ホンダが新型「ステップワゴン」(STEP WGN)を発表したが、実車を後ろから見て驚いたのは「わくわくゲート」が付いていないことだ。縦に線が入っていて、横にも縦にも開くリアテールゲートはステップワゴンでおなじみの装備だったが、なぜなくなったのだろうか。
ユーザーには好評だったものの…
ステップワゴンはホンダが1996年5月に発売したミニバン。新型は6世代目で、2022年春の発売を予定している。
新型ステップワゴンのグランドコンセプトは「#素敵な暮らし」。シンプルでクリーンなデザインの「ステップワゴン エアー」(AIR)とスタイリッシュな「ステップワゴン スパーダ」(SPADA)の2タイプを用意し、異なる世界観を表現している。
ステップワゴンといえば、わくわくゲートがひとつの目印になっていた。ミニバンは世の中にたくさんあるが、後から見て縦に1本の線が入っていれば、それがステップワゴンだということはすぐに認識できた。そんな特徴的な機構がなくなった背景とは。新型ステップワゴンの開発責任者を務めたホンダの蟻坂篤史さんに話を聞いた。
――新型ステップワゴンに「わくわくゲート」を付けなかったのはなぜですか?
蟻坂さん:まず、ステップワゴンのユーザーさんからは、わくわくゲートは使い勝手がいいということで好評でした。ただ、デザインの面では、リアから見ると左右非対称であったり、そもそも縦に線が入っていることを好まないお客さまもいらっしゃったので、「リジェクトリーズン」(ステップワゴンを買わない理由)となっていたことも事実です。
――わくわくゲートは使ってみると便利だけど、それがあるだけで購入検討リストに入れてくれないお客さんもいるというわけですね。
蟻坂さん:どうやったら受け入れていただけるか、どんな風に線が入っていればいいのか、そのあたりについてはスケッチを書いたり、調査したりもしたんですが、結局のところ、「縦線が入っていることがそもそもダメ」という声がありました。
新型にはオプション装備で「わくわくゲート」を用意することも検討したんですが、そうすると、かなり高価なオプションになってしまいます。やはり、全車に標準装備するという前提でなければ、商売としては成立しないという側面があります。あと、わくわくゲートはかなり重くて、縦に開けるときに持ち上げるのも、結構大変でした。新型にわくわくゲートは付いていないのですが、(電動で開閉できる)パワーテールゲートにしたので開け閉めはしやすくなっていると思います。
一般的に、テールゲートを開けるのは本当に大きなものを積むときです。普段の買い物であれば、スライドドアを開けて後席に荷物を積むからです。それで、事足りるのではないかと考えました。これでお客さまの声を聞いて、今後のこと(ステップワゴンのリアテールゲートをどうするか)を考えようという感じです。
リアだけでなく、全体的に「線」ではなく「面」で見せるデザインとなり、すっきりとした印象の新型ステップワゴン。ちなみに、蟻坂さんたち開発陣の中では、「リアビューが最初に決まった」というくらい新型のリアデザインがしっくりきたそうだ。