桜も満開となり、長い冬もようやく終わりを告げる4月。この春からの新社会人を迎える入社式が各企業で執り行われているが、その中でも"ちょっと変わった"入社式が行われるという電通デジタルの入社式に伺ってみた。

電通デジタルは、その名の通り、電通グループの企業で、デジタルマーケティングの領域において、コンサルティング~開発・実装~運用・実行支援機能を持つ専門会社。コロナ禍の影響で、ここ3年はオンラインでの入社式が行われていたが、今年は4年ぶりとなるリアルでの入社式が開催された。

●入社式にスマートフォンを活用

入社式の会場は社内のホール。オリエンテーションを終えた139名の新入社員が一堂に会する中、ブルーの照明演出とともに主だった業務実績をまとめた映像が上映され、入社式の幕を開ける。ライブ会場のような鮮やかな演出に圧倒される新入社員の前に、同社の代表取締役社長執行役員である瀧本恒氏が姿を現した。

緊張感に包まれる中、瀧本社長のスピーチに耳を傾ける新入社員たち。このスピーチもただ話すというだけではなく、スクリーンを活用したプレゼンテーション風のスピーチで、電通デジタルらしさが垣間見える瞬間だった。

  • 入社式に登壇する瀧本社長

しかし、"ちょっと変わった"入社式はこれにとどまらない。挨拶に続いては、スマートフォンを活用したライブアンケートシステムを使用した、社長と新入社員とのコミュケーショントークが実施された。

  • ライブアンケートシステムによるトークセッション

入社式中にスマートフォンを操作するという風景はかなり新鮮であり、スマートフォンを介在させることで、緊張感を保ちながらも、円滑なコミュニケーションを実現。今の時代を反映しつつ、新しい入社式の形を示すものとなっていた。

  • スマートフォンを操作する新入社員たち

実際に新入社員の方からも「すごくドキドキしていたけど、同期の仲間や引率してくださった先輩のおかげでリラックスできた」「もっと硬い雰囲気だと思っていましたが、最先端の技術を取り入れた式典で、エンタテインメント性が溢れていて面白かった」「会社の気風がよく表れていて、ワクワクする入社式でした」といった声が聞かれた。

●入社証の代わりにNFTアートを贈呈

さらに、注目したいのは、入社証として"NFT贈呈"が行われたところ。一般的には紙で作られる入社証をデジタル化するだけではなく、AIで生成された動物のアートが描かれたNFTが各個人に贈呈された。

今回のNFTアートは、各個人のアイデンティティを盛り込んだ、世界で唯一のデザイン。さらに、描かれた動物を、仕事の経験などを積むことによって、成長させることもできるという。

  • NFTアートの成長例。左が入社当初で右が入社後

同社BIRD部門 クリエイティブプランニング第1事業部の有益伸一氏は、「AIを含めて様々なテクノロジーが出てきて、今のこの瞬間も世の中を変えている。その熱量や変化を入社式の場で体感してほしかった」と企画立案の理由を語る。

  • 電通デジタル BIRD部門 クリエイティブプランニング第1事業部の有益伸一氏

「自分を動物に例えると?」「趣味」「会社に入ってからやってみたいこと」などのアンケートをベースにAIで生成されたNFTアート。描かれたアートを説明することで自己紹介も可能であり、スマートフォンにダウンロードされたNFTの動物アートを見せ合うなど、まだお互いをよく知らない新入社員同士にとって、有効なコミュケーションの手段にもなっていた。

「他の会社ではやらないような最先端の技術を打ち出していくところに会社らしさが出ていて、スピリットを感じました」と話す新入社員たち。これまで、単語自体は知っていても、その実態があまりわかっていなかったという"NFT"を実際に手にすることで、最新技術を体感し、今後の会社での業務に向けての決意を新たにしている様子だった。

  • 実際に贈呈されたNFTアート

デジタルを社名にする企業ならではともいえる入社式での"NFT贈呈"だが、今後の展開について有益氏は次のように語った。

「AIは急速に進化しており、一年後にはまったく新しいアップデートが起こっているはずなので、それにあわせた取り組みを続けていきたい。"人の心を動かし、価値を創造し、世界のあり方を変える。"というのが我々のパーパスであり、この"価値を創造"が今回の入社証だと思っています。来年も新しい取り組みとして、どんな価値が創造できるか。それが我々の命題でもあるので、そこに向けて頑張っていきます」