女性誌にも、女性向けウェブメディアにも、動画サイトにもダイエット情報はあふれています。それだけ需要があることを意味するのと同時に、多くの女性がダイエットに失敗しているということの表れでしょう。では、なぜ多くの人がダイエットに失敗するのか?

  • ただ運動しても痩せない理由がある。女性のダイエットは、生理周期がカギを握る /医学博士・高尾美穂

そこでお話を聞いたのは、ダイエットに関する書籍も出版している医学博士の高尾美穂先生。ダイエットを成功に導くには、「女性だからこそ、生理周期に着目することが大切」だと先生はアドバイスを送ります。

■失敗要因の多くは、「無理な目標」にある

女性がダイエットに失敗する場合、ありがちな原因として「無理な目標を立てている」ということが挙げられます。要するに「理想が高過ぎる」のです。

アパレルショップに並ぶ腕しか入らないような細いジーンズを見て、「これをはけないと太っていることになる…」と嘆く女性もいるかもしれません。そして、そもそも必要もない無理なダイエットをしようとした結果、自分の勝手な理想に届かずに「ダイエットに失敗した」と思っている人も多いのです。

ですから、まずは目標設定が正しいかどうかを確かめてほしいと思います。その目標の基準にするのは、いわゆるBMI(Body Mass Index)です。BMIは、体重と身長から算出される肥満度を表す体格指数で、「体重(kg)÷身長(m)の2乗」で算出されます。

日本肥満学会の判定基準では、BMI「18.5〜25未満」が「普通体重」、「25〜30未満」が「肥満1度」、そして「22」が「適正体重」とされています。これを身長160cmの人にあてはめると、普通体重の人と肥満1度の人の境界であるBMI25は64kgとなり、適正体重は56.32kgとなります。身長160cmで63kgの人ならBMIが24.61となり、適正体重ではないものの普通体重なのです。

たしかに、BMIが24くらいの人の見た目はちょっとぽっちゃりという印象を受けます。それでも、10台のBMIを目指すような過度なダイエットをすることよりよほど健康的ですし、この判定基準を知れば、「まずは普通体重の範囲で、適正体重であるBMI22を目指そう」といった、無理をしない目標を立てられます。

無理をしない目標なのですから、結果的にダイエットの成功率も高まっていくというわけです。

■スクワットで筋肉量を増やして代謝を上げる

そして、体重を落とすためには、なにより「筋肉量を増やす」ことが肝要です。筋肉量を増やすことで基礎代謝を上げ、気がついたら脂肪量が減っている—。これこそがいちばん理にかなったダイエット法だとわたしは考えます。

そのための具体的方法としては、スクワットをおすすめします。ランニングなどの有酸素運動は、その場で脂肪を燃やすことはできますが、筋肉量はそこまで増えません。筋肉量を増やすには、やはり筋トレの要素が欠かせないのです。

そういうと、「筋肉質になりたくない」なんていう女性もいますが、心配する必要はありません。女性の場合、男性と比べると体のつくりとしてそう簡単に筋肉質にはなりません。よほどハードなトレーニングを続けない限り、ムキムキになろうとしてもなれないのが女性なのです。

筋トレのなかでもスクワットをおすすめするのは、太ももとお尻という体のなかでも大きな筋肉を使うからです。また、スクワットの姿勢を維持するには、お腹と背中の筋肉も必ず使います。そのため、スクワットをすることで筋肉量を効率的に増やすことができます。

ポイントは、わざわざスクワットの時間を設定するより、日常の空き時間で行うことです。なぜなら、習慣化しやすいからです。

わたしの場合は、「1セット=25回」と決めて、エレベーターに乗っているあいだなど「1日の空き時間のあいだに何セットできるかな」と思いながら1日を過ごしています。帰宅するまでに1セットもできなかったという日は、帰宅後にシャワーを浴びながらスクワットをしていますよ(笑)。

■生理周期によって体重と運動効果は変化する

また、女性の場合は自分の生理周期に着目してほしいとも思います。なぜなら、生理周期によって体重が増減したり運動の効果にちがいがあったりすることがわかっているからです。

日本体育大学が複数の女性アスリートを対象に行なった研究によると、生理周期によって最大で1.9kgの体重の増減があったことがわかりました。調査対象は自分の体を徹底的に管理しているアスリートであり、この変化は筋肉量や脂肪量によるものではありません。じつは、女性ホルモンの影響による水分量の変化によるものだったのです。

つまり、女性にとっては体重が2kgくらい増えてもがっかりする必要はないといえるということです。たしかに女性からすると体重が2kg増えるなんてことは一大事だと思うかもしれませんが、女性の体にはそういうこともあり得ると知っていたなら、2kg増えたという事実にがっかりし過ぎることもなくなるでしょう。

それから、先にも少し触れたとおり、運動の効果も生理周期の影響を受けます。具体的には、生理が終わるくらいから排卵がはじまるまでのあいだには運動による体の変化を感じやすく、また、体重が減りやすい時期といえます。残りの期間は、逆に運動の効果が低下して体重は減りにくい時期といえます。

ですから、運動の頻度や強度の他、心構えとしても生理周期によってメリハリをつけることが大切です。生理が終わるくらいから排卵までの1週間ほどのあいだには、しっかりと体を動かす時間をつくりましょう。一方、残りの期間は「維持」を目標として、「体重が増えたとしても仕方ない」「もし体重が落ちたらラッキー」くらいに考えてください。

このように認識しておけば、本来は体重が減りづらい時期に一生懸命に運動をしたのにまったく結果が出ないとがっかりしてしまい、ダイエットをあきらめてしまう方も減るでしょう。

とくに女性は、体重が落ちやすい時期には頑張って、そうでないときには維持を意識して、それらを繰り返しながら目標に向かってゆるやかに体重を落としていくことを心がけてほしいと思います。

構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 取材・文/清家茂樹 写真/玉井美世子