第8期叡王戦(主催:株式会社不二家)は、本戦トーナメント準決勝の菅井竜也八段―本田奎五段戦が3月6日(月)にシャトーアメーバ(東京都渋谷区)で行われました。対局の結果、千日手指し直し局を111手で制した菅井八段が本棋戦自身2度目となる挑戦者決定戦進出を決めました。
仕掛け前に千日手成立
振り駒が行われた本局は、後手となった菅井八段が三間飛車穴熊に組んで幕を開けました。対して先手の本田五段は居飛車穴熊で対抗。仕掛けをめぐって居飛車側は細かな揺さぶりを続けますが、後手の菅井八段は巧みな応手で局面の膠着状態を保ちます。細かな駆け引きが続いたのち、互いにおよそ1時間を消費したところで千日手が成立しました。
昼食休憩をはさんで始まった指し直し局で、先手番を得た菅井八段は得意の中飛車に構えました。続いて玉の囲いに穴熊を選んだのは菅井八段の趣向。これを見た後手の本田五段は、角道を開ける手を保留したまま自玉を左美濃囲いに組みました。居飛車からの急戦を警戒した菅井八段が角道を止めた四間飛車に振り直して、局面は中盤戦に入ります。
菅井八段のさばき
長い駒組みが続いた結果、盤上は「菅井八段の四間飛車穴熊対本田五段の居飛車銀冠」という構図に進展しています。四枚穴熊の堅陣を完成させた菅井八段は4筋の歩交換から戦いを開始。手順に入手した持ち歩を元手に後手の桂頭を攻めて戦線を拡大しました。大駒交換に持ちこめば自玉の堅さが生きると見た大局観がうまく、早くも菅井八段がペースを握りました。
角交換に成功した菅井八段は、今度は飛車のさばきを図ります。この飛車の押さえ込みを狙う本田五段が盤面中央に角と銀を投入したのに対し、菅井八段はうまい対応を用意していました。いったん9筋のへき地に飛車を退避させておいてから持ち駒の角で後手の右香を取ったのがそれで、これによってへき地に退避させた飛車を敵陣に成りこませる目途が立った形です。
菅井八段が着地決める
優勢を築いた菅井八段は、敵陣に作った二枚飛車を起点に銀冠崩しを開始します。6筋に控えると金を使って後手陣の守備金をはがしにかかったのが「と金の遅早」の格言通りの好手となりました。後手の本田五段としてはわかっていてもこの攻めが防げません。終局時刻は16時18分、最後まで粘る本田五段の反撃を見切って一手勝ちを読み切った菅井八段が後手玉を即詰みに討ち取って危なげない着地を決めました。
勝った菅井八段は本戦トーナメント決勝に進出。次局で挑戦権をかけて永瀬拓矢王座―山崎隆之八段戦の勝者と対戦します。4年ぶりの登場となる叡王戦挑戦者決定戦で結果を出せるか、菅井八段の挑戦に注目が集まります。
水留 啓(将棋情報局)