第53期新人王戦(主催:しんぶん赤旗)の決勝三番勝負第1局、黒田尭之五段―服部慎一郎五段戦が10月3日(月)に関西将棋会館で行われました。結果は106手で黒田五段が勝利し、初の新人王まであと1勝としました。
まず改めて両者の今期新人王戦を振り返ってみると、黒田五段は井田明宏四段、宮田大暉三段、西山朋佳白玲・女王、阿部光瑠七段を破っての決勝進出です。服部五段は横山友紀四段、古賀悠聖四段、佐々木大地七段、齊藤優希三段を破って決勝へ勝ち上がりました。
本局は服部五段の先手で横歩取りに。序盤では△6二玉・△8五飛の組み合わせが珍しく、早くも未知の局面へ進みました。黒田五段の狙いは△2五飛の転回から△2二飛と向かい飛車の形にすることでした。対して服部五段も飛車を8筋に転回し、相振り飛車のような形となります。
長い中盤が続きますが、4筋で桂交換が行われてからは局面が本格的に動き出します。後手は盤上の銀で先手の飛車を押さえ込もうとするのに対し、先手は手にした桂でその銀を狙いつつ、後手陣への攻めの足掛かりにしました。
服部五段は打った桂を活用して飛車の成り込みを狙いましたが、黒田五段は歩のタタキ一発で先手の飛車の位置を変えて△6六桂の王手を放ちました。服部五段はこれで厳しくなったと見ていたようですが、実戦的には難しいようです。
91手目の▲4三銀不成は3四の金取りで、かつ後手玉の逃げ道を塞いだ一石二鳥の手に見えます。ですがここで△8四歩と飛車取りに打ったのが好手。▲同飛に△7二玉と、先ほどの銀から早逃げした形が飛車の成り込みを防いでもいます。対して▲3四銀成と金を取りたいのですが、△8三歩と受けられると先手の攻めが難しくなります。後手は6六桂のくさびを入れているのが大きく、ここで先手の攻めを受け止められれば有望な形勢です。
実戦は△7二玉に▲8三歩と打ちましたが、△7三玉と力強い顔面受けに出た黒田五段が攻めを切らせて勝利しました。第2局は10月24日(月)に関西将棋会館で行われます。勢いに乗った黒田五段が連勝で初優勝を決めるか、服部五段がタイに持ち込むか、注目です。
相崎修司(将棋情報局)