近年、注目を集めるビジネスの一つに「買取ビジネス」があります。街で意識して見てみると、買取業者の店舗がいくつも目に入るでしょう。買取ビジネスは不況に強く、リスクも抑えられることから、参入を考える人が多いビジネスです。
今回は、買取ビジネスの仕組みや強みを解説し、買取業が低リスクといわれる理由をご紹介します。「買取ビジネスに興味がある」という人は、ぜひご覧ください。
■買取ビジネスとは
<買取ビジネスの仕組み>
買取ビジネスとは、「お客様から買い取った品物を、買い取った金額より高く売って利益を出す」という仕組みのビジネスです。商売において最も典型的な形のビジネスですが、お客様に買取の値段に納得してもらうことで買取が成立し、また、買い取った値段よりも高く売れる場所を見つけることで初めて利益が見込めます。
商売では、ほとんどの場合、お店から新品の商品を仕入れますが、買取ビジネスでは、一般の消費者から中古品を調達する必要があります。新品の商品なら、同じ仕入れルートから繰り返し商品を調達できますが、中古品の場合、通常は同じ消費者からずっと中古品を調達することはできません。
広く品物を調達しなければならないことから、中古品は仕入れが安定しづらいという特性を持っています。ただし、中には業者によるオークションで中古品を購入する場合もあるようです。
品物の調達ができたら、その品物が最も高く売れる場所を探します。店舗で販売したり、またはインターネットで海外向けに販売したり、商品のジャンルによって高く売れる場所は大きく変わるのです。
運営コストも考慮しながら、利益が最も大きくなる場所を見つけて販売することが買取ビジネスを成功させるポイントとなります。
<買取業への需要>
買取(リユース)市場は、年々拡大を続けています。中古品市場に関するニュースサイト「リサイクル通信」によると、2021年のリユース市場の規模は2.7兆円であり、2025年には3.5兆円規模になると予測されています。
ちなみに、理美容市場の規模は、2021年では約2兆円です。全国に37万店舗以上もあるといわれる理美容市場と比較してみると、リユース市場の規模の大きさに驚くのではないでしょうか。
買取業の需要が高まっている要因の1つとして、メルカリなどフリマアプリの存在が挙げられます。フリマアプリが世の中に浸透したことで、不要品を売ってお金に換えたり、中古で安く買ったりすることは当たり前、という雰囲気ができたのです。
「中古品を売る、買う」ことが以前と比べてずいぶん身近になりましたが、今後もこの傾向は続くでしょう。それにともない、買取業への需要も継続して増えていくと予想されます。
<近年の傾向>
近年の買取ビジネスは、新型コロナウイルスの影響も受けています。コロナ禍で在宅時間が長くなり、これを機に片付けようとする人が増えたことで、整理ついでに中古品を売ろうという流れが加速しました。また、コロナ禍で収入が減ってしまい、使わないものを現金に換える人も増えました。
さらに、「外に出ないで査定や買取をしてもらいたい」という需要が増え、このあと詳しく解説する「宅配買取」への申し込みが急増したのもこの頃です。現在は、コロナに対する規制は緩和されましたが、宅配買取の便利さを多くの人が知るきっかけとなったのではないでしょうか。
■買取ビジネスの買取方法は主に3つ
買取ビジネスには、大きく分けて、3種類の買取方法があります。いずれか1つに特化しているところもあれば、全ての方法に対応しているところもあります。
<店舗買取>
店舗買取とは、お客様に売りたい中古品を店舗に持ち込んでもらい、その場で査定して買い取る仕組みです。買取ビジネスとしては、最も古くからある形態です。
店舗買取における売り手のメリットは、「物を売ってすぐに現金化できる」という点でしょう。何か欲しいものがあってお金が必要になった時、自宅の不要品を売ったことがある人も多いのではないでしょうか。
また、対面で業者に査定してもらうため、買取金額に納得できなければ、金額を直接交渉できるのも魅力です。
買い取る側としても、店舗の近くに住むお客様が足を運んでくれれば、買い取って販売する品物を確保できます。ただし、店舗買取の場合は地域性が強くなりますので、「お得意様」を作るための努力や工夫は必要です。
また、店を構えれば、家賃や光熱費などのコストもかさみますので、新規出店のリスクやハードルはやや高くなるでしょう。現在の店舗買取は、すでに全国展開しているような大手が主導権を握っているという状況も、あわせて考慮する必要があります。
<出張買取>
出張買取とは、買取業者のスタッフがお客様の自宅まで行き、中古品を査定して買い取る仕組みです。売り手にとっては、売りたい中古品を店舗まで持ち込む手間がないため、気軽に利用できるメリットがあります。
買取業者としても、店舗買取と比べると広く利用者を集められます。しかし、出張できる範囲は限られているため、ある程度近くに拠点を持たなければならず、店舗買取ほどではないものの地域性があります。
そのため、その地域での知名度や評判を上げ、お客様に選んでもらえるような営業努力が欠かせません。
なお、買取業者にもよりますが、鑑定士の出張や査定にかかる費用は無料というところがほとんどです。また、査定額が折り合わない場合は、その場で買取をキャンセルできます。
<宅配買取>
宅配買取とは、売りたい品物を自分で梱包して宅配業者に発送してもらい、届いた中古品を買取業者が査定・買取する方法です。売り手にとっては品物を梱包する手間があるものの、中古品を送るだけで査定・買取が完了するため、3つの中でもハードルの低い買取方法といえるでしょう。
また、地域性がほとんどなく、買取業者にとっては、全国どこからでも利用してもらえるメリットがあります。ただし、その分、全国の同業他社がライバルになりますので、競合より良い条件で取引したり、利便性を向上させたりする企業努力は必要です。
なお、中古品を発送する際の段ボールは、買取業者が「宅配キット」として無料で提供しているケースがほとんどで、その場合、お客様は無料で発送できます。しかし、買取金額が折り合わずに買取をキャンセルする時は、返送分の送料をお客様が負担しなければならないことが多いようです。
■買取ビジネスの強みはどこにある?
