山形県鶴岡市の名産品として知られる枝豆「だだちゃ豆」のおいしさの決め手の一つを、山形大学などの研究グループが発見した。DNAを調べた結果、開花や実の成熟を早める遺伝子「tof(スモール トフ)11」が、枝豆のおいしさの元となる遊離アミノ酸を増やす働きをしていた。一方、tof11の近くには遊離アミノ酸を減らす遺伝子もあり、これを取り除けばよりおいしいだだちゃ豆ができる可能性があるという。
枝豆は未成熟な大豆を収穫したもの。「だだちゃ豆」は、その昔、おいしさに感激した殿様が「どこのだだちゃ(庄内地方の方言でお父さんのこと)の枝豆か」と尋ねたことから、名前が付いたという。
枝豆は日本特有の野菜で、近年は和食ブームに伴い海外でも食べられるようになった。これまで、大豆と枝豆の成分比較の研究や、枝豆のおいしさはショ糖とアミノ酸の量によって左右されるという研究は国内外にあるが、その成分がどの遺伝子に由来するのかはよくわかっていなかった。
山形大学農学部食料生命環境学科の星野友紀教授(作物育種学)らの研究グループは、地元の農作物のおいしさに関する研究をしている。おいしさには様々な指標があり、味や見た目、香り、歯ごたえなど多岐にわたる。今回、だだちゃ豆のおいしさについて、うまみと甘みを強くする遊離アミノ酸に着目して調べた。
大学の圃(ほ)場でだだちゃ豆の系統の一つ「白山(しらやま)」と大豆品種の「エンレイ」を交配させた。13年間、8世代にわたり自身の花粉で受精する「自殖栽培」をして、白山とエンレイのDNAが様々なパターンで混ざった344系統を育てた。これらの遊離アミノ酸含量を測定するとともに、DNAを抽出した。
だだちゃ豆の遊離アミノ酸とDNAを解析した結果、20本ある染色体のうち11番目にある遺伝子「tof11」が、遊離アミノ酸を多く蓄積することに関係していた。tof11は、大豆(エンレイ)が持つ「TOF(ラージトフ)11」が突然変異し、1塩基が欠損して、その機能が失われたものだ。
先行研究によると、TOF11は大豆の開花や実のなる時期をコントロールしていることがわかっている。TOF11からtof11に変異することで、開花や実のなる時期が前倒しになることも知られている。
秋口に実がなる大豆に比べ、だだちゃ豆の収穫時期は少し早く、夏に出荷される。星野教授は「枝豆といえば夏が旬。暑い時期に食べておいしさを感じるために、だだちゃ豆の早期開花はtof11によって制御されている」と説明する。
今回、このtof11が遊離アミノ酸の含有量を増やすことが明らかとなった。一般的に、強すぎる日差しは植物の光合成を抑え、浸透圧を調整して水を囲い込み、乾燥に強くなろうとする。tof11は日光によるストレスを防御することに関連して機能しているとみられ、「水分調整のために遊離アミノ酸の代謝を活発にして、細胞内に水分を閉じ込めるようにする役目があるのではないか」と星野教授は話す。
一方、だだちゃ豆(白山)には、遊離アミノ酸量を増やすtof11のすぐ近くに、遊離アミノ酸量を減らそうとする遺伝子も見つかった。星野教授は「だだちゃ豆では遊離アミノ酸を増やす遺伝子がプラス10働くとすると、減らそうとする遺伝子はマイナス3働く。差し引きプラス7になり、私たちは『だだちゃ豆のおいしさ』を認識していた。マイナス3を解消するような品種改良ができれば、よりうまみの多いだだちゃ豆ができる可能性がある」と説明する。
星野教授は今後、だだちゃ豆の中でも「白山」より早生の品種「甘露」や、晩夏に出回る「尾浦(おうら)」でも同じ遺伝子が働いているどうかを調べるとともに、おいしさにまつわる他の要素についても調べたいとしている。白山と甘露、尾浦を食べ比べると、それぞれ味わいが違うという。
鶴岡市農業協同組合(JA鶴岡)から、「殿様のだだちゃ」の種子の提供を受けて研究を実施した。日本学術振興会の科学研究費補助金、山形大学アグリフードシステム先端研究センター、鶴岡ガストロノミックイノベーション計画、高橋産業経済研究財団、ヤンマー資源循環支援機構、マエタテクノロジーリサーチファンド、キーコーヒー柴田裕記念財団、山口育英奨学会、飯島藤十郎記念食品科学振興財団、不二たん白質研究振興財団の助成を受けた。成果はドイツの科学誌「セオレティカル・アンド・アプライド・ジェネティクス」電子版に3月24日掲載され、山形大学などが4月1日に発表した。
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