米労働省が2021年12月3日に発表した11月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数21.0万人増、(2)失業率4.2%、(3)平均時給31.03ドル(前月比+0.3%、前年比+4.8%)という内容であった。
(1)11月の米非農業部門雇用者数は前月比21.0万人増と市場予想(55.0万人増)を下回った。前月の修正値である54.6万人増から大幅に減速し、増加幅は今年(2021年)最低となった。雇用情勢を基調的に見る上で重視される3カ月平均の増加幅も37.8万人と、前月の46.9万人から減速した。
(2)11月の米失業率は前月から0.4ポイント改善して4.2%となり、2020年2月以来の低水準を記録。市場予想は4.5%だった。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率は61.8%で前月から0.2ポイント上昇。なお、フルタイムの職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)は7.8%と、前月から0.5ポイント改善。失業率と同じく2020年2月以来の水準に低下した。
11月の米平均時給は31.03ドルと、前月0.3%増加して過去最高を更新。前年比の伸び率は前月と同じ+4.8%であったが、市場予想(+5.0%)には届かなかった。人手不足の状態が続く中、企業による人員確保に向けた賃金引き上げの動きが続いている模様。
米11月雇用統計は、非農業部門雇用者数が思ったほど増えなかった一方、失業率は大幅に改善する「マチマチ」の結果となり、解釈が難しい内容だった。事業所(雇用主側)を調査対象とする雇用者数と時間当たり賃金(平均時給)が予想を下回った一方、家計(被雇用者側)が対象の失業率と労働参加率は予想以上に良好だった。どちらかの調査に、季節調整などで技術的な問題があった可能性も否定できないだろう。
なお、家計調査に基づく11月の雇用者数は114万人増で、事業所調査の非農業部門雇用者数21.0万人増とは大きな差異があった。こうした中、市場も混乱気味の反応を見せ、ドルは乱高下しつつも最終的に下落。米国株は買いが先行したものの反落。米長期金利も一時上昇したものの、低下してこの日の取引を終えた。新型コロナ変異株「オミクロン」を巡る懸念なども相まって、市場としては雇用統計に対して素直に反応しにくかったようだ。
とはいえ、今回の雇用統計と「オミクロン」への懸念は、米連邦準備制度理事会(FRB)がテーパリング(量的緩和の段階的な縮小)のペース加速を見送る理由にはならない公算が大きい。12月14-15日の連邦公開市場委員会(FOMC)では予定通りにテーパリング加速が決まる公算が大きく、混乱気味の市場の動きも次第に収束するだろう。