TSMCが3nmプロセスでの量産体制が2022年中に整い次第、Intelのグラフィックチップならびに3種類のサーバプロセッサの製造を開始する可能性があると、TSMCのサプライチェーン関係者の話として、台湾の經濟日報が8月10日付けで報じている。それによると、これら4種類の製品は、Intelのコア製品に位置づけられるものだという。

TSMCの計画では、3nmプロセスの商業生産は台南のFab 18bにて2022年第2四半期より開始、7月より量産体制に入るという(Fab 18bは現在、装置搬入が進められており、2021年後半からのリスク生産を開始する予定)。同プロセスは、これまで最先端プロセスを活用したSoCを最初に製造してきたAppleを差し置いてIntelが最初の顧客になる可能性があるともされているが、IntelがAMDやAppleに対応するために、生産委託計画を当初の計画よりも1年前倒したことによるためだという。

情報筋によると、IntelはSamsung Electronicsでも最先端プロセスによる製造委託の可能性を探っていたが、TSMCの技術優位性を確認したことから、TSMCへの集中発注へと切り替えたという。その結果、TSMCのこれまでの最大顧客であったAppleを上回る額をIntelが発注することとなり、新たな最大顧客になる可能性がでてきたという。すでにIntelチップのTSMCでの試作・検討がFab 12にあるR&Dラインで行われているという。

TSMCのMark Liu会長は、7月に開催された株主総会で、Intelがファウンドリビジネスに参入する件に関する質問に対し、「IntelはTSMCにとって長年の顧客であり、TSMCの革新的なテクノロジーを採用(して生産委託)すると信じている」と述べていた。

2022年下期にApple向けプロセッサ量産の可能性

また、台湾のデジタル産業専門メディアDigitimesの8月11日付け記事では、TSMCが2022年後半に量産を開始する3nmプロセスの最初の顧客はAppleで、iPhoneあるいはMac向けプロセッサになると、関係筋からの情報として報じているが、Intel、Appleの件、ともにTSMCからの公式発表は一切行われていない。

なお、Intelが7月に公開した新たな技術ロードマップによると、TSMCの3nmプロセスに相当する「Intel 3」は2023年後半からの生産開始予定となっている(ただし量産とは言っていない)。

先行してTSMCの先端プロセスを活用して、Intelからシェアを奪いつつあるAMDに対応するために、Intelは少なくとも自社プロセスが高い歩留まりを実現できるようになるまではTSMCに頼らざるを得ない状況に追い込まれているといえる。TSMCの先端プロセスをAMDよりも先に活用して製品を出せなければ、同等性能の自社プロセスが遅れて立ち上がったとしても、AMDにシェアを奪われ続けるという危惧から、3nmプロセスの最初の顧客になろうとしているものと思われる。

  • Intel

    Intelのロジックプロセスのロードマップ(2021年7月発表)。Intel 3はTSMCの3nmプロセス(N3)に相当する(出所:Intel Webサイト)