マツダの名車「コスモスポーツ」のレストアに、「日清紡精機広島株式会社」なる企業が関わっているという。社名からは想像がつかなかったのだが、コスモのブレーキ周りを性能重視で修復したいというオーナーさんからは、かなり頼りにされている会社らしい。マツダ車と同社の関係とは。話を聞いてきた。
オーナーたちの熱い要望を受けて
旧車の祭典「Nostalgic 2days」(ノスタルジックツーデイズ、パシフィコ横浜にて2月に開催)の一角に、美しいマツダの名車コスモスポーツが展示してあった。ブース名は「日清紡精機広島株式会社」。耳慣れない会社だ。
同社の前身である「辰栄工業株式会社」は1954年に東洋工業(現マツダ)向け自動車部品の製造を開始。1957年にはエンジン周りの部品やブレーキマスターシリンダー加工の発注を受けて生産を開始し、1966年にはマスターシリンダーなどの組み立てを受注していたそうだ。そんな経緯から、マツダが5年前に所有しているコスモスポーツをレストアした際に声がかかり、補修の手伝いを行ったのだという。
この話はオーナーズクラブにもすぐに伝わり、メンバーたちの間では、「日清紡精機広島に頼めば、自分のコスモスポーツも修復できるのでは?」との機運が高まった。同社では、オリジナルではないものの機能が担保されており、安全に制動できるパーツを提供することを決めた。
展示車にはブレーキマスターシリンダー、クラッチマスターシリンダー(マニュアル車でクラッチペダルの入力を油圧に変換する装置)、クラッチレリーズシリンダー(マスターシリンダーで発生した油圧をクラッチを駆動させる力に変換する装置)を供給した。当時のパーツをそのまま型に起こせば費用がかさむが、例えばブレーキのマスターシリンダーであれば直径を同じにして、レイアウトや機能を成り立たせながらも材料を最新のものとすることでコストを抑えた。それでも、通常のものと同程度の6万円程度に価格を抑えるためには、100セットくらいはまとめて製作する必要があるとのこと。
クラブはしっかりした組織で運営されているので、支払いはまとめて現金払い。上記3つのパーツに加え、ハイドロマスター(倍力装置)やゴム部品なども要請を受けて製作することになったという。各パーツは良好な性能を発揮しており、取り付けたオーナーさんからは大変な好評を博しているのだとか。
ブレーキ周りを性能重視で再生できれば、旧車オーナーの皆さんも安心して愛車を走らせられるに違いない。コスモスポーツ以外の車種でも、ぜひパーツ供給を実施してほしいところだが、日清紡精機広島の考えは。担当者はこう語る。
「マツダさんとは古くからお付き合いがありますが、他社さんとも少しずつ検討していきたいと思っています。迷惑をかけると本末転倒なので、そうならないよう、品質には十分に注意していきたいですね。ブレーキは特に気を使う部品なのですが、機会があればユーザーさん、メーカーさんとも話をしていきたいと思います」