台湾政府行政院環境保護署(日本の環境庁に相当)のEIA (Environmental Impact Assessment:環境アセスメント)会議は7月28日(現地時間)、TSMCから申請が出されていた2nmプロセス(TSMCの呼び名は「N2」)を用いた量産ファブ建設の環境アセスメントを完了し、同ファブの建設を許可したと複数の台湾メディアが報じている。

TSMCは、5nmプロセスファブならびに3nmプロセスファブは台湾南部の台南科学工業園区に設置しているが、2nmプロセスファブ(TSMC Fab 20と呼ばれる予定)は、TSMC本社近くの新竹科学工業園区の宝山地区に建設することになっている。

同地区では、現在、Fab 12の第8期工事として次世代半導体プロセス(前工程および後工程)の研究開発を行う巨大な施設(R&D Center)を建設中。第9期工事としてツインビルとしてR&D Centerがもう一棟計画されているが、Fab 20はこれらに隣接し、開発成果を人材とともにすぐに生産に移せるようする計画だという。台湾環境保護署によると、2nmファブは同地区でのR&D Centerに次ぐ拡張計画の第2段階と位置付けられているという。2nmファブの建設は工期を4期に分けて、田の字の形に4棟(P1~P4)建設する計画になっている。

  • TSMC

    新竹科学工業園区(台湾新竹市)のTSMCのファブ建屋群配置図。黒色縁取りの建物は既存、桃色は建設中、青色表記は建設未着工の建屋 (出所:TSMC Technology Symposium 2021)

2030年までに再生水と再生可能エネルギー100%利用を目指す

環境保護署EIA会議は、水不足に対応するため、新竹科学工業園区に対して2025年に再生水の利用を10%、2026年に25%、2027年には50%。2028年に75%、2030年までに100%に増やすよう要請している。再生可能エネルギーに関しては、当面、実際の電力消費量の25%、2030年には100%を使用する目標を定めた。EIA会議に出席した台湾政府経済部(日本の経済産業省に相当)の副大臣は関係省庁と緊密に協力して、再生水とグリーン電力の供給を確保すると述べたという。

TSMCとIntelの2021年7月末段階の微細化ロードマップは以下の通り(生産開始時期順。両社の情報をもとに著者作成、一部推定)。

  • TSMC N5P(=従来のTSMC 5nmプロセスの改良版)。すでに量産中(今秋発売が見込まれるApple iPhone新モデルに搭載プロセッサに採用される予定といわれている)
  • TSMC N4(=TSMCの4nmプロセス。N5Pの改良版で、あくまでも5nmプロセスの派生)。2021年第3四半期にリスク生産を開始、問題なければ引き続き量産へ移行予定
  • TSMC N3(=TSMCの3nmプロセス)。2021年後半にリスク生産、2022年に量産開始を予定。IntelがハイエンドCPUの生産委託を行う見込みのプロセス
  • Intel 4(=従来のIntel 7nmプロセスのEUV露光採用改良版。トランジスタ密度で比べるとTSMCのN5P/N4相当とみられる)。EUV露光装置の投入待ち、2022年後半に生産を開始し、2023年に量産開始を予定
  • Intel 3(=従来のIntel 5nmプロセス。ランジスタ密度では他社の3nm相当とみられる)。2023年の生産開始を予定
  • TSMC N2(=TSMCの2nmプロセス)。2022年に工場を建設、2023年にリスク生産、2024年に量産開始を予定
  • Intel 20A(=Intelの2nmプロセス)。2024年の生産開始を予定
  • Intel 18A(=Intelの1.8nmプロセス)。2025年の生産開始を予定

なお、TSMCの計画は工場建設日程を含めて現実味を帯びているのに対して、Intelのロードマップは工場建設スケジュールを含め詳細は不明である。また、TSMCは2nm未満の計画を現時点では発表していない。