ソフトバンクが国産バッテリー事業に参入する。バッテリー関連技術をもつスタートアップ2社と協業して、“革新的”なバッテリーセルと蓄電システムの開発を進め、大阪・堺市のシャープ工場跡地に整備するAIデータセンター関連拠点で2027年から製造開始。2028年度をメドに年間ギガワット時(GWh)規模の量産、2030年度には1,000億円以上の売上規模をめざす。

  • 国産バッテリー事業のイメージ

    国産バッテリー事業のイメージ

AIの普及に伴い急拡大する電力需要をまかなうための、次世代電力インフラの構築に向けた取り組みとして、ソフトバンクが5月11日に発表したもの。

発火リスクを抑え安全性と蓄電性能を高めたバッテリーセルと、バッテリーセル個体の性能を最大限引き出す蓄電システム(BESS:Battery Energy Storage System)の開発から製造までを一気通貫で推進し、同社が堺市に構築するGXファクトリーで製造・量産を進める。なお、このGXファクトリーではバッテリー以外に、太陽光パネルなどの製造も行うことにしている。

ソフトバンクはこの国産バッテリーを、自社で構築を進める大規模AIデータセンターに導入予定で、国内の電力系統向けや工場などの産業向け、家庭向けにも順次提供。日本における次世代電力インフラの構築に寄与し、中期的にはグローバル市場も視野に入れてこの取り組みを推進する。

国産バッテリー事業の開始にあたり、ソフトバンクは、バッテリー関連の先端技術をもつ韓国の2社と協業する。

バッテリーセルに関しては、韓国・COSMOS LAB(コスモスラボ)と協業し、「発火しない高い安全性と優れた蓄電性能」を兼ね備えるという“革新型バッテリーセル”の量産化に向け、共同開発を開始。

COSMOS LABの亜鉛ハロゲン化物バッテリーは、電解液に真水を使用しており、「現在の主流であるリチウムイオンバッテリーが抱える発火リスクを解決できることが最大の特長」と説明。両社は早期に量産技術を確立し、2027年度をめどに量産開始することをめざす。

今回活用する革新型バッテリーセルは、将来の電池技術として注目される2種類の革新型電池が持つ技術を統合したもので、商用展開されている水電解液を用いた「亜鉛-ハロゲン」バッテリーセルにおいて、リチウムイオンバッテリー相当の高エネルギー密度に達する製品としては世界初となる。

  • 革新型バッテリーセルの機能イメージ

    革新型バッテリーセルの機能イメージ

正極にハロゲン化物、負極に亜鉛を採用することで、エネルギーロスが少ない充放電特性を装備し、リチウムイオンバッテリーと同等以上のエネルギー効率を追求。

「可燃性の有機電解液を使わず、電解液に真水を使用することで、原理的に発火のリスクが発生しない構造」で安全性を高めたほか、主要原材料であるハロゲン化物や亜鉛などが日本国内で調達できることから、サプライチェーンの強靭化にもつながるとする。

  • 革新型バッテリーセルの技術特性のイメージ

    革新型バッテリーセルの技術特性のイメージ

蓄電システムに関しては、韓国・DeltaX(デルタエックス)と協業し、世界最高水準のエネルギー密度をうたう蓄電システムの開発・製造に向けた取り組みを開始。商用の標準的なコンテナ(20フィートハイキューブコンテナ型)において、5メガワット時(MWh)を超えるエネルギー密度をもつという。

蓄電システム(BESS)とは、バッテリーセルを中核とし、蓄電や電力の供給と需給最適化を担うエネルギー基盤のこと。再生可能エネルギーの導入拡大や電力需給の変動性の高まりに伴い、電力の安定供給を支える重要なインフラとなっており、このシステムにDeltaXがもつ“世界最高水準”のBESS関連技術を投入する。

DeltaXでは、独自のCCS設計とCTP技術を採用し、部品点数の削減や筐体内の無効スペースの圧縮を徹底することで、既にリチウムイオンバッテリーによる標準的なコンテナ型BESSで5.37MWhの蓄電容量を実現しており、今回の革新型バッテリーセルでも同等以上の蓄電容量をめざす。

「CCS」(Cell Connecting System)は、多数のバッテリーセルを高効率かつ高い安全性で接続して電池性能を最大限に引き出す設計技術。「CTP」(Cell to Pack)は、セルのモジュール化をせずに直接パック化するなどの独自工法によって部品点数を減らし、筐体内のスペースを圧縮するもので、これらを活用することで、蓄電システム化においてバッテリーセル個体の性能を最大限に引き出し、蓄電性能を強化するとしている。

このほか、ソフトバンクがこれまでの電力事業で培い独自開発した、AIによる電力需要予測機能を搭載したエネルギーマネジメントシステム(EMS)を組み込むことで、充放電を最適制御。世界最高水準のエネルギー密度を実現する蓄電システムの設計・開発を進め、年間GWh規模の量産をめざす。