米国のバイデン政権は4月8日(米国時間)、安全保障上の懸念から輸出を規制する企業を指定する「エンティティー・リスト」に、スーパーコンピューター(スパコン)の開発を手掛ける「天津飛騰信息技術」など中国の7企業・団体を加えたと発表した。これらの企業が、中国による「極超音速(ハイパーソニック)兵器」などの軍事兵器開発に関与したと米商務省が認定したためだという。

これにともなってTSMCは、これらの中国企業からの生産受託を中止し、生産能力の配分を再調整して世界的に不足している車載半導体に振り向けると見られていると台湾の経済メディアである「經濟日報」が4月12日付けで報じている。

それによると、今回の規制拡大で供給停止となる製品は、TSMCの生産量の全体の3%以下だという。TSMCは「当社は一貫して法令を遵守し、米国の中国企業への制裁に従う」とのコメントを発表している。

なお、米国政府は、米国および日本を含む諸外国に対し、中国企業への半導体輸出を全面的には禁止してはおらず、Huawei/HiSiliconなどごく一部の企業の最先端製品に限って禁止しているだけで、米国商務省からライセンスを取得できれば出荷可能となっている。中国は米国半導体企業にとっての最大市場であり、米国の輸出規制に半導体業界を挙げて反対している事情があるためであるものと思われる。

このため、IntelやQualcommなどの米国半導体企業やソニーなどの日本企業もHuaweiへの部品の出荷を継続できているようであるが、どのような品種のどの製品が許可されているのか、などといった個別の案件に商務省は応えず、各社とも商務省から得たセンスの内容を一切公表していないので不明である。ただし、少なくとも最先のプロセスを用いた半導体チップは全面的に輸出禁止となっているようである。

TSMCの2021年3月度の売上高、単月としての過去最高を記録

なおTSMCの2021年3月における連結売上高は、前年同月比13.8%増、前月比21.25%増の1291億3000万NTドルとなり、単月売り上げとしては過去最高額を記録したという、また、10カ月連続で1000億NTドルの大台を超え続けており、これに伴い2021年第1四半期(1~3月期)の売上高も前年同四半期比で16.7%増の3624億1000万NTドルだったという。

TSMCは、世界的な半導体の需要増加を背景に、毎月の売上高が過去最高を更新するなど絶好調が続いている。そのため、注文をさばききれずに、出荷の遅れなどが生じている模様であり、大口顧客に対する生産受託費の割引を止めているという。