欧米ではフィランソロピーの活動が盛んですが、日本ではまだあまり浸透していないため知らない方も多いでしょう。近年では、日本でも企業活動のひとつにフィランソロピーを取り入れる会社が増えています。

本記事ではフィランソロピーの詳しい意味や企業の実際の活動例、英語表記、メセナやボランティアと違いも紹介します。

  • フィランソロピーとは

    フィランソロピーとは?

フィランソロピーの意味や語源とは

フィランソロピーとは「人間愛」が起源となっている概念のことです。個人や企業の寄付やボランティアもフィランソロピーの一部です。奉仕的活動や自主的に社会問題解決に取り組むことを指します。取り組まれる対象や分野は幅広く、教育や医療・就労支援などさまざまな分野へと広がりつつあります。

従来のフィランソロピーは寄付やボランティア活動を行うことが主流でした。近年では、経営者の寄付やボランティア活動・チャリティー活動と同時に、近年ではマーケティングの一環として、投資など金銭的に収益を得ることも増えています。経済的な収益と持続的な社会支援の両立をさせようという考え方が世界的な主流になってきているのです。

フィランソロピーの英語表記・語源

フィランソロピーを英語で表記すると、「philanthropy」となります。

語源はギリシャ語の「Philanthropia(人を愛する)」で、Phileinは「愛する」、Anthroposは「人類」という意味です。直訳すると、「博愛・慈善」や「社会貢献活動」となります。

  • フィランソロピーとは

    フィランソロピーとは「人間愛」が起源となっており、取り組まれる対象や分野も広がっています

フィランソロピーとメセナの違い

メセナはフランス語で「芸術文化支援」という意味があります。「芸術」や「文化」への支援活動のことで、特に企業による活動を指します。資金不足で十分な文化活動や芸術活動ができない個人や団体の活動資金を提供し、芸術文化支援のビジネスによって得た収益を社会に還元する活動です。

フィランソロピーも社会貢献活動という意味では似ていますが、「芸術」や「文化」といった特定の分野に限らず、幅広い分野が対象であるという違いがあります。

フィランソロピー活動の種類

フィランソロピーの活動はいくつかのタイプに分けることができます。それぞれの違いも把握しておきましょう。

ボランティア

ボランティアは「自発的」という意味をもったラテン語の「ボロ」という言葉が派生してできました。他には「無償・利他的」という意味も含んでいます。日本では無償で慈善活動や奉仕活動をする意味合いが強いですが、本来の意味は自発的に行動することを指します。

フィランソロピーは継続性がある活動が多いのに対して、ボランティアは有事の時に行われる短期的な労働や活動のことを意味することが多いです。フィランソロピーと同じ意味として間違われやすいですが、ボランティアはフィランソロピーの活動の一種です。

CSR活動

CSR活動とは、社会貢献を目的とした活動のことです。企業が利益の追求ではなく、従業員や消費者・環境などへも配慮して組織活動をすることを指します。「corporate social responsibility(企業の社会的責任)」の頭文字をとってCSRと呼ばれています。

寄付活動

寄付とは金銭や財産を公益・福祉、教育などの事業や施設に無償で提供することです。被災の時に現地の被災者へと送られる義援金も寄付の一種です。寄付は誰でもできる活動であり、仕事が忙しく活動に参加できない人でも寄付をすることで支援することができます。

NPO活動

利益を株主に還元する株式会社ではなく、社会に還元する非営利活動のことをNPOといいます。NPOは寄付型と事業型の2つに分かれます。ボランティアが活動に参加する人たちであるのに対して、NPOは参加する場をつくったり、参加を求めたりする立場となります。

ソーシャルビジネス

ソーシャルビジネスとは、ビジネスを通し社会問題に継続的に取り組む活動のことです。一般的な企業とソーシャルビジネスの違いは、利益の追求ではなく社会的課題への解決に重きを置いて活動している点です。活動資金を寄付や助成に頼らず、自らビジネスで収益を得ています。

  • フィランソロピーの実例

    フィランソロピーは様々な活動例があり、ボランティアや寄付活動もフィランソロピーの一種です

フィランソロピーの企業実例

実際の企業が行っているフィランソロピーの活動例を紹介します。

大阪ガス

公益社団法人「日本フィランソロピー協会」は一人ひとりがより良い社会創造のために主体的に周囲の人を支えながら課題解決に向けて活動することを目指し、フィランソロピーの啓発や活動へのきっかけづくりをしています。

同協会が開催する企業フィランソロピー大賞第17回(2019年度)で、大阪ガスの「Daigas グループ"小さな灯(ともしび)"運動の取り組み」が企業フィランソロピー賞を受けました。

大阪ガスは、従業員がボランティア活動に取り組むことを推進する「小さな灯火」運動をスタート。基金を設け、福祉や歴史・文化、まちづくりなどの幅広い分野で活用しています。従業員の参加意識が高く、学校や自治体・市民団体と協力して講習会やチャリティーイベントを開催し、地域社会との顔の見える関係性が生まれました。地道で裾野の広い活動が評価されたようです。

楽天

楽天グループでは、従業員の社会貢献活動への参加を促す機会や制度を設けています。社会貢献活動を通してポジティブな変化をもたらしながら、従業員自身にもプラスな影響を与えています。

2019年には日本各地で起こった災害への復興支援に参加する従業員を支援するために特別休暇を導入。その後、災害復興支援以外にも公益的な活動への参加・支援にも利用できるボランティア休暇が設けられました。

Facebook

Facebookを立ち上げたマーク・ザッカーバーグは、自身の保有するFacebook社の株式の99%を、将来的に慈善事業に寄付する計画を明らかにしています。

また、自身の娘が生まれた際には、「子どもの未来」を考える親の立場としてChang Zuckerburg Initiative(チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブ)を立ち上げ、さまざまな活動へ資金提供することも発表しました。

味の素

味の素では東日本大震災の復興応援活動「ふれあいの赤いエプロンプロジェクト」などを行っています。東北3県における仮設住宅の健康・栄養課題やコミュニティーの希薄化という問題に対し、住民たちが一緒に料理をし食卓を囲む場を提供してきました。

現在は東北や被災地に限定せず、全国の地域組織が行う料理教室向けに、レシピなどのコンテンツ提供や料理教室の運営・安全・衛生レクチャー研修などを行っています。

  • フィランソロピーの企業実例紹介

    身近な企業もフィランソロピーの活動を始めています

フィランソロピーの類語

フィランソロピーの類語も覚えておきましょう。

篤志家

篤志家の読み方は「とくしか」です。社会奉仕や公共性のある社会問題解決へ、熱心に活動したり支援したりする人という意味があります。慈善活動を熱心に取り組んでいる人のことを指すときに使われます。

汎愛派

汎愛派の読み方は「はんあいは」で、18世紀のドイツ、J・B・バセドーを中心とするグループのことです。人間愛に基づく教育改革の必要性を訴え、活動を展開しました。子どもの自由を大切にし、楽しく学習できる方法を工夫した学院を創立したことでも知られています。

フィランソロピーが日本の企業でも進んでいる

近年消費者は企業の社会問題に取り組む活動を評価する意識が高まっています。企業側も消費者のニーズにあったサービスを提供するだけでなく、社会の課題解決へ取り組む活動を進める動きが増えています。

ボランティアと聞くと、無償で奉仕をするイメージがありますが、寄付に頼らず収益を上げ、社会問題に取り組むなど活動方法はざまざまです。

フィランソロピーはボランティアにくらべ認知度が低い言葉ですが、今後は日本でも浸透してくことが予想されるので、どういったものなのか正しく理解しておきましょう。