どのようにしたら、子どもたちに効率よくプログラミングを学ばせることができるのだろうか? そんな悩みに”ゲーム×プログラミング”が効果的である、と関係者は明かした。 オンラインで10月17日に開催された、未来のプログラミング教育を共創する「コエテコEXPO2022」から、当該セッションの模様をお伝えしよう。

  • 本イベントにて紹介された無料ツールの「Roblox Studio」画面

■ゲームが学習に結びつく?

セッションに登壇したのは、エデュケーショナル・デザインでコンテンツディレクターを務める水島滉大氏と、エンジニアを務める今澄亮太氏。同社ではプログラミング指導を行うD-SCHOOLを運営している。ちなみにD-SCHOOLライセンス提携校は、現時点で全国に177教室あり、オンライン受講者はのべ1万人以上としている(海外実績も含む)。

  • D-SCHOOLの事業紹介

D-SCHOOLでは2014年より教材にマインクラフトを使用している。ここで水島氏は、同社が開発したmicratch(マイクラッチ)と呼ばれるブラウザ上でプログラムを組めるツールを使って用意したプログラムを実行した。それはマインクラフトのなかで巨大迷路が自動生成されるものだった。

  • Scratch(スクラッチ)のようなビジュアルプログラミングのmicratch

「このmicratchが利用者さんに好評なんです。子どもからすれば『マインクラフトで遊べる』、親御さんにとっては『マインクラフトが学習にも結びつく』ということで気に入ってもらえています」(水島氏)。

  • エデュケーショナル・デザイン コンテンツディレクター 水島 滉大氏

また教室では昨年(2021年)からRoblox(ロブロックス)も使用している。日本ではあまり聞きなじみのないゲーム作成システムだが、今澄氏によれば「米国の16歳未満の子どもの半数以上がプレイするなど、海外で大流行している」とのこと。ユーザーがゲームを作成できるだけでなく、ほかのプレイヤーと共有できるのも特徴。同氏はRoblox Studioと呼ばれる無料のツールを使い、実際に3Dゲームを作成していく様子をデモを交えて紹介した。

  • Roblox Studio。ゲーム作成中にもアバターが歩く、ジャンプするといった動作が行える

Roblox StudioではLua(ルアー)と呼ばれるテキストプログラミングを使用する。そこでD-SCHOOLでは、micratchでビジュアルプログラミングに慣れた中級者に向けたワンランク上の教室でRoblox Studioを使った授業を展開している。

  • Roblox Studioはテキストプログラミング

  • エデュケーショナル・デザイン エンジニア 今澄 亮太氏

■”ゲーム×プログラミング”の良いところ

水島氏がアピールする”ゲーム×プログラミング”の良いところは、子どもたちが夢中で取り組んでくれるところだという。「授業が始まる15分くらい前に教室に来て、自分の作業を開始し、授業が終わっても居残ってプログラミングに挑戦する、という子どもが少なくないんです」と話す。

これに今澄氏も笑顔でうなずき「あとは『こういうゲームを作ってみたい』というアイデアも自発的に生まれる。題材がゲームであるメリットですね」と応じる。最近はYouTuberが作っている動画を見て「これと同じゲームを作りたい」と相談する子どもも増えたという。このほかプログラミングを教えるときに気を付けていることについては「たとえ時間がかかっても良いので、生徒のアイデア、チャレンジ意欲を大切にしています」(今澄氏)。

このあと水島氏、今澄氏は寄せられた質問に回答した。

――Robloxは幼い子どもでも使用できる?

今澄氏「テキストプログラミングになりますので、やはり最初はmicratchなどのビジュアルプログラミングで基礎を固めたほうが良いと思います。逆を言えば小学生3~4年生でも、ビジュアルプログラミングの知識がある子どもはRobloxを使い始められます」

――ゲームばかりしてしまい、プログラミングしない生徒が出てこないか?

水島氏「マイクラで遊んでしまう生徒は出てきます。ただ、ちゃんとした目的がある場合、作りたいゲームがはっきりしている場合は、ある程度、ゲームで遊んでもらう。そこで得た経験がプログラミングに活きることがあるからです。だから、時間を区切って『この時間からプログラミングやろうか』のような感じで、軌道修正するようにしています」