ルノーの新型「カングー」はガソリンとディーゼルからエンジンが選べる。先代カングーでディーゼルが選べたのは限定車だけだったので、新型×ディーゼルの乗り味は気になるところ。そもそも、カングーには独特の乗り心地があったのだが、それが残っているかどうかも大事なポイントだ。2種類のエンジンを乗り比べてきた。
どんなエンジンを搭載?
1.5Lの直列4気筒ディーゼルターボエンジンは、先代カングーの最終限定車(台数限定で瞬殺だったと聞いている)が積んでいたパワートレインだ。最高出力は116PS/3,750rpm、最大トルクは270Nm/1,750rpmとなっている。
もうひとつの選択肢は、最新世代の1.3L直列4気筒ガソリンターボエンジン。ルノーの新型「ルーテシア」や「メガーヌ」も使っているので実績は十分だ。最高出力は130PS/6,000rpm、最大トルクは240Nm/1,600rpmとなる。
トランスミッションは「EDC」(エフィシェントデュアルクラッチ)という7速2ペダルのツインクラッチ式。「アルカナ」などが積むルノー独自のハイブリッドシステムや電気自動車(EV)バージョン(本国にはある)のカングーを日本に導入する予定は現時点でないという。駆動方式はFFのみ。WLTCモード燃費はガソリンが15.3km/L、ディーゼルが17.3km/Lだ。
快適な乗り心地は残った?
最初に乗ったのは「クレアティフ」グレードのガソリンモデル(395万円)。ルーテシアなどで好印象だった直噴の1.3L直4ターボエンジンは、新型カングーでもやっぱりよかった。1,600回転から240Nmの最大トルクを発生するので、大きなボディを全く気にすることなくスタートからスイスイと車速を伸ばしてくれるからだ。
湿式7速デュアルクラッチの変速マナーはショックがなくスムーズで、エンジンパワーがロスなくタイヤを回転させている感覚がペダルを通して伝わってくる。ワインディングではスポーティーな走りまで楽しめる感じだ。ステアリングレシオを17.1から15.1へとクイックにしたこと、たっぷりのストローク量を変えることなくロールを抑えたリアトーションビームの足回り、フロントメンバーの剛性アップ、新設計のフロントブレーキキャリパー採用による踏力に比例したブレーキの操作感、これらがしっかりと効果を発揮しているのだろう。「パドルシフトがあればいいのに」と思ったのは筆者だけではあるまい。
高速では、制限速度内であればエンジンが1,600~1,700回転という低回転をキープするので、巡航中の車内は静かで車内の会話も聞き取りやすい。窓ガラスの厚みアップ、ダッシュボード内にある3層構造の防音材、エンジンルームとサイドドアに追加した防音材など、こちらもしっかりと効果が出ている。
先代カングーでは考えられなかった機能だが、ACC(アダプティブクルーズコントロール)も使ってみた。車間と車線のセンターをしっかりとキープしてくれるので、日常的にも十分に使える装備だ。
自然の中を走る姿はやっぱりカングーらしくて似合っているし、高速のパーキングエリアでトラックに囲まれて停車している景色も、商用車っぽさがあってなかなかいいものだ。
続いては「インテンス」グレードのディーゼルモデル(419万円)だ。こちらは欧州の乗用車仕様と同じくバンパーがボディ同色に塗られていて、クレアティフとは印象が大きく異なる。
1.5Lターボディーゼルは、さすがにガソリンと比べるとアイドリング状態での騒音が大きめ。走り出してもそれほどトルクフルというわけではなく、ちょっとのんびりした感じだ。車重が90kgほど増えた影響があるのかもしれないが、段差ではゴツンという路面のショックを拾いやすくなり、ガソリンモデルが持っていた爽快感がわずかに削がれている印象だった。
一方で、高速に乗ってしまえば低いエンジン回転数のまま延々と走り続けてくれるし、燃料が軽油なのでランニングコスト的にはお財布にも優しい。週末や長期休暇でロングドライブをする機会の多いユーザーにはディーゼルが向いている。