朝倉海(トライフォース赤坂)が華麗に復活─。 5月6日、東京・有明アリーナ『RIZIN.42』のメインエベントで5連勝中の元谷友貴(フリー)と闘った朝倉は、約1年5カ月のブランクを感じさせぬ動きを披露し3ラウンドKO勝利を収めた。
これにより彼は、7月下旬・首都圏で開催される大会で『RIZINバンタム級王座決定戦』に挑むことが決定、対戦相手はフアン・アーチュレッタ(米国)。元Bellator(ベラトール)同級王者でもある強豪に、朝倉はいかに挑む? そして勝てるのか?
■休養前よりも強くなっていた
「皆さん、お待たせしました! やっとここに帰って来れました!
去年は怪我で試合ができず辛かったんですけど、皆さんに支えてもらい踏ん張ることができました。やっぱり朝倉兄弟のいるRIZIN、最高じゃないですか? 次は、アーチュレッタをぶっ飛ばします!」
復帰戦をKO勝利で飾った直後に朝倉海は、リング上で声を弾ませた。
完勝に安堵の表情。さらに自信もつけたのだろう、眼光のきらめきが見て取れた。朝倉の状態が休養前に戻ったのではなく、さらに強くなっていると感じたファンも多かったのではないか。
対戦相手の元谷は5連勝中と勢いに乗るファイター。復帰戦を勝利で飾れるようにと用意された咬ませ犬などではない。戦前の予想は五分と五分、ブランクがある分、朝倉が不利と見る向きさえあったほどだ。
観衆1万4930人(主催者発表)が見守る中での闘いは、ドラマチックなものとなった。
朝倉が1ラウンドから相手にプレッシャーをかけ、果敢に打撃を繰り出していく。左ハイキック、そしてピンポイントでヒットしていればKOにつながったであろう右跳びヒザ蹴りを繰り出し、まずは主導権を握った。
2ラウンドに入ると元谷に組みつかれグラウンドの展開に持ち込まれた。それでも簡単には相手にポジションを許さず、さらに持ち前の体幹の強さも活かし攻防をスタンドへと戻していく。
その後も打撃を有効に用い、元谷を徐々に追い込む。そして最終の3ラウンド2分 20秒過ぎ、すでにダメージを負わせていたボディに左ヒザ蹴りを突き刺した。元谷がマットに崩れたところでレフェリーが試合をストップ。その瞬間、アリーナの熱狂は最高潮に達した─。
朝倉は、試合後にこうも話している。
「久しぶりに試合ができたことが凄く嬉しかったし、傷めていた拳が治って目いっぱい闘えて楽しかった。今回は拳をまったく傷めていない。めちゃくちゃ嬉しい」
「兄貴(朝倉未来)がセコンドにいてくれると凄く気持ちが安定する。それにエリー(・ケーリッシュ/フランス人コーチ)の存在が大きかった。エリーから打撃のバリエーションをはじめ、さまざまなことを教えてもらい、それが試合で活きました。彼には、これからも教えてもらいたい。それを吸収して自分はもっと強くなる!」
■3ラウンドか? 5ラウンドか?
朝倉がメインエベントで勝利しマイクパフォーマンスを終えた後、一つ前の試合で井上直樹(セラ・ロンゴ・ファイトチーム)を破ったアーチュレッタと榊原信行RIZIN CEOがリングに上がった。そして、7月下旬に朝倉とアーチュレッタが対戦、この試合は『RIZINバンタム級王座決定戦』として行われることが正式発表された。
RIZINバンタム級王座の変遷は、初代が堀口恭司(ATT)、2代目がマネル・ケイプ(アンゴラ)、3代目・朝倉海。4代目には再度、堀口が就いたがフライ級転向に伴い王座を返上している。これにより行われる新王者決定戦。朝倉がベルト奪回、アーチュレッタは2団体における王座獲得を目指すこととなった。
さて、朝倉は世界レベルの強豪アーチュレッタに勝てるのか?
その可能性は十分にあり、タイプの異なる両雄の対峙は興味深い。アーチュレッタは打撃、組み、寝技をトータルに高いレベルでこなすオールラウンダー。対して朝倉は威力抜群の打撃でKOを狙うストライカーだ。
大会後に、アーチュレッタは言った。
「アサクラと闘えることは嬉しい。多くの人から注目される試合になるだろう。彼は爆発力のあるフィニッシャーだと理解している。私はフルラウンドを使っての削り合いに持ち込むつもりだ。その末にアサクラを深海に引きずり込んで酸欠状態にさせる。
できれば3ラウンドではなく、5ラウンドで25分間の闘いにしたい。世界標準のタイトルマッチは5ラウンドがセオリー。ファンもそれを望んでいると思う」
これを受け、朝倉は次のようにコメントした。
「(アーチュレッタは)ビビってるんじゃないですかねぇ(笑)。これまでRIZINは3ラウンドでやってきた。でも榊原さんが『タイトルマッチは5ラウンドで』と決めるのなら、それでもいいです。KOするので(ラウンド数は)関係ない」
KOなら朝倉、判定ならアーチュレッタ。
おそらくは、そんな闘いになるのではないか。
序盤から朝倉は打撃で攻め入る。右フック、左ハイキック、跳びヒザ蹴りを駆使、カウンターでのクリーンヒットを狙う。当たれば一気にフィニッシュに持ち込もう。
一方のアーチュレッタは、この猛攻を総合力で凌ぎ切り後半に力の違いを見せるつもりだ。スタミナには絶対の自信を持つ彼は、組みと寝技の展開に持ち込んで粘り強く試合を進める作戦を立てる。そのためにはファイトタイムが長い方が良いと考え「5ラウンドにしたい」と口にしたのだろう。
これに関して榊原信行CEOは「3ラウンドか5ラウンドか、この問題は以前からあった。組織の中で検討したい」と話すにとどめた。
果たして、どうなるのか?
ラウンド数の設定が朝倉vs.アーチュレッタの闘い模様を大きく変え、勝敗にも影響を及ぼすと私は思う。夏の大一番を楽しみに待ちたい。
文/近藤隆夫
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