ソニーグループの人工知能(AI)研究開発部門「ソニーAI」は、AIを使った卓球ロボットを開発し、全国大会出場経験があるハイレベルの選手と実戦さながらの対戦をして複数の試合で勝利するなどの結果を出したと発表した。現役のプロ選手には敗れたものの、高速回転のボールも打ち返すなど健闘して高い性能を示した。ソニーAIは「ロボットが現実世界のスポーツ競技で一流のプレーヤーと肩を並べるプレイをしたのは初めて」としている。詳しい性能や対戦結果などを記載した論文は4月22日付英科学誌ネイチャーに掲載された。

レベルの高い卓球選手同士の対戦で勝つためには素早いボールの打ち合いでミスのない対応が必須で、選手独自のサーブによるスピン(回転)がかかったボールの複雑な軌道を予測しなければならない。AIロボットにとっても卓球のハイレベル選手との打合いは難易度が高く、これまでのロボットはラリーを続ける程度で、対戦できるレベルの性能はなかった。

ソニーAIなどの研究グループは、ソニー独自の先進的な技術やAIの「強化学習」手法、精密なハードウェアを組み合わせて自律型ロボット「Ace」を開発した。Aceは機敏な動きができる8つの特殊な関節があるアームを保有。卓球台を取り囲んで設置された特殊センサーを搭載した9台のカメラがボールの高速の動きを認識し、「モデルフリー強化学習」と呼ばれる制御システムがレベルの高い卓球選手が打ち込むボールに迅速に対応する仕組みだ。研究グループはAceの性能を検証した上で実際にハイレベル、プロ選手との対戦で性能を確認することにした。

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    卓球選手(手前、左)と対戦する自立型ロボットAce(奥、右)(ソニーAI提供)

ソニーAIやネイチャー掲載論文によると、選手との対戦は国際卓球連盟(ITTF)のルールに従って2025年4月に実践形式で実施した。対戦相手は卓球の現役選手としての経験が10年以上で全国大会などでの出場経験があり、週平均20時間のトレーニングをしているハイレベルの選手5人と日本のプロリーグで活躍する現役のプロ選手2人。

対戦の結果、Aceはハイレベルの選手とは5試合(5人)中3試合(3人)に勝利した。ゲーム数では計13ゲーム中7ゲーム勝った。プロ選手2人との対戦では2試合とも敗れたが、計7ゲーム中1ゲームは奪ったという。分析の結果、Aceはさまざまな高速回転に対応でき、75%以上の返球率を達成していた。Aceが打ち出したボールの最大速度は秒速16.4メートルだったが、選手が打ち出したこれより速い同19.6メートルの高速ショットを返球するなど高い返球性能を示したという。

スポーツ分野でのロボットの活躍例では中国のヒト型ロボットがハーフマラソンで男子世界記録の時間を大幅に短縮したと報道されて話題になった。今回のAI卓球ロボットの健闘についてソニーAIの担当者は「正確さとスピードが求められる複雑、急速に変化する現実世界でAIシステムが認識、推論し効果的に行動できることを初めて示した」「(AIロボの)飛躍的進歩は卓球の枠にとどまらない」などとコメントしている。

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    Ace は高性能カメラでボールの相手選手の複雑で高速の動きを捉え、8つの関節を持つアームをAIが制御してボールを打ち返す(ソニーAI提供)

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