各地で梅雨入りが発表される中、季節の変わり目に不調を感じる人も多いのではないでしょうか?さまざまな症状がある中でも最も多いと言われているのが頭痛の症状。そこで、今回は天気痛ドクターの佐藤純先生に、季節の変わり目に起こる頭痛について教えていただきました。
天気の変化でなりやすい頭痛(気象病)の予防策と対処法
――なぜ天気の変化で頭痛(気象病)などが起きるのでしょうか。
佐藤先生:気象病は、天気の変化や季節の違いにより、気圧や温度や湿度が変わってくることにより起こるさまざまな症状で、1番影響を受けるのは頭痛だと言われています。頭痛には、大きく緊張型頭痛と片頭痛の2種類が挙げられています。緊張型頭痛は、筋肉が硬くなり頭痛に繋がるものですので、特に首から後ろの後頭部の筋肉が硬くなり、動きが悪くなることで、血行不良から頭痛が起こってしまうのです。その原因として1番大きいのは温度で、特に寒くなってくると筋肉が硬くなってしまう。また、自律神経の変化が伴うケースもあるので、緊張感が高まったり、夏の時季に冷房の風にあたったりすると、交感神経が興奮し、筋肉が硬くなって痛みが出てくるパターンがあります。
――温度以外にも原因になるものはあるのでしょうか。
佐藤先生:より影響を与えているのは気圧の変化です。天気が崩れてくると気圧が下がるのですが、低気圧だから調子が悪くなるのではなく、梅雨の季節、春先、秋口など気圧が上がったり下がったりすることで頭痛を引き起こします。気圧の変化が、耳の奥にある内耳を興奮させることにより、片頭痛のメカニズムが起こります。三叉神経が興奮すると、CGRPという物質が出て、脳の血管を広げたりすることがわかっているんです。脳の血管が広がると、また三叉神経を刺激してしまい、マッチポンプのような現象から頭痛が起こることを片頭痛と言います。三叉神経を刺激する要素としても気温、湿度があるわけです。顔などに三叉神経が分布していますので、冷たい風や熱い風にあたる、目がチカチカするようなものを見続けると片頭痛が起こります。気圧の変化も同じように三叉神経を興奮させてしまう。それは三叉神経に直接ではなく、内耳からの情報が三叉神経に行ってしまうメカニズムだと思っています。
――頭痛になりやすい人の傾向はありますか。
佐藤先生:緊張型頭痛の場合も片頭痛の場合もなりやすい特徴はあります。共通しているのは、首まわりの血行が悪くなったり、筋肉が硬くなっている人。デスクワークばかりしていて前屈みになっている、運動不足、肩甲骨が回っていないと頭痛が出やすく、天気の影響を受けやすくなってしまいます。また、男性よりも自律神経が乱れやすい女性が頭痛になりやすいと言われています。自律神経が乱れやすいことから外の変化にうまく対応できなくなってくることや、筋肉量が少ないことも理由の一つでしょう。もっと具体的に言うと、内耳の働きが敏感な人も該当します。例えば、目眩が出やすい人や車に酔いやすい人、日頃から耳の不調がある人は一般的に気象病になりやすいでしょう。
――頭痛にならないための日々の予防策を教えてください。
佐藤先生:首の後ろの部分の血行が悪くなってくると、血の巡りやリンパの流れが悪くなって内耳がむくみ、気圧を非常に敏感に感じてしまうようになってしまいます。それから温度や湿度、気圧もそうですが自律神経が最終的にどう反応するかなので、自律神経をある程度鍛えておく必要があります。自律神経の整え方は、まずは日頃からの軽い運動を続けていくこと。運動すると交感神経がうまく興奮し、運動が終わった後にリラックスモードがきますよね。そしてまた運動をすれば、ゆっくりと睡眠を取ることができます。運動ひとつでメリハリのある生活ができるようになるので、軽い運動は必須かなと思います。ただ、特に片頭痛がある人は、運動すると頭が痛くなることから運動嫌いの方がどうしても増えてきます。そういう人は、ゆっくりぬるめのお風呂に浸かることをおすすめします。入浴で代謝を上げて汗をかけるような体にしておけば、湿度の変化に負けない体になり、汗が出れば内耳のむくみもとれます。さらに、筋肉の血行も良くなって緊張型頭痛にも効果的な方法になります。
――頭痛になってしまった場合に和らげる方法はありますか。
佐藤先生:もちろん痛み止めを飲むことは重要だと思いますが、飲みすぎてしまうとかえって頭痛がひどくなってしまう負の連鎖があるので、頭痛の痛みが出る前に予防していくことが原則です。本当に痛くなったら、頭を抱えて横にならなきゃいけない人は結構いらっしゃるので、そうなってしまうと、痛み止めを飲むことが第一選択だと思うんです。ただ、繰り返し起きないようにするには、耳の周りのツボを押すとか、くるくると耳のマッサージをするとか、天気痛耳栓のようなものをしておけば少し頭痛が減ってくることもあります。耳周りを少しケアするだけでも頭痛が取れましたという患者さんも多くいらっしゃるので、即効性はあると思いますね。
社会人になると、パソコンに向かう前のめりな姿勢を取り続けたり、運動の機会が減ってしまいがち。頭痛になりやすい人は、誰にでもできる予防策や対処法を知っているだけでも気持ちが楽になるのではないでしょうか。辛い頭痛を少しでも減らせるように予防をしていきましょう。
取材協力:佐藤純(さとう じゅん)先生
天気痛ドクター・医学博士
日本慢性疼痛学会認定専門医。中部大学生命健康科学研究科教授、愛知医科大学客員教授。30年以上にわたり、気象と痛み、自律神経との関係を研究。
2005年より愛知医科大学病院・痛みセンターで日本初の「天気痛・気象病外来」を開設。天気痛研究・診療の第一人者として「あさイチ」(NHK)、「世界一受けたい授業」(日本テレビ)などメディア出演も多数。2020年には株式会社ウェザーニューズと共同開発した「天気痛予報」をリリースし、注目を集めている。
主な著書に『1万人を治療した天気痛ドクターが教える「天気が悪いと調子が悪い」を自分で治す本』(アスコム)、『「雨の日、なんだか体調悪い」がスーッと消える「雨ダルさん」の本』(文響社)などがある。