買取ビジネスには、他のビジネスにはないさまざまな強みがあります。また、その強みがあるからこそ、低リスクな運営ができるのです。買取ビジネスの主な強みを5つご紹介しましょう。
1.運営コストが低い
買取ビジネスは、運営コストを低く抑えられるため、利益を上げやすいという特徴があります。店舗買取の場合は店舗を構えますが、7坪程度(20平米程度)あればビジネスを始められますし、人もたくさん雇わなくて済むため、店舗にかかる経費や人件費は比較的低くできます。
出張買取の場合、在庫を抱えなくてよいため、在庫管理に余計なコストがかかりません。それに、お客様が査定に訪れることもありませんので、広い拠点は不要です。
宅配買取なら、拠点が一つあれば、全国から中古品を集められます。人材も最小限で済みますので、運営コストは非常にコンパクトでしょう。
買取ビジネスは、どのような買取方法でも運営コストを低くできるので、利益を出しやすいのです。
2.1人でも開業できる
先ほどあったように、買取業は、人件費を抑えられるビジネスです。買取ビジネスを始めるとき、店を大きく構えて人をたくさん雇うやり方でスタートすることももちろんできますが、それでは出費がどんどんかさんでしまいます。
反対に、規模を大きくしなければ、業務を一人でこなすことも充分可能な業務形態です。特に、資金が充分でないと感じる場合は、人件費を徹底して削減し、コンパクトに開業するのがいいでしょう。
3.不況による悪影響を受けない
買取ビジネスは、不況を追い風にできる業種といわれています。不況になると、「有形資産を現金化して、お金として持っておこう」という意識が働くためです。最近では、コロナ禍による経済の落ち込みが、資産の現金化を後押ししました。
不況の時ほど、多くの中古品が買取店に持ち込まれます。買取業は、むしろ不況であるほうが買い取りしやすいという現状もあるほど、不況による悪影響を受けないビジネスなのです。
4.万引き被害に遭いにくい
AI開発スタートアップの「Idein」の試算によると、万引きの被害総額は年間約8,089億円にものぼるそうです。また、万引きで検挙されるのはそのうちの約1割ともいわれ、残りの9割の被害については、泣き寝入りしている現状があります。
買取ビジネスでは、買い取った品物を店頭で販売する場合は万引き対策として設備投資が必要になりますが、店頭販売をしなければ、万引き被害を未然に防げます。
買取に特化した「買取専門店」なら、買い取った中古品は専門業者に販売したり、ECサイトで一般消費者に販売したりするため、在庫を抱えたり店頭に陳列することがなく、万引きの心配はありません。
5.在庫リスクを抑えられる
買い取った品物を店舗内で再販する場合は、商品が売れず、在庫を抱えてしまう恐れがあります。一方、中古品を専門業者などに販売する買取専門店なら、こうした在庫リスクを抑えることができます。
品物が売れなければそれだけ在庫がスペースを侵食してしまいますし、資金の回収も遅くなります。在庫リスクや店舗での販売にかかるコストなどを考慮し、買取専門店で開業するのも一つの選択肢でしょう。
このように、柔軟に業態を選べる点も買取ビジネスの強みです。
■コンパクトな開業が可能な買取ビジネス
買取ビジネスは、不況に強いという特性があり、市場規模は右肩上がりに伸びていくと予想されています。また、運営コストは工夫次第で低くできますし、1人でも開業が可能です。
さまざまな利点や魅力のある買取ビジネス。特に、「コンパクトに開業したい」という人は、買取業での起業を考えてみてはいかがでしょうか。