ベンチャーキャピタルのBeyond Next Ventures(東京都中央区)と京都大学イノベーションキャピタル(京都iCAP、京都市)は、7月7日に京都大学発ベンチャー企業のSymbiobe(京都市)に合計約7000万円のシリーズA投資を実施したと発表した。

Symbiobeは、海洋性光合成細菌を用いてCO2とN2などを固定化し、バイオマテリアルを生産する事業化を図って設立された京都大発ベンチャー企業だ。

日本政府・企業が力を入れ始めた脱炭素技術の本命技術の事業化を目指す同社は、今年1月8日に後圭介 代表取締役と沼田圭司 取締役CTO(最高技術責任者)を経営陣として設立されたもの。

沼田 取締役CTOは、京都大大学院工学研究科材料化学専攻の高分子材料化学分野を担当する教授であり、バイオポリエステルやポリペプチドなどの生体高分子の構造と物性を研究開発してきた権威として有名な研究者だ。

  • Webサイト

    京都大大学院工学研究科材料化学専攻の高分子材料化学講座のWebサイト

Symbiobeは、その沼田教授の研究開発成果をもとに、脱炭素技術を目指す資源循環型物質生産プラットフォームの事業化を目指している。

Symbiobeの経営陣である2人の取締役は、まず2021年2月4日に1075万円を出資し、事実上の企業としての事業化活動を始め、京都大の桂キャンパス内に研究開発・事業化を進める拠点を設けた。

そして同社は、2021年6月8日付で新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の2021年度「研究開発型スタートアップ支援事業/シード期の研究開発型スタートアップに対する事業化支援」対象に採択されている。

今回、ベンチャーキャピタルのBeyond Next Venturesと京都iCAPは、それぞれが運営するBeyond Next Ventures2号投資事業有限責任組合とイノベーション京都 2021 投資事業有限責任組合(KYOTO-iCAP2 号ファンド)を引き受先とした第三者割当増資として、それぞれが約3500万円の第三者割当増資を行い、合計約7000万円をSymbiobeに投資した。この出資によって、Symbiobeは当面の研究開発・事業化に向けた運営資金を得たことになり、これによって実験プラントづくりに進む模様だ。

Symbiobe取締役CTOで京都大大学院の沼田教授は、理化学研究所のバイオ高分子研究チームのリーダーを務めていた時期があり、科学技術振興機構(JST)の創造的研究推進事業の「ERATO」として「沼田オルガネラ反応クラスタープロジェクト」を2016年10月より進めている。こちらのプロジェクトは2022年3月まで実施される計画だ(この途中で、沼田氏は京都大に移籍している)。このプロジェクトがSymbiobeの事業化のもととなる研究開発成果の拡充にも効果を上げたもようだ。

同社は「Symbiobe が事業化の基盤技術とする海洋性光合成細菌はCO2とN2を吸収・固定化できるために、CO2とN2から生分解性バイオプラスチックなどのバイオマテリアルや窒素肥料を生産するといった技術で事業化を図る」と説明する。

バイオマテリアルや窒素肥料によって地球の自然環境の保全や食糧不足の回避を目指し、脱炭素技術の確立を進めると表明している。