米下院外交委員会のMichael McCaul(マイケル・マッコール)下院議員(共和党)とBill Hagerty(ビル・ハガティ)上院議員(共和党)は、中国の清華紫光集団の子会社でNAND専業のYMTCをエンティティリストに載せて米国の製造装置や技術を同社へ輸出することを禁止するよう米商務省のGina Raimondo(ジーナ・ライモンド)長官に書簡で要請したと発表し、複数の米国メディアがその書簡の内容を伝えている。

McCaul議員らは、「YMTCは、国防、人工知能、航空宇宙の分野で使用できるチップ製造の中国のチャンピオンである。この会社のトップマネージャーは、すでに米国政府がエンティティリストに掲載しているSMICで以前働いており、通信、コンピューター、インテリジェンス、監視、調査関連のテクノロジーを人民解放軍に提供していた」と指摘しているほか、「YMTCは、親会社である清華紫光集団の複雑な企業ネットワークを通じて人民解放軍と結びついている。中国共産党は、半導体サプライチェーンのすべてのリンクを垂直方向に管理するという前例のない計画を実施している」としている。YMTCのNANDシェアは現在1%ほどだが、2026年には17%まで成長し、米国に脅威を与える恐れがあるとも指摘している。

また、書簡では、米商務長官に対して、「YMTCが、米国の国家安全保障に違反する活動に従事し続けるために必要な技術を米国から取得することを防ぐために、米商務長官はこの緊急の問題で主導的な役割を果たす必要がある」として、早急にYMTCをエンティティリストの載せるように要請している。中国政府によるYMTCなど半導体メーカーに対する巨額補助金と政策支援により、中国がメモリ分野で不当な影響力を米国に行使することのなきよう、至急の対応が必要であるとしている。

SEMIと米国装置メーカーは自由貿易を阻害する措置に反対

トランプ政権下では JHICCやSMICに対する米国製半導体製造装置の禁輸措置が発動されたが、その他の中国半導体メーカーには、そうした禁輸措置はとられておらず、その結果、中国半導体製造装置市場は急拡大し続けており、半導体製造装置業界大手のApplied Materials(AMAT)をはじめとする米国半導体製造装置業界の月間売上高も急速な増加を続けている。日本の半導体製造装置メーカーも同様に売り上げを伸ばしている。こうした半導体製造装置メーカーや、その多くが加盟するSEMIでは、以前より自由貿易を阻害するいかなる措置にも反対の立場をとってきた。

もし、米国政府が、中国への全面禁輸を実施すれば、米国企業の業績が悪化し、ひいては米国経済そのものを悪化させかねず、強硬派と反対派のはざまで、商務省も禁輸全面禁止といった強硬策を取りかねている模様である。