鮎を丸ごと食べると内臓部分の苦みが気になるものだが、独特の苦みのある蓼酢と合わせることで【苦み×苦み=不思議な旨味&さっぱりとした味わい】が生まれる。なぜだ……理屈は全く分からないが苦みのあるものを美味しいと感じたのは初めて。

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    「蓼酢」。苦み×苦みなのになぜかさっぱりとする

感動したのは「雲丹大葉天麩羅」。ごま油の香りがしっかりと感じることができるのが江戸前風だ。

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    雲丹を大葉で巻いて天麩羅にした「雲丹大葉天麩羅」

サクサクっとした大葉の中からクリーミーな雲丹が溶けるように出現する。何もつけずに食べたのだが、その日の雲丹の状態によってあらかじめ醤油を加えてから調理したり、塩を添えたりと変えるのだそう。この細かなこだわりが信頼できる。

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    クリーミーな雲丹が溶けるように出現

さらに、酒好きの筆者が嬉しかったのはお酒へのこだわり。ビールや焼酎、スパークリングワインはもちろん、ワインは80種、日本酒は全47都道府県のものを取り揃え、お酒の知識が豊富な唎酒師が料理に合わせて提供してくれる。

筆者が3杯目を頼もうとすると、スタッフは「先ほど飲まれた2つのお酒はどちらがお好みでしたか?」と飲んだお酒を覚えていた上で聞いてくれた。「他にも客がたくさんいるのに覚えているの?」と聞くと「当然です、プロなので」。そして筆者の好みに合ったお酒の飲み比べを提案してくれた。もちろんこの2つはその次に提供された料理との相性もばっちり。こうしたプロフェッショナルなサービスはなかなか出会えないので感動してしまう。

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    お酒と料理の相性が良いと美味しさの相乗効果が生まれ、より満足できる

「夏の大名コース」では「炭炙り〆鯖棒鮨」などを含む計8品が提供された後、「金目鯛と舞茸の土鍋ご飯」、赤出汁、香物、最後にデザートがつく。

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    「炭炙り〆鯖棒鮨」は炙られた鯖の香ばしさに悶えた

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    「金目鯛と舞茸の土鍋ご飯」は主役級の美味しさ

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    見た目から和を感じるデザートは塩ようかん・梅シャーベット・夕張メロン

「江戸時代の調理法」と聞いて、最初はあまり味がないものを想像していた。しかし、どの料理もシンプルながら旨味を感じることができ、「現代よりも質素」という印象を覆された。内装や提供方法などでエンターテインメント性を重視しているだけではなく、「感動のある美味しさ」にもこだわっている。連れてきてもらったらその人の評価が2割増しになりそうな店だ。

コースは大名コース(1万9,800円)と天下統一コース(2万5,800円)。7月11日のオープン以降は1万円前後のコースやアラカルトも提供予定。